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「種をまく旅人~夢のつぎ木~」(2016)

イメージ 1「種をまく旅人~夢のつぎ木~」(2016
私のふるさとの物語、宮崎あおいさん主演作「ツレがうつになりまして」(11)の佐々部潔監督作品であり、岡山県先行上映で観て参りました。
本作は、日本の地方で第一次産業に携わる人々の暮らしをその土地の風土とともに描く「種まく旅人」シリーズの第3段(1、2作は見ておりません)。
全国屈指の桃の名産地岡山県赤磐市を舞台に、女優になる夢を断念し亡き兄の遺志を継いで桃の栽培を行なうヒロインが、農林水産省から派遣されたエリート官僚との出会いなどを通じて自分の進む道を模索していくさまが描かれています。
佐々部監督作品ということで社会派ドラマかなと思っていましたが、ヒロインが兄の残した“つぎ木で作った新種の桃”を育てるという夢。夢が世代とともに引き継がれること、夢は一人では達成できない、多くの人の助けのもとで出来上がっていくという物語です。夢に向かっていく姿が、現地の空気のなかで現地の人に励まされユーモラスで時に涙し、そして果実農業の問題点もしんみりと伝わってきます。
 
なにか特別なことが起きるわけでもない農家の日常が淡々とオールロケで描かれ、全編にわたって現地の空気がにじみ出ていて、主役は赤磐市のもつ温かい人情と桃です。監督以下スタッフの方々が現地の人々とのしっかり交流を深めて作った作品で桃を食べたくなる映画です。(#^.^#)
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物語は冒頭“夢オチ”から始まり、ここに作品のすべてが結集されています。備中神楽に模して天の岩戸からアイドルの高梨臨さんが山口百恵さんの「スター誕生 again」の曲とともに登場、そこに桃が流れてきて「帰って来いよ」を唄いながら桃太郎の津田寛治さんが登場し「桃って、赤磐の桃なんだよ、ただの桃ではない」と言い、曲に合わせて高梨さんの「私の夢はお芝居」「赤磐の夢は兄」の歌に、「“かてえ”こと抜き」と津田さん。“かてえ”は岡山弁で固いの意です。万事、晴れの国岡山ではこんな調子で物事が進みます。()
この夢オチ、片岡彩音高梨臨さん)が一度は女優を追いかけて東京に出かけたが兄悠斗(池内博之さん)が病に倒れたことをきっかけに故郷に帰ってきて、市役所の生活あんぜん課(課長岩淵・津田寛治さん)に勤務しながら兄の残した桃園を守っていますがともすれば女優の夢が諦められない彩音を課長が揶揄したものです。これで物語の1/2を終えた感じです。()
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夢から醒めた彩音27)は早朝に桃の収穫、そして神社に詣で桃の品種登録願いが通ること祈りその後市役所の生活安全課に勤務するという忙しい毎日です。
3年前に亡くなった兄が残した接ぎ木で作り出した新種の桃「赤磐の夢」を品種登録する夢を引き継ぎ毎日神社にお参りして祈っています。
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ここに農林水産省の職員・木村治(斉藤工さん)(28が桃のレポートを書くためにやってきて彩音と出会うことになります。
彼は大分臼杵市でお茶農業を営む兄夫婦(吉沢悠さん、田中麗奈さん)の影響で、日本の農業を農家が流す汗に見合うものに変えたい農林水産省に就職。だが忙しい毎日の中で理想を見失いかけていた折に、次官(長島敏行さん)から「桃の栽培に熱心な赤磐を見てこい、テーマは自分で探せ」という命を受けてやってきます。
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赤磐に着いた村木は、岩淵課長の出迎え受け、ひょんなことから彩音の兄悠斗の3回忌の席で出会います。当初課長が村木を桃の生産関連施設を案内しますが、2日目からの案内は彩音が任されることになります。農水産省職員に対する岩淵課長の目線などおもしろく描かれています。
村木は、桃の選果場や果物市場などお決まりコースを回っているときにはお気軽気分で口説き文句を連発し桃のことなど考えていないように見え、彼自身「俺はあんな(中央官庁職員)タイプではないから」と言う。ここでは、斉藤さんのコミカルな演技に笑えます。
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しかし、彩音に案内され畑で見た接ぎ木による桃の栽培方法やここで生まれるうまいトマトに触れたことそして彩音の仕事ぶり、防犯ビラを作成、お年寄のおれおれ詐欺対策からゆるキャラあかいわモモちゃんを被っての広報活動などをこなす市職員としての仕事と桃の栽培という二足の草鞋をはく彩音の姿を見ることで、兄たちの苦労を思い出し、研修姿勢に変化が出てきます。赤岩の夢の話に熱中し彩音の家に泊まることになり、悶々と過ごすふたり。(#^.^#) ここでの木村が田舎の風呂に入るシーンなど地域の温かさが伝わります。
 
彩音は、木村に出会ったことが新種の桃「赤磐の夢」の品種登録に「吉」だと大喜びで、彼にしだいに惹かれていきます。
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ふたりで品種登録合格のお願いに神社にゆくと、これに反抗的な男の子(リョウ)に出会い、問い質すと「両親は離婚し、母ひとりでは桃の畑を守るのが大変でもう桃の木はいやだ」と言う。畑を見ると草だらけ。彩音はこの子を抱き「ひとりではないよ。困ったら誰かが助けてくれる。ここは赤磐なんです」と励ます。そしてふたりはリョウのために一計を企てます。
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防犯イベントで彩音があかいわのモモちゃんを被って盛り上げているところに農水産省からの通知「拒絶」がもたらされる。彩音は落ち込む。彩音の農園の桃でお酒をつくっている酒屋さん(井上順さん)や亡くなった兄のお嫁さん(海老瀬はなさん)、妹(安部萌生さん)からの慰めを受けながら兄の残した手紙「俺の夢はふたりを幸せにすること。つろうて! あきらめたらあかん」を読みこれからどうするかと悩む。イメージ 7
木村に会って「市役所と桃はきつい、(あなたは)あきらめろと言ったでしょう。赤磐の夢もお兄ちゃんの夢も終わり。ここはどこですか。私はひとりになっちゃった」と泣きつく。
 
彩音がモモちゃんを被って消防隊員の展示訓練を盛り上げていると、小型トラックの荷台に木村が乗っていて、追っかけるとリョウの農園に。沢山の人が駆けつけお手伝い。家では義姉と妹が沢山の“祭り寿司”(岡山名物)を準備中。すべてが木村からの彩音への贈りものです。
木村は農林水産省に戻りレポート「桃農家の所得確保施策」を提出。「道は遠い。それを捨てたら終わりだ。お前の目指す農業の夢か」と次官。
イメージ 8春、桃の花が満開の中で市政10周年記念行事、「今年の花のつきはどう、みんな助けてくれるの」と木村、「あかいわモモちゃんで踊っている」。「汗かいた人が恵まれるようお互いに頑張らなければ」「木村さん、手が土で濡れていますね」。
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