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「恋妻家宮本」(2017)

イメージ 1家政婦のミタ」の脚本家遊川和彦さんの監督レビュー作、かつ原作が重松清さんということでかなりの期待感で観に行きました。原作は読んでいません。
子どもが巣立ち2人きりとなった50歳の夫妻。夫が、妻の隠していた離婚届を見つけ、これから始まる可笑しくも愛おしい夫婦の物語、いまどきの50代夫婦トレンドの一端を覗いてみようというもの。

タイトルの“恋妻家“という言葉は遊川さんの造語だそうで、映画の結末・結論から推し量ると結婚を決意したときの気持ちに戻れということ。こんなこと誰でもわかっているのですが、この年になるとなかなか難しい。こんなことこっぱ恥ずかしくって出来ない人にもうひと押しするのがこの物語、だからコメデイーなんです。
「正しいこと(理屈)よりも優しいことを優先する行動」をと、頑固な自分(優柔不断な自分)から卒業して実行することが大切というのがこの作品のテーマです。
理屈っぽくなりますが、映画はこの理屈どうりに、プロットがうまいセリフでつながり、笑えて、ちょっと涙がでて、ハッピーな結末で終わります。おそらくTVなら高視聴率なのでしようが、映画としてはどこか物足りない。ほとんどがセリフで語られ脳に刺激を受けない、また後半夫が妻を迎えに行ってからの展開がベタで、映画としては、ひと捻り欲しいですね。()
阿部さんの優柔不断夫、コメデイーな演技、料理シーンは見事でした。天海さんのどんどん自分で決めていくさっぱり奥さん、それでいて細かいことに気を使う奥さんの演技、当初天海に専業主婦は無理と思っていましたが、このドラマにはこの人以外にないと思わせる良いキャステイングでした。
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物語イメージ 2
一人息子正(入江甚儀さん)が早くして結婚して家を出て行き、50歳でふたりだけの生活に戻った夫宮本陽平(安部寛さん)と妻美代子(天海祐希さん)はファミレスで食事、オーダーをしようとするのですが優柔不断の陽平は相変わらず決まらない。結局美代子が決めることになる。陽平は、昔もそうだったと、自分たちが結婚したときもこんな感じで、ファミレスで食事してるときに妊娠を告げられ、大学院に進もうかどうしようか悩んで、目の前に置かれたみそ汁をみて、これが毎日飲めたらと結婚し教師になる道を選択したことを思い出す。
〇妻の離婚届を見つけるイメージ 3
家に帰るとホットして美代子はお酒を飲みはじめ、陽平は1年前から習い始めた料理の腕自慢で妻にキャベツとコンビーフの炒め物でツマミを作り、これで、妻はすっかり飲んで寝てしまう。そんな妻を寝室に運び「こいつも息子が居なくなって沈黙が怖いのかな」と、初めて美代子に貸した本「暗夜行路」(これがおもしろい)を取り出しめくると、なんとここに妻の押印のある離婚届けを見つけます。なんでこんなところに置いていたの?優柔不断で気弱な夫、妻を起こして問い質すこともできず、元に戻して寝る。次の朝、妻から「階段と風呂のリフォームを考えて!」と言われ、すわ離婚かと怯え、ここから陽平の苦戦奮闘が始まります。

陽平は高校の国語の教師。離婚届のことを心配しながら出勤すると、クラス一番の御銚子者の“どん“こと井上克也浦上晟周さん)に会う。こいつ明日家庭訪問だと思い出していると彼のガールフレンド菊池原朋美(紺野彩夏さん)がやって来て「”どん“の母親が不倫して事故を起こし入院している。それで”どん“はお婆ちゃんと揉めているの、知っている」と話し掛けてくる。なんでこんな話を?早速家庭訪問すると厳格でしっかりしたお婆ちゃん井上礼子(富司純子さん)が出て来て「私がしっかりしているから心配ご無用」と追い返される。陽平は、こんな嫌なことがあるからよかったと、料理学校に行きます。
イメージ 4ここで見事な料理を作ります。お友達がいて、ずけずけ物を言う五十嵐真穂(菅野美穂さん)と結婚願望の強い門倉すみれ(相武紗季さん)に離婚届けのことを話してしまいます。ふたりは「奥さんは不倫してる」と言う。さっそく帰宅し悩んだ末に妻の携帯番号を調べると息子の正の名前しかない。

次の日、授業中に“どん“が飯を食わずに出校していて倒れる。「これで作って食べろ」とレシピを持たせる。料理学校に行くと五十嵐さんが「夫と喧嘩して、もう離婚してやる」と息巻いている。これを聞いて、心配で、家イメージ 6に帰り妻が風呂に入っている間に離婚届を出して見る。話そうと思うが話出せない。そこに顔パックした妻が現れ「男はいいね。ナイスミドルとか言われて」と言うもんだから、頭に来て「見た、離婚届」と白状する。妻は顔パックを剥がしながら怖い目を向け「私、あすから正のところに行く」と言い出す。
〇離婚届にサイン
学校に行くと明美から「先生はどんどん大切なことを先送りする。先生に向いてない」と言われ、「そうか、結婚に踏み切ったあのときの決断が間違っていたのか」とつまらんことを考えながら家に帰り離婚届を探すが無くなっている。その時、息子正から「お母さんがしばらく居ると言ってるけど、タイミング的には熟年離婚?」と電話が入る。「思い当たることがあるのか」と問うと「お父さんが料理を習い始めてから元気がなくなった」と言う。料理を習うことは妻のためにと思ったけど、どうして元気が無くなるんだ!!

料理学校に顔を出すと五十嵐さんが「わたしたち、相変わらず喧嘩。私はしっかりしてるのに返ってくるものが小さい。私のセックスが悪いのかな。宮本さんも助けてあげます」とラブホテルに誘われる。
しかし突然の電話でご主人が入院ということで二人で病院を訪ねると脱水状態で入院ということで、五十嵐さんは「これしきのことで」と夫婦喧嘩が始まる。「俺もあんな風に夫婦喧嘩ができればいいの」と思っていると、こんなところで母親の見舞いに来ている“どん”に出会う。病室にも入らずぼんやりしているので理由を聞くと「母親に言葉をかけてやれない。こんな自分が嫌いだ」と言う。考えてみれば自分のそうだと陽平、帰宅し、かってよく聞いた吉田拓郎の「今日までそして明日から」を聞く。この曲が本作のテーマソングになっており、この物語はこの歌詞のように展開しています。そこに突然妻が帰ってきたので「離婚届、なぜ書いた」と聞くと「今は話せない。不満はないが、不安がある」と言う。
イメージ 5「少しは俺のことを考えろ。自分のことを中心に考えて」と責めると「あなた自分に優しいと思っているでしょう。将来を捨てて私と結婚したことを。あなたは結婚には向いてない」と宣う。
ついに頭にきた陽平は「リフォームするついでに俺を取り換えろ」と離婚届にサインします。
〇妻の家出イメージ 10
美代子は「それまで!言いたいことは」と離婚届を持って出て行きます。これでいいのかと陽平は戸惑うのでした。
教室での国語授業。夏目漱石のいう“生きるための三つの言葉”「考えよ、語れ、行え」が大切だと教えていると“どん“が「先生は熱血感だ、相談に乗る」と言うから、彼の妹も呼んでファミレスで飯を食べることにする。ここで、「お前、お母さんのために弁当を作れ」とお母さんとの関係修復に行動を起こすことを勧める。イメージ 7
さっそく井上家で料理を教えていると、お婆ちゃんが帰ってきて「何もしない母親に弁当など作る必要ない」と言い張る。陽平は「あなたはやさしくない。自分が正しいと思っても押し付けることがある。それは正しいけれど自己満足かもしれない。弁当つくることは正しくないかもしれないが、そこにはやさしさがある」とおばあちゃんに言い放って、どんと一緒に弁当を持って病院に。
“どん“が逃げるので、「息子さんが作った弁当です」と食べてもらうと「昔食べたものばかり、おいしい。息子には謝りたい」と涙を見せる。食べ物には人をつなぐ魔力がる。
”どん“が「母に何を話していいかわからないから逃げた」と言うから「ただ居れば良い。帰る時が来たらまた明日ねと言え。それを毎日繰り返せ」と教える。
〇妻を迎えに
帰宅して妻に電話しようかと悩む。料理しながら「俺は今までにいくつもの選択、息子の名前、一戸建て家の購入などをしてきた。しかし、どれが正しいかなどわからん」という思いに駆られ、新幹線で福島に急ぐ。
正のところに着くと「お母さんは帰った。離婚届出しに?今は夜でも離婚届け受け付けている」と言う。嫁の優美(佐渡川愛美さん)に「お義父さん、言葉がないなら抱きしめる。それができないなら手を握る」の言葉に送られイメージ 8駅に急ぐ。が、間一髪で電車は発車。と、向こうのホームに妻がいるではないか。大きな声で「離婚届出したか」と聞くと「まだ持っている」と言う。「何で書いたんだ」と問うと「保険よ。ジョーカーかな。私は27年前、あなたがプロポーズしてくれたときほっとしたの。自分が教師がやれるか自信がなかった。私は望まれて結婚するんだと自分に言い聞かせた。正が結婚して家を出ると家には何も残っていなかった。あなたが料理を始めて私なんかいらないんだと思った。これから生きていけるかと福島でボランテイアをはじめ、私も必要とされることがわかって、あなたが別れると思ったら離婚届を出すことにしたの。あなたが料理なら私は離婚届、ジョーカーだよ」と叫ぶではないか。イメージ 9
俺はお前を・・・」と言おうとするとホームに電車が入ってきて、電車が出たあとに妻はいない。と、そのときホームの階段を駆け下りてこちらにくる妻が「さっき何言ったの」と聞く。この時停電で真っ暗闇になったが、妻に弁当を食べさせると「私の好きなものばかりだ」と言う。俺は「お前のみそ汁が飲みたいんだ」と言うと「プロポーズのときと同じじゃない」と妻。「そうだ、今からスタートだと思っている。お互いが大切なところを見つける。タイムマシーンがあるなら27年前に目の前に居る人を絶対に離すな、間違っていないからと言う。27年経って駅で震えているが今でも美代子に恋している」。
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