映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「オーバー・フェンス」(2016)

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山下敦弘監督作品、オダギリジョーさん、蒼井優さん出演ということで楽しみにしていましたが当地ではやっと公開され、後続の「ぼくのおじさん」を先に観てしまうという、ずいぶんと遅れてしまいました。

本作は函館を舞台にした「海炭市叙景」「そこのみにて光輝く」に続く佐藤泰志さん原作の映画化で、結婚生活が破たんし妻子と別れ職業訓練校に通う孤独な男がここでの生活と一人の独特の感性を持ち女性と出会うことで再生されていく愛の物語、人生を取り戻す映画です。男としてのエゴにどう気付き癒されていくかがテーマです。

主人公やヒロインの悩みや苦しみの背景が明確には語られることなく描かれ、観る人が自分の経験や環境に重ねて観ることになりますが、多くの共通点があり共感できると思います。
暗い重い作品のようで、駄目男たちへの目線がやさしくユーモアがあり、ラストでは明るいさが見えてくる救いのある結末になっています。

特筆すべきは職業訓練校の生活、実習、喫煙室ソフトボールの練習で交わされる会話やちょっとした出来事で主人公の閉ざされた心が少しずつ癒していく演出がすばらしく、作品のよさがここにあると言っても過言ではない気がします。また、繊細な心象表現に鳥の求愛ダンス、身体を洗う、動物を檻から放つなど独特の表現法を用いていて観る側の感情を揺さぶってくれます。
 
オダギリジョーさんのヘラヘラ笑うだけで深くは付き合おうとしない主人公が、まわりの人たちに癒され自分の作ったフェンスを超えようと変化していく演技。
蒼井優さんの鳥の求愛ダンスで見せる独特の感性を持つ女性の演技は、繊細で踊る指先の動きにも感情が込められ、彼女の想いが伝わってくるすばらしいものです。また職業訓練校のみなさんの演技が出番がわずかでもしっかり雰囲気を作っていてすばらしい。
あらすじ(感想):
・最初のシーン、職業訓練喫煙室で煙草を吸っている五人の作業服の男たちの会話。
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はっきり聞こえませんが、「もともとなにやってたの」「居酒屋かな」「白岩さん女いるんですか」「いないかな」という会話、白岩の「いない、いない」というのがはっきり聞こえます。
この白岩義男(オダギリジョーが物語の主人公で、結婚生活が破たんし妻子と別れ当座失業保険で生活するためにここに入所し、他の男たちもいろいろな事情を抱え必ずしも気乗りしないまま大工の技術を習得するために訓練を受けています。物語が進むにともない、白岩とのからみで、それぞれのキャラクターが見えてきます。

・白石は訓練所で真面目に訓練を受け、自転車で帰りにコンビニでから揚げ弁当と缶ビール2本を買ってでてきたところで、車から降り「ダチョウだって愛情表現する」と男と言い合いながら鳥の求愛ダンスをしてる女性田村聡(蒼井優に出会い目が合い気が引かれます。

・白岩は飲みに誘われても断りアパートに帰りカンナを研ぐという孤独な男ですが、代島和之(松田翔太に誘われキャバクラに行く。代島はいい人なのか悪い人なのかよくわからない、自分を他人に見せない人。代島は「一緒にこういう店をやらないか」と誘います。代島の白岩の見立ては穏やかな大人に見え商売に向いているというもの。映像で見る限りこのように見えます。()

フロアーで聡が赤い衣装で鳥の求愛ダンスをしていて、こちらの席に顔をだし「あんたたち知り合い。名前で苦労しているけど親のことは悪くいわないで。私はバカ」と言い席につく。
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代島は聡に「これから一緒に仕事をする人でバツイチの人」と白岩を紹介する。彼女が鳥の口物まねで客と戯れ「みんな私を見下してバカにしてる、あんたは」と問うが、白岩は「いや俺はない」と言う。
このような会話のなかで聡が白岩にボデイータッチするなど彼を気に入ってることがわかります。ここでの蒼井さんは本当に魅力的です。

白岩は店を出て代島には「俺は最低の男だから」と一緒に仕事をすることを断り、聡に車で送られアパートに帰る。この際聡は「子供はいるの?」と問い「いる」と答えると「嘘ついているように思える」と言う。白岩が代島との関係を聞くと「友達の友達。客はやれると思ってるからしつこい」と言う。踊る聡と違って、実生活はしっかりしている感じ。

白岩はアパートに帰り引っ越し荷物の中から義父からの手紙「妻との離婚を促し、子供の親権を妻にするというもの」を読み焼き捨てる。

・訓練所の昼休み。代島は昨夜の聡との関係を聞いてくる。「何もない」と答えると「すぐやれるのに」と言う。白岩はその夜自転車で聡の勤め先に行くが看板をみて帰る。

・訓練所で代島が「聡が会いたがっている。飲みに行こう」と誘うので「君の元カノ?」と聞くと「違う」という。帰りに、「彼女が公園にいるから会ったら」というので公園に行くと小さな遊園地で回転木馬や観覧車に乗せる仕事をやっている彼女を見る。
「代ちゃんから言われて来たの」と言うので「自分が会いたいから来た」というと彼女は喜んで、小さな動物園に連れて行き白頭鷲をみて「オスとメスは足を結んで空中をまわりながら落下する」と真似て踊る。
すると白い羽が落ちてきてあっという間に一面白い羽で真っ白になる。彼女の心象がこのような映像で映し出されます。彼女は有頂天という感じです。彼の自転車の後ろに乗って白い羽を撒きながら彼女の家に帰る。
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・彼にビールを出して、薬(ピル)を飲み「これをやらないと体が腐る」と全裸になって台所で身体を拭く。これを見た白岩は抑えがたくなりふたりは結ばれます。彼女は覚悟をもって彼に挑んだ。

目が覚め、聡は白岩の指輪を気にして本当のことを教えてほしいと言うが、彼から自分のことを言えと言われ「代島とは一度寝た」と答える。彼が言い渋るので「明日になったら私を無視するんでしょう」と感情を高ぶらせる。彼は「子供が生まれ、仕事で遅くなり、帰ってきたら妻が子供の顔に枕で抑えていた」と話すと彼女は「ひどいね」と言い「お前になにが分かる」と切れる。
彼女は彼の顔を見て「そんな目で人を見ないで、人のことを見下さないで」と叫ぶ。遂に彼は「俺は普通に生きてきた。お前が勝手におかしくなった」と言うと彼女は「もうあんたと会わなければよかった」とコップを投げガラス片が飛び散るなど激しい感情を見せ、彼を部屋から追い出す。
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彼は、自覚のないエゴが残っておりそれを見透かされたことで、激しく自己嫌悪感を覚える。このシーンはふたりの感情が激しくぶつかり、彼女の純粋さに触れ、彼の鬱設した精神状態が解きほぐされていく糸口になります。
 
・訓練生で覚えが悪く陰気な性格で仲間から疎外されている森由人(満嶋真之介)から「白岩さんはまともだ」と言われる。若い人から慕われるようになっている。
焼肉屋で飲んでいると、世間慣れした人あたりのいい、原浩一郎(北村有起哉から飲みに来ないかと誘いを受ける。出かけると原は若い女の子と一緒に呑んでいて彼女たちが「おっさんでもかまわない」というので呼んだという。
「そんなことはどうでもいい」と飲んでいると女の子が「やはりいやだ」と言い出す。白岩は「お前らももうすぐ楽しいことはなくなり、ただ働いて死ぬだけだよ。お前らの人生」と押さえていた気持ちを吐きだす。

白岩と原は飲み直して朝起きると、なんとそこは原のアパート。おくさんと子供がいて、気のいいおくさんが朝飯を作ってくれる。ちょっとしたことで原の背中に大きな入れ墨があることに気付くが、家族が言いたいことをいいながら楽しげに過ごしている風景をみる。彼の心に家庭の温かさが入ってくる。

・訓練教官の青山は、ここの訓練校上がりで就職経験はないにもかかわらず世間を知ったらしく訓練生に大口をたたき若いものを見下すところがあり、ときに訓練生との間に緊張が走ることがある。

機械科とのソフトボール試合のメンバー発表に、メンバーから外された森が刃物を持って青山に食って掛かり、白岩がこれを止めにはいる。この事件から仲間の関心が白岩に集まり心が通うようになる。
白岩が聡を自転車に乗せて走っていたことが話題になりソフトボール大会に呼んだらと仲間が言い出す。
皆でラーメンを食べて帰るとアパート前に聡が待っている。聡は「ごめんなさい」と謝り「今日遊びに来てほしい」と言う。「俺は前の奥さんに会うことにした」と伝える。
 
・キャバクラで飲んでいると代島がやってきて「あの女と本気で付き合っているんですか。あの女ヤリマンですよ。こんな女に惚れるようならこの商売には向いてない」と言う。
「俺にはもう失う物がない」と言って赤い衣装で鳥の求愛ダンスをしてる聡と一緒に踊り出し「ソフトボール大会に来ないか」と誘うと「行く」と。
 
・喫茶店元妻洋子(優香)に会う。妻は笑みを絶やさず子供のことなど話して遊覧船に乗る。「前と変わったね。前はいつも私はいらないと思ったでしょう。普通になったみたい。私にはそうでなかった」と話す。

船を下りて「捨てられないから」と指輪を返される。「写真送るね。小春のことを忘れないように」。白岩はここで嗚咽する。
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この姿を対岸で聡が見ている。聡は帰って身体を洗う「私は家族ではない、別れる」。

・白岩は坂を登り遊園地にやってきて聡に会う。聡に妻と別れたことを告げるが「私はずれているから」と受け入れない。「お前をみんなに見せたい。ホームラン打つからソフトボール大会に来て欲しい」と話すと頑な彼女の心を捉えたようで「奥さんに謝れ」と遊覧車に乗ってる子供をそのままにして動物園に走って行く。
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頑な自分を解き放つようにヤギや仔馬を柵から放ち、白頭鷲を檻から逃がそうとするが逃げない。これを見て彼女は泣きだす。白岩はそっと彼女を抱きしめるが振りほどき去っていく。

・白岩が部屋でカンナを研いでいると窓に白頭鷲がとまっている。見つめると不意に夜空に飛びだって行く。彼女の心が開かれた一瞬でした。
 
・訓練校では実習課題の木造家屋の骨組がほぼ出来上がっている。教官の青山が例の事件で森が退学することになったと言い「人生いいことばかりではない、これを乗り越えなければやっていけない」と話すと、年金生活に入っているのに趣味で訓練所に通っている勝間田(鈴木常吉が「学校の外には乗り越えられないことが一杯ある」と当てこする。
白岩はこんな話を聞きながら自分が小さな拘りに閉じこもっていたことを知らされる。

・白岩は自転車で走りながら、
「俺は普通に働いて、結婚して、子供を作って、そういう人間だと思っていたがぜんぜん違っていた。前の奥さんに会って、俺があいつをおかしくしたと思った俺がいなくなって元気になっていたから。ぜんぜんわかってなかった」と呟く。
 
・ソツトボール大会に、勝間田は孫を、原は家族全員を連れてくる。聡がまだ来ないなかで試合が始まる。白岩は聡のことが気になり試合に集中できない。バッターボックスで聡がやってきたことを認めた白岩がフルスイング、ボールは高く舞う。ヘンスを超えたか・・・ 

 

                                 

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 記事1 20161120
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