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「64-ロクヨン-後編」(2016)

イメージ 964-ロクヨン-後編」(2016)
公開舞台挨拶で原作者の横山さんが「64が映画に乗っ取られてしまったような、すごくさみしい気持ちです」と述べておられるように、すばらしい出来です原作で楽しんで、映画を見てまた楽しめて「ロクヨン」で2度楽しんだことになります。
後編は、原作どおりなら、ミステリー色が強い大きな仕掛けのある犯人探しストーリーだと思っていましたが、この作風を引き継ぎながら事件に係る人達の生きざまがしっかり描かれるヒューマンドラマになっています
前編で描かれた「警察と記者の対立」「警察の内部対立」「事実の隠ぺい」という社会の軋み・悪弊から、この事件を契機に「警官である前に人であれ」と解き放たれる姿、家族愛に感動です。前編同様、名優たちの感情のこもった演技を楽しむことができます。
この作品を観るにあたって原作を読むより、前編を観ておくと良いと思います。
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物語、
冒頭、雨が吹き付ける公衆電話ボックス(雨宮の無言電話?)、「あゆみ、どこにいる、元気か、戻っておいで・・」という三上の応答、前編で描かれなかった大きな伏線から後編が始まります。まずは前編のおさらい。これでいきなり後編でも楽しめますが、後編のみどころは、登場人物の行動が前編とは異なって事件を契機に大きく変化してくるところですのでぜひ前編を観ることをお勧めします。
○誘拐事件の発生
誘拐事件が発生、「2000万円を丸越百貨店の一番大きいスーツケースで持って来い」というもの。「嘘言の可能性もある」と刑事部捜査一課次席御蔵は報道管制を要請する。総務部長は「64事件を模倣したような誘拐事件で長官来訪を妨害しようとしているが、あす長官は来る」とこれを無視する。
三上は犯人匿名のままで報道関係者に伝えるよう係長諏訪に指示するが「(匿名報道しないと約束したばかりなのに)そんなことしたら大変なことになる」と諏訪らに反対され、「実名を教えるから、300人が集まる部屋を準備しておけ」と言い残して刑事部刑事1課長松岡のところに実名を聞きに行く。しかし、会ってもらえそうにないのでトイレのなかで彼がやってくるのを待つ。おもしろいシーンです。「教えられない」と断られるが、「広報班に魂を売ったつもりはない。刑事にも未練はない。(娘の命の問題だ)」と食らいつくと、課長は「被害者は目崎正人、47歳、スポーツ店経営・・」と明かし、明日妻の美那子(元クロヨン事件で張り込を担当した婦警)を貸してくれと頼まれる。帰宅し妻に「17歳の娘が誘拐された事件だから考えておいてくれ」と伝え、自分の娘あゆみとの確執、あゆみの家出に思い出す。この事件に自分の娘への想いが落ち始め、三上が人として大きく変化しし始める。
長官視察は中止となり、雨宮に伝えにいくと「そうですかわかりました」と言い逆に「あなたは大丈夫ですか、三上さんちょっと座りませんか」と誘われ「悪いことばかりではない、きっと良いことがあります」と励まされる。ここでの二人の話す姿は、刑事と被害者の関係ではなく、娘を失っている者同士が悲しみをどう乗り越えるかという関係に見えます。三上が日々どうやって過ごしてるのかと聞くと「祥子はメーダマが好きで、あのときもまだ早いのに作ってくれと・・・」メーダマの想い出を語り、これも消えて行きいまでは整理のできない心のみだと言う。このシーンは二人の心が通うとても良いシーンです。特に永瀬さんの時を経て枯れた姿がすばらしい。
帰って総務部長に報告すると「誤算はあったが結果オーライだ。長官訪問つぶしはお前か」と叱責される。
○犯人捜索と記者会見イメージ 1
記者発表は刑事部2課長落合(柄本佑さん)、現場経験のないキャリア組の若手、が実名を伏せたレジメを見ながらたどたどしく行う。間髪を入れず秋山記者から「2課長を充てるなどありえない」と大ブーイング。何を聞かれてもまともに答えられない。記者の質問の都度捜査本部に出向いて情報確認するため落合は疲れ、ふらふらになりながら頑張る姿が痛々しい。約20分ぐらいこのシーンは続き、課長がすこしずつ課長らしくなっていく柄本さんの熱演は見事でした。地元記者のTOP秋川も中央から来た記者から「この体たらく、何とかしろ」と責められる。イメージ 2
目崎スポーツ店に松岡課長が乗り込み
犯人からの電話内容を目崎に確認すると「無言電話には妻が応対、自分は1回だけ出た」という。ここで、雨宮が目崎のイメージ 8次女早紀ちゃんにメーダマと娘の写真が入った袋を持たせ家に送り届ける映像が流れる。長女が早紀の部屋でこの袋を見つけメーダマを取り出すシーンがあり、目崎はメーダマと写真を見ており誰かに追われていることに気付いている。
報道会場では、「このまま続けたら2課長は死ね」と美雲婦警が心配しだす。地元記者の秋川はこの事態を悔しがり抗議にやってくる。2課長が「脅迫電話は玄武市内。情報を集めています」と発表するが3km以内なら確定できるだろうとまたも袋叩きに会いついに倒れる。「この後は誰が継ぐんだ」との問いに、三上は「1課長だ」と即答し玄武署に出かける。この事態にも2課長はまだ頑張れる言い、総務課調査官二渡が「誰か人を呼ぶか」というのを断る。
イメージ 3この頃刑事部長室では松岡参事官が幸田メモのことは自分にまかせてほしいと一任を取り付ける。参事官を捕まえた三上は情報不足を訴え捜査指揮車に乗せて欲しいと訴えると、20分のタイムラグで報道してもよいという条件で許可される。
広報班に「前橋市に向かっている、情報が入ったら伝える、持ち堪えろ」と指示する。目崎に「金は準備できたか、喫茶葵まで出てこい」と電話が入る。ここで14年前の事件が思い出される。目崎が飛び出すと警察車がこれを追う。電話発信基地が割れる。指揮車の後ろに目崎の車がついている。「1115分家を出た。詳しくはいまは言えん」と2報を広報班に送る。「片山町、ユーターンしろ」と犯人より連絡、「玄武市旭町に、娘を返して欲しいならスピードを落とせ、ガスが切れる」と犯人。ヘリウムガスで声を変えていたがガス切れで地声になる。「そのまま直進、純喫茶チェリーに行け」、幸田の声だ。
「玄武市内で目崎の長女かすみ保護」の電話が入る。「保護ではなく補導です。化粧品と・・の窃盗です」という電話に「娘が確保されたので事件は終わりだ、報道規制を解除する」と三上が声を上げると「お前の決めることか」と松岡は報道規制を続けさせる。
「生きた娘に会いたいならとばせ」「真っ直ぐ3km、”美容院あいあい”に来い、来ないと娘は死ぬ」と幸田から指示が入る。猛スピードで走る。ここで三上の(娘が確保されたことを目崎に教えないことに)怒りが爆発。「娘がいないとはどういうことかあんたらには分からん。刑事はそんなことも分からんのか」。このシーンでの三上:佐藤さんの顔がすごい。松岡は三上に「この事件は幸田の意趣返しだ。この車は64の捜査指揮を執っている」と打ち明ける。
美那子が喫茶店に座っている。「スーツケースを下せ、裏の空き地だ」と幸田の指示。ここに雨宮が待っている(美那子は雨宮の見張り)。雨宮と幸田が仕組んだ犯罪であることが分かる。幸田が電話で「金をドラム缶の中に入れ燃やす」よう指示する。金が燃え上がり目崎はかすみを返して欲しいと泣き叫ぶ。「缶の下だ」と電話。犯人を見つけたと幸田に知らせ、県警はもうあてにしないという雨宮の顔が映し出される。
ここに捜索班が現場に到着する。缶の下には「4歳のままだ、小さな棺に入っている」という紙切れが置かれていた。これを目にした目崎は泣きだす。
目崎に「かすみが見つかった、誘拐ではない」という携帯電話が入る。目崎はもう一度紙切れを読み、一部を破いて食べる。ここでの目崎:緒方直人さんの怒り、恐怖に震える演技がすごい。松岡の指示で目崎は確保され、三上は目崎に近づく雨宮にあとは警察に任せろ」と制止すると雨宮が力なく去っていく。イメージ 4
○64事件の犯人逮捕
目崎の取り調べが始まる。「急いでいった『美容院あいあい』への道は通った記憶があるのか?、娘は小さな棺に入っているという上の部分には何が書いてあったのか」など聞くが、犯人と決めつける言質は得られず解放になる。三上は「小さな棺は何か」と疑問を抱く。
刑事部長室では、部長が「雨宮の供述では証拠にならないおれの現役でことを荒立てるな。あんなものが出てこなかったら・・、広報官ふぜいが、雨宮も幸田も限界を超えた。二度と刑事部に足を踏み入れるな」と激しく三上を叱責、自分の保身のみを主張する部長に猛然と反発する三上。
これを見た松岡は「お前の目は刑事の目だ」というと「娘もこの目が嫌いだった。雨宮に会ったときこれは(俺に)任せろと言うた」と三上。松岡は「64年のたった7日間のそこに本人を引き戻す」と言い「雨宮はそこにいたんです」と三上。イメージ 5
帰宅し妻に「雨宮は電話で犯人を突き止めた。電話をかけ続け、男が出れば声で判断する。あゆみだと思った電話、あれは雨宮だったんだ」と話すと、「私に気付いたとき小さく会釈してくれた。私なんかちょっといただけなのに、64のことを忘れていない。いつまでたっても、どこにいても娘のことは忘れられないのよ」。
イメージ 6三上は64事件現場(琴平橋)の公衆電話ボックスに立ち寄り、雨宮が電話をかけ続け、やっと犯人の声にたどり着いついたときの驚き、笑い、嗚咽の叫び叫びをあげる姿を思い出す。ここでの雨宮:永瀬さんの演技にはその時の感情がすべて表現されています。
三上は“この電話”で目崎に無言電話をすると目崎が出て「娘を返してくれ、何か言ってくれ」。
すでに目崎の家は報道陣が取り囲まれている。雨宮の所には早紀ちゃんがいて、「父は何か悪いことをしたんですか。父はいつも怖がっている、雨宮さんは知っているんですか」「これはメーダマ、雨宮さんに返す」と言う。
三上は側にある車(トランク)をじっと見て目崎に電話で「小さな棺、そこに娘さんがいる、来い」。 
「目崎が消えたら“琴平橋”を張れ」と松岡課長の指示。警察の動きを見ていた秋川が走りだす。目崎が現場に出てきて祥子ちゃんの首を絞めたことを思い出し廃車のトランクを開ける。三上がゆっくり目崎に近づき、「その目で確かめろ。小さな棺が車のトランクだと分かった。14年前祥子ちゃんがここで見つかった」と言うと目崎は逃げ始める。「お前の声を忘れず電話帳を一件づつ調べた。お前の娘は俺が預かっている」と追っかけ、二人の取っ組み合いが始まる。イメージ 7
「トランクをみて思い出したか。雨宮は覚えているんだよ」。秋山ら報道関係者が川原での格闘現場に集まる。「おれも覚えていた。どうして殺したんだ」「そんなこと俺にわかるか」。「逮捕する」の声。この状況を早紀ちゃんが見ている。泣き叫ぶ早紀ちゃんを見る目崎の顔。
○エピローグ
64事件が決着、刑事部長は「14年間申し送りされたものが俺の代で終わるのか」と感慨を漏らし、幸田は警察に出頭、14年間家に引きこもっていた日吉が部屋から出てきて「お母さんごめん」と詫び、三上は広報室の皆に退職することを伝えると諏訪の「本心を教えて欲しい」に「目崎のことではなく、やつの女房、娘の心を砕いてしまった」と反省を述べる。
秋川には「記者として真っ当した、それでいい」と言葉を残し、「お前は県警を変えた」と言う二渡に「お前とはうまく付き合えなかった」と。「みんなが待っています」と言う美雲婦警に「これからは自分の足であゆみを探す。そうしないと向き合えない」と去っていく。報道会見会場では諏訪広報班係長によるブリーフングが始まる。
小正月どんど焼きで、三上は雨宮に会うと、雨宮は深々と頭を下げ「あすは出頭します、これを」とメーダマを渡す。・・・・
                *********
64-ロクヨン-前篇」(2016
記事1 20160614
「64」後編が前編を上回る好調なスタート!
記事2 20160613
子を思う親の愛情に感動!『64ロクヨン-後編』が満足度第1位!