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「神様のカルテ」(2011)

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原作は長野の病院に勤務する医師・夏川草介さんの小説「神様のカルテ」で、本屋大賞2位というヒット作。地域医療に従事する若い内科医栗原一止(櫻井翔さん)が、さまざまな患者と触れ合う中で、成長していく姿を描くヒューマン物語ですが、ガンの終末医療地域医療の問題を鋭く突く「社会派ドラマ」でもあり、見所の多いすばらしい作品です。セリフが秀逸でくすっと笑えて、泣かされるシーンも多く、楽しめる作品です。
一止は夏目漱石をこよなく愛するという風変わりな一面もあるが、患者には誠実に向き合う地方病院を若き内科医。あおいさんは 山岳写真家で過酷な地域医療の現場に苦悩する夫を支える妻榛名役です。
宮﨑あおいさんが「榛名はパーフェクトな女の子で自分と似ているところは・・・とくにないです(笑)」と言いほどに、おそらく皆さんが羨むほどの良妻を演じています。落ち込んだ夫を励ますシーンがほとんどで、出演シーンも多くなく、抑えた演技に徹していますが、それでも存在感があります。(*^_^*)
重要な役どころとして末期がん患者安曇を演じる加賀まりこさんとの共演も見どころです。加賀さんからは、「存在感がくっきりしていらっしゃって、お芝居にも幅があるという印象でした。わたしの中で、くっきりとした存在感をお持ちの方ってなかなかいらっしゃらないんです。だから、ずっとくっきりとしていてほしいですね。」という言葉を戴いています。
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物語は
夜明けの松本盆地に、消防車のサイレン音。病院は夜間も緊急外来客で満杯。「一止先生の当直時は特に患者で一杯になる」と看護師たちが噂するなかで、一止先生が眠そうに何かぼそぼそと喋っています。
先生は尿管に尿が詰まった患者を診て、レントゲン写真で確認して、救急車からの急患受け入電話にと大忙しの現場、それに酔っぱらった患者が大半を占めるという現状、患者の要求に音をあげで先生に八つ当たりする看護師など、救急指定病院の抱える現状、問題点が浮き彫りになるリアルな現場シーンから物語が始ります。吉瀬美智子さん(外村看護師)、池脇千鶴さん(東西看護師)の演じる看護師さんがとてもリアルに仕上がっています。
榛名は夜明けの美ヶ原で南アルプスを撮影中です。とても美しい映像です。一止は膵臓ガンの患者の対応に追われていたが、痛み止めでやっと落ち着いた状態になったので御岳荘に帰宅し“榛名”と呼んでも返事がない。置手紙があって、そこには「撮影に出かけます。結婚記念日おめでとうございます。また、1年間よろしくお願いします」と書かれていて「何たる失態」と大反省です。
7月25日ガン患者田川さんが亡くなった、モルヒネで安らかに亡くなったが、家族が駆けつけるまでの延命処置で肋骨が全部折れてしまった、「一体お前は何をしている」。帰宅するとお帰りなさいと榛名。「なにか悲しいことがありましたか」、「案ずるな」、「これから神社に行きませんか、まだただいまの挨拶をしていませんから」「一止さんの背負い込んだ荷物を軽くするようお願いします」。
病院に出ると信濃大学病院研修案内が来ていて、古狸先生(柄本明)に聞くと俺が出した云い「行っておいでよ。病院はひどい所だから」と勧める。
御岳荘では、共同洗面所で、一緒に住んでる画家の男爵(原田泰三さん)、大学院学生学士殿(岡田義徳さん)が榛名に、歯磨きしながら、「病院は派遣の医者で成り立ってるんだ」と言い「ドクターは社会の底辺から脱出して高級マンションにでも住んだら」と話題にする。御嶽荘の描写は“必要なの”と思われますが、このドラマには欠かせないいい味付けをしてくれ、この作品のすばらしさです。
一止は信濃大学病院の最新の医療現場を研修し、高山教授(西岡徳馬から外来の診察もやってみてはと勧められ、やることに。そこで、安曇さんに出会う。「家族はいない、病気は胆嚢ガンと聞いている。手術していただけるか」というものであったが、「外科の先生と相談してみる」と返事し、医療方針を討議してしっかりカルテに書き込む。高山教授に“手術をしない”と答えると「さすが」と褒められる。「内視鏡の教育を受けませんか。熱意のある人は歓迎です」と勧められ、先輩の砂山さん(要潤は「教授に気に入られたんだ、来年はことらに来て一緒にやろう」と言う。病院に帰り古狸先生に報告すると、当直を代わってと言われ一止が行うことになる。
一止は、夜勤疲れで居眠りを繰り返しながら、次々の患者を診断と、なんと大学病院で会った古賀さんに会うことに。「あと半年だと言われ、余命わずかだから好きなことをして過ごしなさいといわれた」と泣きながら「こちらでも看ていただけないですよね」に「次の外来に来てください」と返事、「ばかやろう、大学病院の仕事ではない(として断られた)、自分が気付かず(手術と書いておけばよかった)、こんなことになった」と自分の失態を嘆く。
学士がもう用がないと本を燃やしている。榛名が「貰ってもよいですか。一止さんが好きです」と言うと「夢を叶えたのはドクトルだけだ。よく泣いていた、死亡する家族に、難病患者に、こんなドクトルが泣き虫を返上して立派になった」、「いまでも泣いています。ただ涙を流さなくなっただけです」と榛名。
島々診療所で患者診断中に、本庄病院から安曇さんが出血したと電話が入る。もう治療法はない。加賀さんに全てを話す以外に処置なしと、大腸が破れていることを話す。安曇さんは「ここに置いてくれるのと・・。」と問うてくる。この段階で使える抗癌剤があるのか、放射線治療はうちでは出来ない。病院を移るように勧めるが拒否する。こんなときに、信濃大学から来週のカンファレンスへの誘を受け、参加することにする。
安曇さんは、ここで治療を続けられることで安心し、子供となかよく遊んだり、夫が学校の先生であったことな話し、楽しそうに過ごす。

男爵さんがぼんやりして「絵が描けない。いまだこそ描かねばならないが描けない」と悩んでいる。
カンフェレンスに参加している間に安曇さんがまた出血。だれもいないので、古狸先生が代わりに対応。帰ると先生が、安曇さんがまた下血したと言う。病室に行くと「夫は分校の先生で・・」「どちらの」と昔の話に付き合うことに。楽しそうに話す安曇さん。東西看護師は部屋を移動してはと提言。

帰宅すると、学士殿がアパートを出ることになったと言い、「淋しくなる!」と榛名を中心にして追い出会を準備中。

安曇さんは髪をショートカットにして病室をナーションステーションに隣接した部屋に移す。「みんなの顔が見える」と喜ぶが、出血があれば状況は急変する、出血しないように。
茶店で砂山さんに「気を付けろ、一人の患者に係わりすぎるな」と忠告される。
帰宅すると榛名の御帰りなさいの声、送別会の準備できていて、翌日、学士が出かけようとすると、紙雪吹が舞う。真っ赤なペンキで塗られた橋。カーテンにサクラの絵が描かれ、床一面にサクラの花びらで、「門出の桜」だと男爵が声を上げる。
学士さんが「家に帰るんです、偉そうなこと言って、本当は大学生ではなかった。・・」と告白すると、一止「学生でない、そんなことは問題でない」、「子供の時間を卒業して社会に出る」、「違う、何を頑張ればいい。毎日働いて、どうしていいか考えないことにしている。毎日迷っているよ。自分のなりたかった医者はこれでいいのかと。やり続けてわかったことがある。学問を究めるなら農作業してでも出来る。君の論文を読みたい」、学士さん「ニーチエは言った、苦しみをともにするのではなく喜びをともにするものが友人をつくる。一生忘れない」。榛名の声で「バンザイ、バンザイ」で送り出す。ここでの目一杯の涙で送り出すあおいさんの演技に泣かされます。
一止は自分の悩みを学士の悩みに重ね悩んでいるようですが、その結論に近づいているようです。
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病院で、安曇さんに会うと文明堂のカステラが食べたいと言うので、妻に電話で依頼する。榛名が病院にやってきて、遊んでる子供に案内され、安曇さんの部屋に。「始めまして、これをお届けに着ました」、「おいしい」と。榛名は写真を見せ「穂高の山側です」、「先生に見せてあげたい、私たちの故郷を」。
「先生明後日何の日か知っています。誕生日なの」と東西看護師。一止「何度もいうが私には妻が・・」に「安曇さんよ。もう一度見せてあげられないかしら。屋上から天気がよければきれいな穂高が見れます」、「考えさせてくれ」。
夜、安曇さんに会うと引き出しを開けてと言う。主人から誘いがあったら困るからと、延命処置を望まない旨の手紙だった。
砂山さんに会うと「片山教授の誘いを断ったてな。みんな怒っている。一人の人間に係るな。お前は選ばれた人間なんだ。お前は目の前の患者を置いて行くのが嫌なだけなんだよ。この一歩は医者の未来をどれだけ左右させるか、人をあまりがっかりさせるな」と忠告してくれる。これを隣で古狸先生がにんまりして聞いている。
家で寝そべって、榛名に何故写真を撮るかと聞くと「一止さんとちがってわたしの仕事とは無くてもいい、誰かに何かを伝えられたらと信じています。そこは一止さんに似ていますね。今夜の一止さんは何を悩んでいるんですか。大丈夫です、大丈夫です。いちさんは。」
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安曇さんを屋上に連れ出し、病院のみなさんが集まっていて、みんなで安曇さんの故郷穂高連邦を望む。感動です。安曇さんの「よくしていただいて・・」に「私たちも安曇さんに助けられていますから」と東西看護師。そして榛名によって記念写真を撮ります。

古狸先生の誘いで居酒屋さんに行くと、ここで高山教授に会って「これからの医療の道を探すこと、もっと広い道を考えて欲しい。君はまだ医者を続ける意思がみれない・・・」と言われる。このことについて古狸先生はどう考えるべきかと尋ねると「死にかけている人を助ける、楽しかったんだ。悩め、悩め」と言われる。
家に帰り「わたしは何をしたらいいのかわからない」と男爵に打ち明けると「そんなことを分っている人はいない。昔、仏を彫ってる仏師に聞くと、木に埋まっている仏を彫り出すだけだと言うはなしがある。ドクターのなかにはもう答えはあるのではないか」と言う。一止は毎日の厳しい医療活動のなかで、すでに目指す医者とは何であるかを見つけているのではないか。胸をうつセリフです。

榛名の「今朝は早いんですね」に、しばらく病院に泊まることになると伝えて家を出る。榛名は不安げです。
安曇さんの病室で話しを聞いてあげる。おだやかな表情で話す安曇さん、が、一止が子供の治療をしているところに緊急電話で安曇さんの危篤状態が知らされる。出血性ショックと判断し、「輸血全開」と指示するも東西看護師のバイタル報告で「もういい、やめよう」と決断。「やっと旦那さんに会えるんだ」と脈をとり、死を確認する一止。安曇さんは逝ってしまいました。「お疲れさまでした安曇さん」。
救急依頼の電話が入り、その処置に追われ休んでいると安曇さんの遺書「栗原一と先生へ」が伝えられそこには「大学の先生から宣告を受け自分の境遇を呪いました。その時気付き、カルテにびっしり書いてくださったのを見て、やっとここに辿り着きました。誰にもすがれず死を迎えるのは辛いですが、ここで、寄り添って下さる皆さんに恵まれ、幸せな最期でした。あの分らないカルテは私にとっては神様のカルテでした」と記してあった

夜開け、家に帰ると、榛名が待っていて、泣いてる一止を見つけ、慰めます。そして、4月からも本庄病院で働くことを古狸先生に申し出ると、「栗ちゃんは俺に似ているんだって。後悔するよ、俺はああなっていたんだと思うと。馬鹿だなあ栗ちゃんは」と言うので「挫けそうになったら助けてください」とお願いする。
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公園で待ってる榛名のところに駆けつけると「今日は神社にお礼参りにいかねばなりません」と言い、小声で「あかちゃんが・・」。「だめだ、こんな寒いところで・・、あそこは子宝の神様ではないぞ」、「神様は神様、ちやんといたでしょう」と榛名。
辻井伸行さんのテーマ曲がとてもやさしく、励ましになって、余韻のあるエンデイングです。
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