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「リリーのすべて」(2015)

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20160319 東宝シネマ
世界で初めて性別適合手術を受けた風景画家のアイナー・ヴェイナー(エディ・レッドメインと画家の妻ゲルダアリシア・ヴィキャンデルの夫婦の物語(実話)。
ここでは、なんとしても女性になりたいと願う夫アイナーと彼の願いに悩み、苦しみ、聞き入れるも男性であって欲しい思いのなかで、遂に彼の願いを聞き入れ、壮絶な手術を支えるという夫婦の愛の物語です。ラストでのふたり、苦しみを解き放たれ、自由になるという演出は感動です。「人とは、性とは、愛とはなにかを考えさせられる作品です。
 
男性から女性に変わっていくリリーを演じるエディ・レッドメイン、そして男性から女性になってしまうリリーに戸惑いながらも最後の最後までリリーを愛し支え続る妻アリシア・ヴィキャンデルの熱演、身体を張った演技は、見事です。
ふたりの願望・悩みを切り取る印象的な映像・カメラワーク、そして1920年代のパリ・デンマークの風景、画室、美術品などの深みのある映像、音楽もすばらしい。
物語は
冒頭、アイナーはデンマークフィヨルド地方の沼の風景を描く著名な画家であること、そして妻は絵を売ろうにも売れない画家であるということから物語はスタートする。
妻は帰宅し彼の描く絵を見て嫉妬する。製作中のバレーダンサーの絵(リリー)を描こうにもモデルが来れなくなり代役に夫にストッキングを穿いてサテンの靴にドレスでポーズをとらせるが、夫はストッキングや衣装のすべすべ感に魅せられ彼の身体に幼いころの記憶、自分は女ではないか?を呼び起こす。レッドメインの絶妙の演技です
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彼女はこれを契機に、面白がり、彼に下着も女性のもので女装させて絵にする。彼は外出しなくなり女装で女の仕草で彼女を迎えるようになる。彼は、彼女の絵がうまくなっていて、自分もどんどん美しくなっていると感じる。ベッドではしっかりと男性役が果てせている(ベッドシーン)。
女装(見事です)してふたりで外出するようになり、遂に「アイナーの従妹リリー」として舞踏会に参加、そこでヘンリクという男性が近づいてきて「君を見て同じ(ホモ)だと思う」と告白する。キスされそうになり、アイナーは鼻血を出す。これを見ていたゲルダは「もうリリーは現れないほうがよい、彼には会わないで」と女装遊び(彼女は遊びと思っていた)を止めにする。が、夫アイナーは、このことで苦しみ、リリーでいたい気持ちを抑えがたくなり、夫婦の間に亀裂ができる。
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アイナーは、外出し、モデルの衣装部屋で、全裸(○○○を隠し)の姿を愛おしむ(ここはすばらしい映像です)。その後、女装でヘンリクに会う。帰宅し、妻が女装の自分を描いているのを見て、モデルにして欲しいと訴える。
ゲルダは画商にこの絵を持ち込むと、「いままでと違う、売れる」と言われる。一方アイナーは女装でヘンリクに会うと、彼は「隠し事は嫌だ」と“男”に触りにくる。男にしか見ない彼に絶望し、窓に自分の姿を映して見て、泣きながら家に帰る。女装姿で帰った彼を見て、ゲルダは「なにがあったか、もうどうしようもない」と彼に「ヘンリクが好きか」と問うと「君が好きだ」と言い、幼いときの記憶を話します。
アイナーは意を決して病院に相談する鼻血がでるということで放射線治療を受ける。また、別の医者には精神病だと診断される。この時期、ゲルダの絵が売れ出し、高名な画商の紹介を受ける。
診断書に「性格錯倒」と書かれるが、エルダは「絵を一緒に描きたい、私に付いてきて・・」とパリに居を移す。
ここで個展を開く。モデルは誰かと話題になる。ふたりは愛し合うが、アイナーは感じなくなっている。エルダは絵を描きながら彼を求めるが拒否される。絵のアドバイを求めても拒否。ここでの、アイナーが外出し「飾り窓」の女を覗きみて自分を愛撫するシーンは圧巻です。
ゲルダはパリで画商している彼のお幼友達ハンスの協力で元の夫婦の生活を取り戻そうとする。が、アイナーは彼の話しを堂々とした女性として振る舞い、モデルになる
ということで受け入れるのでした。
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ゲルダとアイナは女性として暮し始め、絵はよく売れる。ゲルダはハンスを見て「アンナに会いたい、夫に会いたい、夫が必要」とリリーに訴える。リリーは鬘を外して愛情とは何かと悩む。
 
アイナーはもう限界と図書館で自分の身体について調べ、医者に相談するも「精神分裂」だと言われる。帰宅途中で暴漢に遭う。帰宅し妻ゲルダに話すと「精神分裂ではない、私のせいだ。私は貴方を助けたい」と、アイナーの理解者になっていきます。
 
ここで、ドレスデンの婦人科医ヴァルネクロスに相談すると「私は、(貴方は)女だと思う。手術をしたことはないが手術は2回、男性を切除、膣の形成だ。失敗する可能性があるが協力できますか」と問われます。
アイナーは「一人で、彼を消しに行く」と言って、ゲルダにキス、男としての最後のキスをします。病院に発つアイナーを駅で見送るゲルダの姿にはこれでアイナーを失
うのではないかという寂しさが見えて切ないです。
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病院には、女装で、胸を張って、リリーですと入って行く。病院はもうすこし体力をつけてと言うが彼は手術を急ぐ。最後の男の姿を眺めるリリーは美しい。
手術後、ゲルダは病院に赴き苦しむ彼に付き添います。療養中の彼(リリー)の絵を描くと「あなたのその絵に近づくと、私は美しくなる」と彼が応じるのでした。
アイナーは退院、ゲルダは外出時にはそっと薬を持たせ、デパートの女性店員として働き始める。ゲルダは絵を描くこと勧めるが、アイナーは画家ではなく女になりたいと言い、「妻は“アイナー”(男)を想っている。はやく“アイナー”を消したい」と考えている。
アイナーは、2回目の手術をゲルダに告げると「死ぬよ、苦しむのを見たくない」と去ってしまい、アイナーは涙を見せるのでした。
 
身体を縛りあげての手術、出血がひどく状況はとても難しい。が、彼は目覚め「やっと本当の自分になった」と漏らし、駆け付けたゲルダの介抱を受ける。
彼は「私のことは心配しないで欲しい。これほどの愛に私は値しない。昨夜はうつくしい夢を見た。母は子供を抱いてリリーと叫んだ」という言葉を残して逝ってしまいました。
 
ラストシーン、ゲルダとハンスはリリー(アイナー)の故郷、デンマークフィヨルドを訪れると、形見のスカーフが風で舞い上がり、これを追うとするハンスに「もういいのよ、自由にさせてあげて」と呼びかける。余韻のあるENDです。
 
記事1 20160321
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