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宮﨑あおいさんを応援します

「ツレがうつになりまして」(2011)

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突然の夫の“鬱病”に立ち向かう夫婦のはなし。こんな重いはなしが、あおいさんと堺雅人さんの繊細でリアル、ユーモアのある演技で、感動的な夫婦の愛の作品になっています。

症状が進むに伴い、のんびりした性格で夫に頼りがちな妻が少しづつ変化して“強い妻”に変化し、かけがえのない夫婦になっていくありさまを「篤姫」で共演したお二人の気心の知れた者同士だからの“こなれた“演技で魅せてくれます。

あおいさんは、とにかく可愛いです。が、表情だけでなく、夫に飛びついたり、一緒にゴロゴロ転がったりと身体を使った演技、また、多彩なファッションも見どころです。

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物語は、
高﨑の門札のある古風な家。朝、レコードが鳴っていて、書き捨てた漫画が散らかった部屋にイグアナがいて、はる(宮﨑あおい)はまだ寝ていますが、ツレ(堺雅人が弁当を作り、寝てるはるさんに「行ってくるよ」と出かけます。はるは、ツレの「忘れ物」に気付いて飛び出すと、ツレがぼんやりゴミ箱を見ているというシーンから物語は始まります。
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この夫婦は結婚5年目で、妻はるは夫をツレと呼び、弁当のおかずや、ネクタイなどいつも決まっていて、かれはとても几帳面な人。こんな人が鬱になりやすいという。物語は、鬱の症状や対処法を軸に展開していきます。

ツレは、毎日ぎゅうぎゅう詰めの電車で、外資系IT企業に出勤。顧客からのクレーム対応にあたっていますが、対応がわるいと投書があり、上司から注意を受ける。
投書した本人から電話「恐縮だがひとつ伺いたい。三上だが、社長に手紙書いた、君の会社のPCの説明書が不親切、これは欠陥品だ」にツレは「私の“たかさき”は梯子高の高﨑だ」と断りをいれて応対するというこだわりよう生真面目な人です
 
はるはマンガ家、読者アンケートが芳しくなく、出版社から連載中止の電話連絡を受けるという売れないマンガ家
はるは高校を出て就職、毎日がたいくつで東京に出て絵を勉強するがなまけもので良いものは画けない。「君には君のいいところがある」と言うツレのことばで漫画家になった。「漫画だけ画きなさい、生活は自分が見る」というツレに守られ漫画を描いてきた。

夕食時、はるがマンガ連載が中止になったことを話すと、ツレは「食欲がない、はやく風呂にはいって寝る」と。しかし、はるはまったく彼の様子に無関心。
翌朝まだ寝てるはるに、ツレは「弁当つくれない、何もできない。僕、死にたい」と訴えるが、はるは「仕事に疲れているんだよ、病院に行ったら、一人でゆける」と言い放つ。

医師に「典型的な鬱病。心配ない、気持ちを切り替え、気分を変えることが大切。不安感など精神的なものだと考えられているが身体が痛くなる心の風邪」と言われ、薬を使用しての治療で1年から半年掛かるらしい。
ツレは「鬱病だったよ~、これから会社に行く」とはるに伝えると「ちゃんと説明してよ」と言う。「薬で治す、睡眠剤を飲むことになる」というと、はるはすでに調べたらしく「薬で治るの、なぜセレトニンが減ったの」と返す。鬱にはセレトニンという神経伝達物質が関係するらしい。
そんなわけで夕食はカキ料理。ツレはこれが食べられないと言うと「私の料理はどうせたべられないんでしょう」とはるは不機嫌になる。食欲が無くなるようです。
就寝時、はるはツレの大きないびきで眠れない。「隣(部屋)で寝て」と言うと素直に隣に移るツレ。はるがこれを追っかけて同じ布団に入ろうとすると「今日は、その気になれない」と夫婦関係を拒否する。これも鬱症状の特徴で、コミカルに描かてれ思わず吹き出します。
 
夫婦で理髪店を営んでいる母に電話すると、「漫画面白いよ」と言う。夫婦ではるのために読書感想を書き送っているようです。「来月で打ち切り、もう読まなくっていいよ。ツレが鬱病になったの」と話すと「仕事でストレス溜っているのよ。のんびりさせたら」と。
その後、母から「鬱病には野菜をたくさんたべるのがいいよ」とファックスがあり、野菜を買いに。
 
夕食時、ツレは「漫画書いてるの? 読者がいるんだから、諦めるのが早いのがはるさんの悪いところ」と言い「僕が休むと大変なんだ。自分の身体は自分が一番わかっている」と勤務を続けるらしい。

ツレは出勤途中で、気分が悪くなり電車に乗れなくなり、洗面所で吐く。部長に鬱病であることを報告すると「君が鬱なら、みんな鬱病だよ」と信じてもらえない。
 
はるは骨董品屋さんで、気に入った花瓶を買う。店主に「割れなかったからいまここにある。割れなかったことに価値がある」と言われ、この言葉が深く心に残る。

夜、はるはこの瓶をみて、(彼がこわれる?)「会社やめて、原因は会社にあるんだから」と言えばツレ「みんなが困るよ」、「割れないことに価値がるのよ。会社やめないなら離婚する」とはる。

ツレは部長に「アルバイトにして欲しい」と申し出るが「無理」だと言う。「仕方がありません」と辞表を出すと、平社員だから辞表でなく退職届と言われ、帰宅して、几帳面にマス目を引いて退職届を書くがうまく書けず、疲れて寝る。結局、はるが代書することに。作業意欲がなくなるようです。

鬱の治療法には薬療法、食事療法、精神療法があるが最高の療法は休むこと。はるはセロトニンを増やせばとしっかり納豆を食べさせる。
 
ツレが出勤するとまたあの人からの電話。留守居でごまかし、仕事止めて帰宅すると気分がよくなって薬が効いてきたようだ。病院で、薬で気分が良いというと、よくなったりわるくなったりの繰り返しと言われる。日記をつけて鬱病を受け入れることを勧められる。

寝る時にははるに「薬飲んだ」と注意され、「心配ばかりかけて、大丈夫、本当に面倒な病気さ」と恐縮するツレです。
 
会社出勤最後の日、はるも一緒に会社に出掛けるが、満員電車のなかでツレの調子がおかしくなり、はるが「よくこんなのに耐えていたね、ツレは偉いよ」と言えば「はるさんに言われるとつらいよ」と泣きじゃくる。
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会社ではまた例の電話、三上さんから、アップデートしたら不具合が悪くなったと。この人もしつこく、ツレの鬱原因のひとつです。辞めてよかったですね。
 
はるは同窓会の案内パンフ作りのアドバイスを依頼される。責任者は吉田羊さんです。こんなシーンで共演があったことに驚きです。「私、今年が最後、離婚するから、“はる”さんにイラスト描いて欲しかったの」と言われ、結婚式のことを思い出す。

ツレの退職の日、みなさんに拍手で送られる。病院で、いつも一緒になる男に「退職しないと離婚する」とはるに言われた話しをすると「うちは退職で離婚ですよ、いいですね」と羨ましがられる。
 
ツレは会社辞めて、ぼんやり、空ばかり見ている。「降る雪で停電になってしまえ」と言う。母から「困ったら言ってきて」と電話があり、はるは「頑張らないと!」と思う日々が続く。
ツレは「昼からは寝れない。申し訳ない」と言うことに、はるは「ツレが会社行っていたとき、私は毎日寝ていたぞ」とゴロゴロ転がる。「いつもこうだったの、たまには漫画かくよ!!」。
 
ツレは「僕は、爬虫類になりたい」。はるはツレの手を胸に入れ「爬虫類になったらこんなに暖かくないぞ~」。このゴロゴロするのは何とも落ち着けるように思われます。
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ツレは一か月たっても、「申し訳ない」と泣く。「元気になったら竜宮城につれていけよ」とはるは明るく付き合う。
ツレのお兄さんが会社辞めたから心配でとやって来て、「元気そうだな、小っちゃいころから気が小さくて。がんばれ、はるさんのために頑張らないと」と一番言ってならないこと言う。静かにして欲しいのに土足で踏み込んでくる。これが鬱には一番悪いのに!!
ツレは寝るばかり。あさ食べて寝、ひる食べて寝、よる食べて寝た。
 
先ほどの同窓会の招待状が届く。はるは出かけるが、みなが楽しそうに見えて、会場に入るのを止めた。帰るとツレが寝ていて、「天井のしみがはるに似て、ぼくは感謝している」と言い、寄り添って寝る。
母が電話で「知り合いの人が鬱で自殺した、元気になりはじめが危ないんだ天井を見てなんども泣いたんだよ」と心配する。「ツレは大丈夫は、はるがついている」と話す。
 
ツレの寝る魔法が解けた。「料理がしたい、好きなものが食べたい、“はる”さんが下手だからと」始めるが、野菜炒めの味が塩が多すぎ。やっぱりだめだと落ち込む。この病、誰にでもかかる風邪だが、宇宙風邪だ

母が訪ねてきて「よくなっているね、治りかけが怖いというから、そんな徴候には気を付けるんだよ」と言う。はるは「心ってなんだろうと初めて考えた。つれが鬱病になったより、鬱病になった意味は何かと考えるんだ」に母は「随分成長したね」と言う。
 
羊さんに会うと「離婚するというのは凄いエネルギーだった。つらかったらガンバらなくていいのよ」と言う。はるは「うちの旦那は鬱、でもガンバらないと決めたの」
 
二人で水槽の亀をみながら、生活費のことを心配する。とにかく漫画を描かねばと出版社に。担当者から、読者の投稿ページでよければと言われツレがうつになりまして、仕事をください」とお願いする

漫画家の先輩から、こんな仕事もやるんだよと実用書のイラストを描くようアドバイスを受ける。「ツレが鬱」と言えたことがうれしかった。これまで自分が恥ずかしくて言えなかった。「強くなるぞ」と以前とはちがって意欲的に漫画を画くようになる。
 
ツレは散歩途中、かっての同僚に会い会社がつぶれたことを聞く(辞めてよかったんだ)。仕事中のはるの側で「会社つぶれたよ。はるさん髪とかしたら。高﨑の字が違っている」とハイ気分でひつこく注意するので、はるは「そんなにうるさくいうなら自分で電話したら」と怒りをぶつける。

これを気にして、ツレはズドーンと落ち込み、風呂場で苦悶の末、首にタオルを。はるは一心に漫画と格闘中だったが出来上がって一息、イグアナの動きがへんで、ツレの異変に気付く。
「さっきのしつこくしたことが嫌になって、・・、ぼくはここにいていいんだよな」と泣くツレ、夫婦で抱き合って泣く。「ごめんね・・・」とはる。
ツレは、金魚鉢の金魚をみながら、「以前は妻のために頑張ったが、いまは自分のために頑張りたい」と言う。
 
はるは、先輩の漫画家から、「読書アンケートは言い訳、漫画をかいてみたら」と勧められ、描き始める。書きたいものを描くで、ツレのことを書いてみる。描きたいことはこんな近いところにあったんだと気付く。
ツレはいまではもう「自分はなんにもできないだめなやつ、いや休むことが仕事」と観念している状態。
 
寒椿が咲き、ツレは2年ぶりの教会の結婚講座同窓会に出たいという。同窓会に出席して、次は高﨑さんとはるさんのおはなしですと紹介され、ツレが「ぼくが鬱病で出れなかった。妻も相当つらかったと思うのですが、笑顔で支えてくれました・・・」と挨拶。
次いではるは「夫が話したようにつらかったが、夫婦として成長し、結婚式のあなたはその健やかな時も病めるときも豊かな時もこの男性を愛し慰め・・・、本当の夫婦になったように思います私のとなりにツレがいてくれてよかった」と話す。スピーチの最後にぐっと言葉を飲み込むはるには泣けます。
 
ツレに「自分の本を書いてみたい。鬱病の本、誰にでも罹るのに、だれも知らない私達のことを書きたい」というと、ツレが自分の日記を持ってきて。参考に! 
「3月30日、できないよ、できないようにすればいいんだよとはるさん」
 
「すぐ忘れる、でも隣にあなたがいる ありがとう 今日のことを笑って話せる日がくると」
 
「おかあさんの野菜が届く、ぼくは電話がきない、はるさん電話してください」
 
この日記が、はるの脳内を駆け巡り、いろいろなキャラクターが思い浮んで、これを描く。
ツレは「もう薬を飲まなくてよくなった」と二人で大喜び。

漫画が出来上がり、夫が、マンガを管理する会社を作り出版すると沢山の応援感謝のメールがきた。
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そして講演依頼がきて、二人で会場に。つれが話し始める・・・
ツレは、鬱に付き合う方法を三文字 あ と で と言い、
あ:あせらず
と:特別あつかいしない
で:できることと、できないことに差をつけない。
これが鬱を克服する三要素です。妻は恥ずかしいことではないと言い、人はどんなときでも自分の姿を誇りにできること。生きている姿が誇りにできること。恥ずかしい、なつかしい姿すべてが誇らしいです。完治しないが、このやっかいなものと上手に付き合う、これが一番いい方法だと思いますと結びます。
質問は、あの三上さんが、「恐縮だが三上です。この本を作ってくれてありがとう」。

ツレは風呂場で自殺しようとしたとき“はる”さんのことを考えていた。葬式、“はる”さんにできるかなと・・・。ツレはこの宇宙風邪につきあうことになるが、どんな暗い夜も明けない夜はない。
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この作品で、
第24回日刊スポーツ映画大賞主演女優賞
第35回日本アカデミー賞優秀主演女優賞
日刊スポーツ映画授賞式翌日、離婚が発表となり、大変つらい思いをした時期であったと思います。
2013年公開のきいろいゾウでは、この経験をも踏まえ、これまでにないすばらしい演技を見せてくれます。
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