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「偽りのチャンピオン」(2015)

イメージ 1「偽りのチャンピオン」(2015
本作、ツール・ド・フランス前人未到7連覇を達成したランス・アームストロングの栄光と虚偽に満ちた人生、ドーピングの疑惑が暴かれ英雄から一転してペテン師になるさま、ドーピングにはしる動機、実態が生々しく描かれている。
そこには彼の倫理観を度外視した競争心、名誉欲という人間としての弱みとともに、ツール・ド・フランスという世界的な競技が持つ莫大な金銭に絡む闇、ドーピングが当たり前となっていた事情、選手、スポーツ医師、メデイア、協会等の実態も明らかにされている。若くして重度のガンを克服しガン撲滅活動支援という崇高な行為は偽りではなかったと思いたい。
ラスト、「あれは偽りのレースだった」と告白し上り坂でバイクを漕ぐランスの姿に救われる。
ピレネー、アルプスの山岳地帯を快走するシーンは風景とともにレースの醍醐味を味わうことができる。
ランスを演じるベン・フォスターの欲望と虚栄心にまみれた悪い顔とがん患者に見せる優しい顔がすばらしい。そしてもう一人、彼のアシストランナーを務め彼を訴えることになるフロイド・ランデイス役ジェシー・プレモンスのニヒルな演技も見どころ。
まさにオリンピック開催期間中、時宜を得た作品でした!!
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物語イメージ 2
心臓音とともに上りの山岳コースを走るシーン、世界で一番ハードなスポーツに198人が挑むツール・ド・フランス、熱望と情熱のスポースThe Programのタイトルで幕が開く。
「脚でなく肺でもない大事なものは魂と根性だ」で走る自転車列のクラッシュが続くシーン。
1993年、ランスは初めてこのステージに参加、ゲームを楽しみながら、記者たちに勝負どころを聞くと、「お前は1W間レーサーで3W間レーサーではないアメリカ人、ここでは勝てない、赤血球の差だよ」と言われる。泥んこの悪路に苦戦。記者会見での「エポ(エリスロポエチン)(検査)には合格か? スポーツ医科医師?」を思い出し、ミケーレ・フェラーリ医師に貴方の指示通りにすると「プログラム」を求めるが裸になって体型を調べ拒否される。
 
1995スイスで仲間たちがドラグストアでエポを買っているのを知り、これを使うようになる。そして試合に勝てるようになっていったが、あるときシャワー室で大量吐血。
イメージ 3脳にも転移しているステージ3の3という重度の精巣ガンで化学治療を受けることになる。
過酷な治療とリハビリ。担当医から運動能力強化剤を使ったことがあるかと聞かれ「ある」と答える。偶然見舞いに来ていたチームメイトの妻・ベッツイーに聞かれる。自転車に乗り始めるが女の子にも追いつけない。そこでスポーツ医療医師ミケーレ・フェラーリを訪ね、化学治療を行いながら医師のプログラムに沿ってエクササイズを開始する。この薬は学会では使用禁止になっているが医師はこれを使用することで“ミスター薬剤師”と言われている。「かってこのクスリを使って摘発を受けており、大丈夫か」と聞くと「あんなことにはならない、うまくやっている」と医師。イメージ 4
レースに戻るにあたって新しいメンバーでチームを編成。スポンサーもついて「USポスタル」。監督にやり手のヨハン・ブリュイネールを迎える。同時に精巣ガンからの生還体験を生かしガン患者への支援活動を行うことを発表。
 
199986ツール・ド・フランスに参加、驚異的な快走で優勝。「山岳地帯の上りコースでスピードを上げ黄色いシャツの男が颯爽と抜けていく」イメージ 5と注目を浴びる。ガンを克服してトップはおかしいと話題になる。記者会見でスポーツジャーナリスト・デイヴィッド・ウオルシュがこの点を詰問するが選手たちは口を開かない。
次の試合、ピレネーの上りでフランスの選手が注射をしながら走っていると血液検査が始まるチームとして、水を飲み、剤を注射し血液を薄めることでごまかす。このような競技を続けながら、ランスはガン患者講演会で私はガン患者と言い自分の闘病生活を語り新しい薬を紹介するというガン患者支援活動を行う。
イメージ 10瞬く間に大スターとなり3連覇を達成。熱心にガン患者を励ます活動を続け、病院を訪ねれば「諦めていたが貴方に人生を貰った」と感謝され満面の笑顔を見せる。
 
2000オリンピックに参加、銅メダルを獲得。ウオルシュはランスにドーピングのことを問うが証拠がないと逃げる。イメージ 7
ランスはチームの改編を行う。新しくし加わったフロイド・ランデイスにエポを渡し、元の体に戻す方法も指南する。彼は最高のアシスト走者になる。彼がドーピング検査で陽性反応が出るが、これを公表したらフランスは負けると隠す。
 
2003年、5連勝を達成。この成果に疑義が出て、ミケーレを告発しようとするが証言者が出て来ない。選手には「証人となった場合、選手資格を抹消する」と脅している。ランスは鏡の自分に「陽性が出ることはない、今まで出たことはない」と暗示を掛けている。記者会見でミケーレとの関係を聞かれイメージ 6るが選手と医者の関係で一度も陽性がでたことはないと話す。が、アルプス山岳レースでは開始前メンバーに輸血が始まる。これを拒否したメンバーは、即、退場。退場になったメンバーの妻・ベッツイーウオルシュに「1996年、ランスは病院にいて、過去に薬を使っていたと医者に話していた」と証言する。ウオルシュは編集長に記事にすることを伝え、USポスタルと契約を結んでいる保険会社代表に接触し意見を聞くと「ランスは金を使っているし高性能な検査器を持っている、有名人にも信頼されているから告発は難しい」と言う。ランスは記者会見で「練習ペースが乱されて困っている。記事は読んだがおかしい、証拠がない。患者を救うために走らせてほしい」と訴える。しかし、記者たちは彼を付け狙うことになる。
ウオルシュはサンデー・タイムズ紙上ランスを告発。ランスは全く証拠がないとして名誉棄損で告訴する。
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2005年、TVでは「ランス7連覇なるか? 最後のツールです。ツールに不正などない」と宣言している。ランスは7連覇を達成し、サイクルは辞めるがガン撲滅運動は続けると宣言しCMにも出演。
しかし、レースが始まるとかっての華やかな思い出が蘇り復帰すると言い出す。これには「バカげている。薬は出さない、7連覇男の言い出すことか」とチーム代理人が反対。ランスは報酬をガン撲滅に使うと復帰を決意、チームが練習を開始する。これを聞きつけたかってのチームメイト・フロイトからチームに入れて欲しいという申し出があるが、「君は2度陽性がでた」と申し出を断る。
4年ぶりとは言えないいい走りであったが、結果は3位。しかし、フロイトがこれまでの証言を変え真実を洗いざらい公表「スポーツ史上最悪のドーピング事件。永久追放」とニュースが流れる。ランスは検察から事情を聴かれ「罪があるかどうかは自分で決める」と返事するがこれからもレースをしたいという欲望に駆られる。チーム代理人から契約打ち切りを通告され、検察のどの質問にも“イエス”と答え「あれは偽りのレースだった」と告白。ラストは上り坂で自転車を漕ぐランスの姿・・・・。
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