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「クリーピー 偽りの隣人」(2016)

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本作サスペンス・スリラー映画では定評のある黒沢清監督作品ということで観てきました。ある夫婦が“奇妙な隣人”への疑惑と不安から深い闇に引き込まれるていく恐怖が描かれています。
CURE」(‘97)作品が強く印象にあり、これとの比較でみることになります。よく似ているようで違っている基本は同じだと感じています。
物語は当初、会話劇でサスペンス風に展開、ある事件が発生して一気に恐怖に落とされていきますが、「CURE」に比べて軽いという感じ。
ここで扱う事件が誰にとっても身近な日常(ちょとした夫婦関係の軋み)につけ込まれとんでもない事件に発展するという、近所付き合いが希薄になった現在であるが故の恐怖を感じます。観終わって、沢山の不明事項(突っ込み処)がありますが、この意味を問うていくと恐怖が一段と深くなるように感じます。一回ではとても理解しきれない深い作品だと思います。
クリーピー」とは「ゾッとするような」「気味の悪い」という意味合いの言葉。ラストの解釈は観る人に任されており、考えれば考えるほどに、まさにグリーピーです。(#^.^#)
難役をみなさんうまく演じられていますが、特に奇妙な隣人香川照之さんのつかみどころのないからこそ伝わってくる怖い演技、隣人に翻弄され堕ちていく竹内結子さんがすばらしいです。
 
物語、
刑事の高倉(西島秀俊さん)が大きな取調室で容疑者と向かい合っており、これから拘置所に移動することになるが「こいつはサイコパス、あと一日話を聞いてみたい」などと悠長なことを言っていて女性を人質に取られ逃走を許し、彼女を死なせ自らも受傷するというヘマを犯す。
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1年後、退職した高倉は妻の康子(竹内結子さん)と大きな愛犬マックス(大きすぎ違和感あり)とともにここに引っ越してくる。「警察をやめてよかった、大学の先生はおもしろい」と言っている。挨拶まわりにと前隣の田中邸に伺うとぶあいそうな女がでてきて「こんな付き合いはしてない」と言われ、奥から寝たきりの母親の声がする。次に隣の西野邸(香川照之さん)に伺うが誰も出てこないので取りやめにする。
高倉は大学で犯罪心理学の講義で「連続犯人の類型は3つのタイプ、秩序型、無秩序型、その混合型がある。秩序型と無秩序型は研究が進んで検挙率は上がっているが、混合型はほとんど分析不能で手のうちようがない。俺がこれまで経験したいくつかの連続殺人事件はすべて混合型だ」と語っている。刑事時代、この講義どおりに行動できたのか、首になった理由が分かってない。
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助手の大川がここ10年間の連続殺人事件の分析をしていて、それを見た高倉は6年前の一家3人が亡くなった未解決事件(日野市事件)「証言能力なしとされた当時中学生の女の子がいまどこにいるのか、写真もないというこの事件」に興味を持つ。大川が本物の刑事と現場に行ってみたいと言い、これに乗ることにする。
①ここから高倉が日野市事件にのめり込み、一方妻康子が次第に西野に取り込まれ、日野市事件の犯人が西野に一致していく状況がミステリアスに描かれる。
・妻康子の西野への引っ越し挨拶
康子は一人で西野邸へ挨拶に伺うが誰も出てこないので土産を門に懸けて帰り始めると「なんでしょうか」と声があり「チョコレート」と答えると「一粒で1000円のものがある」という。「おたく犬かっているの、犬は大好きだ。犬の躾するんですか、それでいいですね」と言いそっけなく家の中にはいっていく。康子はこれに腹を立てる。西野の態度はわけわからんと!
・高倉と大川が日野市の現場を視察
ふたりが日野市の現場を訪れると誰も住んでいない。これ以上介入すべきでないと帰る。
高倉は料理を食べながら康子の様子がおかしいので聞くと「西野さんの感じが悪い、ちゃんと答えない。変人でとりつく島もない」と言う。「凶悪犯人は感じがいい人が多いから安心かな」と言う。ここでも高倉はミスを犯している。
・高倉、日野市事件で野上刑事に会う。
大学に野上刑事が訪ねてきて「日野市事件の現場に行ったことを知ってやってきた」という。野上が「犯罪性があるかどうかは分からないが、女の子が残っている。警察はそこを見ないのか」と問うと高倉は「犯罪心理学を知っている人がいたら見るかも、でも俺はそれで失敗しているから」と答えると「彼女に会わないですか、高倉さんなら会ってくれるかもしれない。もう一度現場に行かないですか。特有の匂いがある」と誘う。
・マックス(犬)が西野に噛みつく。
マックスだけが西野の異常性にきづいている。()西野は「奥さんこないだはすいません。感じ悪くって、近所がそうだからつい」と言いマックスを撫でる。「チョコレートすごくおいしかった。これからもよろしく」と挨拶する。そこに、娘の澪(藤野涼子さん)が学校から帰ってきてマックスと遊びはじめる。「娘の澪でイメージ 13
す」と西野が紹介すると「奥さんも是非」と康子が誘う。「それどういう意味」と西野。西野の急変する態度に「別に意味ないです」と康子が凍り付く。澪が「お母さんが待っている」と急かす。
・高倉と野上が日野市の現場で本田早紀に会う
高倉は「何か助けが必要なら支援します」と、現場位置が自分の住んでいる位置関係と似ていることが気になり、支援を最上に申し出る。(ここでは上空からの現場写真が映し出される)
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・帰宅する高倉に西野が追ってきて「奥さんが根ほり葉ほり聞く」と苦情を言い「のんきに暮らしているのがしゃくに障る。あんたは信じられそうだから言っているんだ」と無神経にしゃべる。
高倉は康子に食事をしながら「なにがあった、西野さんはいい加減な人だ。くだらない人。康子、近所付き合いやめとけ」と注意する。
・高倉は早紀のアパートを訪ね日野市事件の状況を聞くと
「正直わからない、みんな居なくなって、最近断片的に蘇るが断片的で真実かどうか分からないの」と話す。「それを探し出すのが面白い」と後日会うことを約束する。
・康子が西野のところにシチューを持って行くと
「妻に会いますか」と言い、「澪、お母さんに会って友達になってくれたら喜ぶだろうだろうな」と言いながら奥に入って行って、結局会うことなく帰っていると跡を付けてきて「今度妻に会ってやってください。うつです。どうしてよいかわからない」と言い、わけがわからない気味の悪い西野です。
・早紀が大学を訪ねてきて、6年前の家族の記憶を話し始める。イメージ 3
「昼間お母さんはだれかと話をしていた。母は怯えていた。母は私が帰ってきたことに気付かず向こうの人に支配されていたのではないでしょうか。別の日にもだれかと話していた。家族には聞かせたくないようだった。同じ人だと思う。父は仕事で遅くて記憶がないが、父の電話は古くからの友人のようで、母の時と同じように思えます。兄は高校生でしたが酒の匂いがしていた。誰かに飲まされていた同じ人にです」。「問題の人は誰ですかね」と尋ねると「思い出せない、高倉さんも同じ人のようね、人の心を実験台にしているみたいですね!」と言う。
・高倉が帰宅すると康子が西野に料理を教えている。イメージ 11
澪も一緒。「帰ってお母さんにも教えてやろう」と西野。高倉が「西野さんの仕事は?」と聞くと「協会の理事をやっています。この仕事、きれいごとではすまない。うちに来てください、いろいろ面白いものがあります」と誘ってくる。食事が終わり二人が帰っていく(高倉が二階から見ている)。「変わった人だ、信用できない、おれの刑事の感だ」と高倉が嘯く。すでに高倉は日野事件にのめり込んでいる。
・大学で高倉と最上は「早紀の続きの話」を聞く、
「兄と父は居間で話し合っていた。私が家を空けるので誰かに会うにはちょうどよかったんです。会ってた誰かは同じ人だと思います。私はその人を見かけたことがあると思う。その人がじっと見ていたような、高いところにいて、二階の窓から見ていて、隣の庭にいたんです。水田さんの家は、今は、空き家です。水田さんとは近所付き合いはなく記憶がありません」と話す。
・高倉、帰りの電車のなかで西野に会う。「たまに電車に乗ると疲れる」と言い、ちょとした世間ばなしをする。
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・野上が水田さん宅を訪問。
すごい異臭、ハエ、腐敗した遺体を発見する。
「遺体は全部で5体、3体は本田家。2体は水田家」と報道ニュースが流れる。
・マックスが居なくなる。
康子が探すと、西野と公園にいて「一人で歩いていたので保護した」と言う。「奥さん、康子さんと呼んでいいですか。康子さんも自由に歩いてみませんか。ご主人とぼくとどちらが魅力的ですか」と聞いてくる。
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・高倉が帰宅すると澪が待っていて「あの人お父さんではない。ぜんぜん知らない人です」と訴える。そこにマックスを連れた妻と西野がやってきて「すっかり仲よくなりました。宿題ちゃんとやれよ」と西野。
高倉は日野事件にかかわりのある人物相関図を作っていて、“似ている”(西野?)と感じる。妻が電話をしていて“誰だ”ということから夫婦の言い合いになり、康子が非常に苛立っている。食事時、妻が「高校時代の友達に電話していて新しい環境に慣れない」と言い。高倉も「事件に係っているが(この仕事には)向いてない」と話す。
・高倉、マックスと散歩がてらに高台から自宅の位置を確認し写真を撮る。野上に電話して西野雅之の調査を依頼する。「うちと西野の位置関係が本田家と水田家の位置関係に同じと気付く。隣の田中さんに西野さんのことを聞くと「だいぶ前から会っていない。あれは鬼だよ、人の心を持っていない」と教えてくれる。
○野上が西野の家を訪ねる。
「警察の者です」「ちょっとお待ちください」。誰も出てこないので室内に入るとそこに廃墟のような部屋になっていて・・。なにが起こったか?イメージ 8
○夕方高倉が帰宅すると「田中さんの家」から出火、火の回りが早く消火しようにも何もできない。隣の西野の家にはTVがついていて、だれも出て来ない。翌日谷本刑事(笹野高史さん)がやってきて「康子には席を外して欲しい」と言い「遺体は3体、2体は田中家、1体は野上」だと喋る。刑事が「野上は何故高倉家を訪ねたのか」と問うので「それは西野だ、昨夜は平然とTVを見ていた」と答えると「西野が“高倉に聞け”と言った」という。
・高倉は早紀を訪ね「この男見覚えはないか、隣の水野さんではないか」と写真(西野)を見せると「水野さんではない。貴方は人間ですか、人の心を持っているんですか!」と不快感を示す。
・このころ康子は西野の家で西野と会っていて、
帰るという康子に「握手していいですか。絶対に私の家に来てください」とイメージ 9
手を離さない。康子は家に帰り気を失う。何があったか?
・高倉は帰宅し衰弱した康子を見る。康子の腕には注射痕があることに気付かず、日野事件と野上のことで頭がいっぱいで、警察に出向く。
②ここからは、西野のサイコパスとしての正体、相互殺害の現場、康子が西野に完全に取り込まれ、高倉も取り込まれていく状況がホラーとして描かれる。何故殺さなければならないのか、だれがどう殺したのか、時間関係は、殺害手段など具体的なことは曖昧に描かれています。それゆえ、笑いもありです。
・西野家の地下室。ここでは、澪の父と真空パック詰めされた兄の遺体と薬で衰弱した母多恵子が生活している。西野は二人の遺体を地下壕に隠し、母親の犯行と見せかけるために、澪にピストルによる母親殺害を命じるが出来ないので自ら手を下し「俺が犯罪者になるではないか。全部お前のせい。あと始末を完全にやれ」と指示する。
・ここにやって来た康子を、西野は地下室に誘い「多恵子の遺体処理をする澪を手伝え、つらいようだったら薬を打ってあげる」と遺体処理を命じる。作業はビニールでラッピングし真空ポンプでエアー抜くもので、澪が大半を行う。遺体が艶めかしい。()
・警察から戻った高倉は妻がいないことに気付く。そこに澪から「西野は父でないから匿って欲しい」という電話がはいり、自宅に駆けこんできた澪を匿うが、これが西野の仕掛けた罠で高倉は誘拐容疑で逮捕される。
・高倉は谷本刑事の取り調べにより釈放となるが、刑事に「日野事件の犯人も野上殺害の犯人も西野だ」と断言する。
・谷本刑事は早速西野を“ひとり”で訪ねると、不意に注射を打たれ地下壕に放り込まれる。なんとのろまなバカ刑事か?()
・高倉が西野の家を訪れると居間に妻が居て「あなたまで来る必要なかった。私はとっくに諦めちゃった、せめて引っ越ししたらいいことあるんじゃないかと思っていた」と今の心境を話す。「理解できていなかった、やり直せる」と高倉が説得する。拳銃を持った西野が「それは違うぞ、これは康子さんの自由意思だ」と銃を康子に渡し撃つよう迫るが撃てない。そこで西野が銃を取り上げ康子を撃とうとするので、高倉は「この男は自分では撃てん、やらせるだけだ。反人格、人間サイコパス、可愛そうに哀れな人間がどうやって手なずけた、料理か、マックスか」と西野を挑発する。これを聞いた妻がいきなり高倉を注射器で刺す。二人は地下室に入れられ、高倉はベットに横たわり康子がそっとビスケットをくわえさせている。
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③ここからのラスト、西野は、4人で車移動する途中、廃屋の屋上から次の隠家を探す。見つけて、移動する前にマックスが不要だと拳銃で殺そうとするが出来ず薬で衰弱している高倉に拳銃を渡し射殺を命じると「これが君の落とし穴」と西野を射殺する。ここで、康子は絶叫する。彼女を抱きしめる高倉、この結末をどう解釈するか、「クリーピー」です。
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