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「LION/ライオン~25年目のただいま~」(2016)

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本年度アカデミー賞で、作品賞など6部門にノミネートされたとても評判がいい作品、原題「LION」。さらにデヴ・パテル(スラムドッグ$ミリオネア)、ルーニー・マーラ(キャロル)、ニコール・キッドマンムーランルージュ)出演作ということで、楽しみにしていました。監督はガース・デイビス、本作が長編初監督とのこと。結果は、わかり易くとても感動的な物語でした。
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物語は冒頭、空撮によりインドの広大な大地・森林を捉え、海岸を舐めるように移動して、荒地に立つ主人公:サルーを捉えるシーン、Google Earthでなどる地形がサルーの記憶に一致してしたことを示すシーンで、物語はここから始まります。
サルーが辿る数奇な人生を、インドで生まれ、迷子になり、家族と生き別れたままオーストラリアに養子にだされるまでの前段(少年期)と、あることをきっかけに、Google Earthでインドの自分の家を探し始める後段(青年期)に分けて描き、エンドロールで実際に起きた奇跡を証明してくれます。

前段では、サルーがGoogle Earthで家族を探し求める背景が、貧しさのなかで愛情に結ばれ強く生きる家族の記憶とサルーが迷子になって経験する厳しい体験が描かれます。インドの話とはいえ、先の戦争体験を知る者には身に詰まされるはなしで、涙が溢れます。この戦争で孤児となった子供たちがたくさん米国に渡り、また中国に残った記憶が蘇ります。
前段が結構ながい、しかし後段につなげるために必要なこと。インド固有の風土に触れることができ飽きることはありません。

後段では、一気に20年の時を経たサルーの姿から始まります。絶望のなかで、スー&ジョン夫妻に養子として迎え入れられサリーは、しっかり教育を受け恋人にも出会いなに不自由ない生活。しかし、大学でインド人留学生に出会うことで幼い頃の記憶が蘇り望郷の念に駆らGoogle Earthで故郷を探しを始めます。しかし、ここまで育て上げてくれた義理の父母とのことを想い苦しみます。この葛藤が描くことで、血の繋がらない家族の物語になっています。
サルーは、悩みながら、遂に故郷を探し当てます。賢明な母スーの言葉で、すばらしい出会いが訪れ、その結末を実際のフィルムで見せると言うエンドロール、感動の物語です。しかし、サルーと母スーや恋人ルーシー・義兄の関係がかなり端折られていて感情移入しにくいと思われます。
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雄大なインドの風景や市場や水浴などの生活・風俗、そしてホームレスや孤児の厳しい生活が垣間見られ、今日でも年間8万人の孤児が生まれているという事実を知ることになります。また、オーストラリア・タスマニア島のとてもピュアで美しい風景やビーチの映像を楽しむことが出来ます。
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主人公役のデヴ・パテルが「スラムドッグ$ミリオネア」のとは全く異なって逞しく繊細に成長した姿を、ニコール・キッドマンが崇高な考えを持つ母親役を圧倒的な演技で魅せてくれます。幼少期のサルーを演じるサニーパワールの演技に泣かされます。この子凄すぎる。
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物語、
1986年、インドのカンドウ
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兄グドウ(アビシェーク・バラト)と5才のサルー(サニーパワール)は石炭を運ぶ貨物列車に乗り石炭を盗んで、トンネルを抜けたところで飛び降りる。市場で牛乳と交換。サルーが“赤い揚げ菓子”(シャレビ)を欲しがるが「また今度」と、貧しい小屋に戻って牛乳をシングルマザーのカムラ(プリヤンカ・ボセ)に差し出すが、母は「あなたたちで」と自分では口にしない。この赤い揚げ菓子が幼いサルーの記憶に残り、のちに家族を探す大きな動機に繋がります。
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家族は母親と子供4人家族。母は“荒れた赤い岩山”にある採石場で石を集めて生計を立てている。サルーはこの母親を手伝い、仕事の合間に母の笑顔に触れるのが大好きな子。母の思いやり、苦しい中での家族の愛情がよく伝わります。
貧しい生活のなかで、兄グドウが稼ぐために、いつも一緒のサルーを残して、1週間ほど出稼ぎに出るという。サルーは連れていって欲しいとねだりますが、力がないから駄目だと断る。しかし、サルーは兄から離れようとしない。
ふたりは列車に乗ってある駅で下車。ここでグドウは「仕事を見つけてくる。ここで待っていろ、赤い揚げ菓子を買ってきてやる」と出かける。サルーは眠くて停車中の列車のなかで寝込んでしまう。サルーが目覚めて兄を探すが見つからない。“円形の給水塔”が見える大きな駅のホーム。これがのちに家族をGoogle Earthで探す目安になります。
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停車中の列車の中を懸命に兄の名を叫びながら探していると、突然列車が動き出しす。乗客はだれも居ない、回送車だったのです。列車は原野を走り続けます。たった一人での旅、母や兄のことを何度も想い出します。
ある駅で停車、大声を上げて助けを求めるが誰も気づいてくれない。大きな河を渡り、2~3夜を経過して、カンドウから1600Km西に位置するコルカタ市ハウラー駅に着く(サルーには駅名は読めない)。大勢の人でプラットホームはごった返している。「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と叫びながら“ガネストレイ”(サルーの住んでいた場所)と叫んでキップを買おうとするが・・買えるわけがない。

サルーは一人の少女を追って地下道に。ここでホームレスの人たちのなかで一夜を過ごす。以後、人攫いに狙われたり、親切な女性に誘われ安心していると男がやってきて売り飛ばされそうになる。大きな河での水浴、ヒンズーの礼拝に出くわして供え物を盗み、ごみをあさって食つなぐ、とても機転のきく勇気のある少年です。

雨の日、橋のたもとのゴミ捨て場で拾ったスプーンを、レストランで食べている男の動作に合わせ、口に運んでいると、このシーンは涙がでます、この男がやってきて警察に連れていってくれます。言葉が通じないし住んでいたところや母・兄の名前がわからないため、孤児収容所に送られます。そこには、驚くほどの孤児がいるのでした。風呂に入り、食事が与えられ、言葉を教わる。女の子から「ここはひどいところ」だと教えられる。サルーは外国人の養子縁組要員に選ばれ、同じ運命の子らと祈ります。
「空一杯のお星さま、お月さまを探している。空一杯のお星さま、お月さまを探している。悲しい子供が街に一杯、お月さまを探しています。盗人がいないか探している」と祈ります。
サルーはオーストラリアのタスマニアに住むスー&ジョン夫妻の養子に選ばれます。サルーは「本当におかあさんを探してくれたの」と寂しげに職員に尋ねます。
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1987年、サルーは母となるスー(ニコール・キッドマン)に連れられて海の見えるタスマニアの家にやってくる。TV、冷蔵庫を見て驚く。風呂に入れ「何があったか聞かせて」と優しく聞くスー。
浜辺でスーと父のジョン(デヴィット・ウエンハム)と野球を楽しむ。絵で文字を学んでいると「あなたの兄よ」とマントッシュが連れて来られる。マントッシュは大声を出して騒ぎ、頭を壁にたたきつけ自傷行為を繰り返す。スーが抱きかかえて慰めるがなかなか収まらない。サルーはそっと傷ついているスーに近づき慰めます。

2008年、たくましく育ったサルー(デヴ・パテル)、レストランで食事。スーから「幸せな人生をお祝いよ、あなたは大きな幸せと期待に応えてくれたわ」と言葉を贈られメルボルンの大学に進学します。この席にマントッシュは顔を見せないので彼を訪ねると「家を出た、ママには言うな!」と言う。
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大学での自己紹介で、サルーは「しっかり儲けてカルカッタに行く。僕は養子でインド人だからインドを応援したい」と語る。そこには恋人のルーシー(ルーニー・マーラ)がやさしく寄り添っています。
インド人学生の部屋でのパーテイーに招かれたサリーはそこで赤い揚げもの(シャレビ)を見て故郷を思い出す。「カルカッタではなくて、俺、迷子だったんだ。うろ覚えだが2~3日列車に乗った。乗った駅には大きな給水塔があった」と話すと、ある学友が「Google Earthなら探せる。当時の列車の速度を調べて、日数を掛けて、その範囲で探せばいい」と言い出す。「張り紙だしたら」という学友もいたが「母は文盲」と説明。ルーシーは「私の母は4年前に亡くなった。母が恋しいよ、Google Earthで探したら」と勧めます。
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夜をルーシーと過ごすが、採石場で石を集めている母と一緒にパンを食べたことを思い出す。眠れない、PCで列車速度を検索、時速22Kmが見つかる。計算すると1000Km1500Kmの円内を調べればいいことになる。この日からサルーはGoogle Earth検索にのめり込んで行く。

ルーシーを母スーに紹介する。そこには兄マントッシュも来ることになっていたが、遅れてやってきたマントッシュは「おまえ偉いのか、支配人だな」といきなりサルーに絡んでくる。彼が発作を起こし、父が外に連れ出す。寂びそうな母の姿を目にします。

ルーシーとベッドを共にしても、「サルー、サルー」と探す兄グドウのことを思い出す。起きだしてGoogle Earth検索を始める。このことで、ルーシーとの関係が悪くなっていく。サルーはインドの母を探していることをスーに話すべきかどうかで悩む。大変な恩義のある母スーには話せない。
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部屋の壁にインドの大地図を張り、そこにGoogle Earth検索で調べた地点をマークして、Google Earth検索地図を作製している。列車で見た光景を思い出しながら検索を続ける。髭は伸び放題、目は落ち込む、すざましい形相になっていくサルー。

久しぶりに出会ったルーシーに「君が恋しい」と気持ちを伝えます。「スーはどうしている」と尋ねると「あなたが母を探しても大丈夫よ」と言う。サルーがスーを訪ねると、「マントッシュが海老漁船で働いている。稼ぎはリスク代よ」と言う。「ママは本当の子どもがいればよかった。僕らを白紙にしたら」と話し掛けると「子供は持てたのよ。でも産まなかった、ふたりの養子を貰うと決めていたから。ジョンと結婚したのもそれ。世界は子供で溢れている、不幸な子が一杯よ。助けることが大切。私の苦しみなどどうでもいいの、私の生きる道はこれしかない。12才のとき幻覚を見たの。精神を病んでいて強い電気ショックが身を通りその向こうに子どもが見えた。その時、初めて喜びを感じ、それに導かれ、その瞬間に将来に自信が持てた。あなたは口を利こうとしない、力になってサルー」と語るのでした。
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スーという人は、信じられないほどに覚悟を持った母親です。サルーとマントッシュを見て、スーが子供を選んだのではないことがわかります。彼女は神から授かった子として育てています。

これを聞いたサルーはマントッシュを訪ねると彼は「あの時は悪かった」と謝り、寝たままで起きようとしない。
スーのことを考え、部屋に帰ったサルーはGoogle Earth検索地図を破いてしまう。でも、インドの母のことが忘れられずGoogle Earth検索が止められない。いつも調べている検索範囲外(半円外)に目が行き、そこは映画の冒頭のシーン、自分がいた記憶のある高地を見つける。道路を辿ると鉄道に出会い遂に給水塔にたどり着き、その先に“ガネストレイ”を見つける。
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Google Earthと記憶が一致した瞬間、1万距離離れたオーストラリアからインドの小さな記憶の村を見つけた瞬間、まさに奇蹟であったのです。スーに伝えると「サルーをお母さまに見せたいわ。立派な息子になった!」と父ジョンも加わり、三人で抱き合って喜びます。そしてサルーはインドに発ちます。
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2012年、インドのカンドウ
サルーは森林の丘に上がって村を見下ろし、自分の生まれた家にやってくる。羊がいる家に、ひとりの女性がいる。幼いころの自分の写真を見せるが分からないという、それを見ていた男が出て行く。村を歩くと皆がめずらしい人と見ている。そこに先ほど出て行った男が二人の女性を連れてやってくる。よく見ると、お母さんだ!!そして、妹シエキラ。兄クドウは亡くなっていた。村人と一緒に再会を喜ぶシーンには感動です。
サルーはスー&ジョンに「答えは全部解決した!!母は僕を助け育ててくれた。家族はママたちだ」と電話する。これを聞くスー&ジョンは喜びに溢れるのでした。
サルーは思い出の鉄道を歩き亡き兄クドウを偲びます。

エンドロール、インドの母カムラとオーストラリアの母スーが出会うシーンが実録フィルムで紹介されます。これには感動します。そしてライオンの意味が明らかにされます。サルーの本当の名はシェル、ヒンディー語で「lion」。

インドでは今日でも、年間8万人の孤児が生まれていると言われ、彼らの幸せを祈らずにはいられません。
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インドでは今日でも年間8万人の孤児が出ているいう、幸せを願わずには
 
インドでは今日でも年間8万人の孤児が出ているいう、幸せを願わずにはいられません。
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