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「無伴奏」(2016)愛なくては、革命はできない!

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無伴奏」という題名に魅せられ、原作は読んでいませんが、そしてなによりも若い俳優たちの熱演がみたくて行ってきました。「1970年前後の仙台を舞台に、クラシック音楽の流れる喫茶店無伴奏」で出会った男女4人の恋と青春」を描くラブストーリー。この時代、激しい反戦運動のなかで自分はどこに向かうべきかともがき苦しむなかで若者たちが恋し、恋の不条理に苦悩する姿がしっかり描かれています。
若者たちの想いの揺らぎやそれが交叉していく様が、脚本特にセリフ、演出、演者の表情がしっかりかみ合って、すばらしい作品に仕上がっています。原作は小池真理子さんの半自叙伝的同名小説、矢崎仁司監督作品です。

時代に揉まれながら初恋から初体験、そして劇的な終末を迎える17歳の女子高校生野間響子を演じる成海璃子さんの時を経て変化する美しさ、響子を恋焦がれるがある秘密を抱える堂本渉役池松壮亮さんのなんともいえない寂寥感、渉と友人以上の関係にある関祐之介役斎藤工さんの時に見せる不気味さ、そして祐之介の恋人エマ役の遠藤新菜さんの身体を張っての演技、すばらしいです。特に渉と裕之介のどうしようもない二人の関係が、過去の説明はないけれど、演者おふたりの熱演で納得いくものになっています。
 
物語は、
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冒頭、響子がデザイン帳に「僕は20歳だった。それが人の一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。一歩足を踏みはずせば、いっさいが若者をだめにしてしまうのだ。」とポール・ニザンの言葉を書いたあと、成海さんの顔が映され、教壇に立ち制服を脱いで「制服廃止斗争委員会」設立を宣言するシーンからはじまり、革命ゴッコを止め恋に走る17歳の高校生の物語が語られるという、とても印象的な物語のスタートです。
 
19694の東北大での安保闘争集会に参加するが、父からの厳しい叱責もあり、自分がまねっこ猿であることを感じ初め、バロック喫茶の「無伴奏」で偶然、大学生の渉、裕之介、裕之介の恋人エマに出会います。
ここで渉から声をかけられ、逢瀬を重ねるようになり、会うごとに吐く渉の言葉、「一生かかって貫き通せるものはなにか、人を愛すること」「愛なくして革命なんか起こせない」が彼女の心を捉えます。
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4人が集まった渉の部屋(茶室風)で、裕之介とエマのセックスシーンを見せ付けられた響子は、初めてセックスを見て驚き、この場から逃げようとするが、渉に捕まり「君が好きだ」と告白される。「何故」と問うと「好きになるのに理由がいるか」と抱擁されます。
 
11、ふたりで会うようになり、渉が響子の部屋にやって来る。レコードを聞きながら響子が「笑っていても、お喋りしていても、渉さんはここにいない。遠いところにいる」とこれまで隠していた想いを告げると、渉は強固を押し倒し求めようとしますが響子が拒否します。渉には姉がいて、渉と姉が腕を組んで歩く姿を目にしており、渉の本当の気持ちがまだ信じられないからです。このとき、裕之介から電話で渉の姉が自殺未遂だと伝えてきます。渉は「弟が姉を愛してもおかしくない。僕は愛してない」と言い、響子は「貴方はだれを愛しているの」と問います。
 
1970年1月
父にいまの生活を厳しく注意され、これからどうしようかと、「無伴奏」を訪ねると、裕之介に会う。彼から、渉が風邪で寝込んでいることを聞き、彼を訪ね一緒にいると、離れたくたくないと、響子にとって初めてのセックスを経験します。が、この現場を裕之介に覗き見されていることに気付きます。渉は裕之介に「出て行ってくれ!」と怒鳴り、「忘れてくれ!!」と響子を慰めます。
このあと、響子は予備校で受験勉強する合間に渉と度々連れ込み宿で逢引し身体を重ねていましたが、朝まで一緒にいたいと8月のある日、叔母の留守に、家で会うことにしていたが、彼が来ない。彼の部屋を訪ねると、渉と裕之介が体を合わせているのを目撃
し大きな衝撃を受けます
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このシーンは、雷の光を取り入れてとてもきれいな絵になっていて、女性との関係とは違った二人の関係をうまく撮っています。
響子は家に逃げ帰るが、異変に気付いた渉がやって来て、ことの経緯を説明します。「ふたりは愛し合っていた。どうしてこうなったかは分からない。離れようと思うが離れられなかった。が、ここ2年はそんな関係ではなかった。こんなことは止めようと誓った。別れたと思った。エマが現れ救われたと思った。しかし、裕之介に見せられる度に淋しくなった。そんな時に君が現れた。君が好きなのは本当だ。何かが狂った」。
「私はどうすればいいの」と問うと、渉「それは君が決めることだ」と言い放つのでした。
響子はレコードを聞きながら、「プラトニックという言葉はまやかしだ、セックスすると精神が・・・」とこれからの渉との関係をどうしようかと考えます。
エマが妊娠していることが分り、響子は「生きることとはこういうこと。愛する人を奪わねば、例え罪だとしても」と渉との身体の関係を続けるのでした。
 
12月
無伴奏」に4人が集まるも、裕之介は悪いけどお先にと帰ってしまう。渉はエマと裕之介の関係を訝るが、・・・エマは裕之介に殺害されてしまう
刑事が裕之介を逮捕にやって来た現場に響子が居合わせ「私がやった」と訴える渉を見る。
渉は、電話で「僕がいなかったら彼はエマを殺さなかった。警察には二人の関係は話さなかった。これは宿命だ。僕が愛した初めての女性は君だ!」と話して自殺。この結末には、どうしてこうなるんだという違和感があり、受け入れるのに時間が必要でした。
 
響子は、「無伴奏」を訪れ、初めて会ったときの思い出ノートで3人の名前を、「愛なくては、革命はできない!」の言葉を確認し仙台を去ることに。
      小池真理子さんの小説だと思える作品でした。

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