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宮﨑あおいさんを応援します

「カフェ・ソサエテイ」(2016)

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本作、ウディ・アレン監督作品ということで、即観ると決めました。主演はジェシー・アイゼンバーグ、ヒロインにクリステン・スチュワートブレイク・ライヴリーのダブル出演です。テーマは「もしかしたら、もうひとつの人生があったかも」と人生を振り返る人生のほろ苦さを描いたものです。この結末に、同窓会を思い出させてくれます。() アレンの前作ブルージャスミン」(2013)より味わい深く満足のいく作品でした。

物語は、1930年代を背景に、夢を求めてハリウッドの映画業界で働くことになった青年がここで失恋し、生まれ故郷のNYに戻り成功して結婚し順風満帆の生活のなかで元カノに出会い、もし結婚していたらもっと幸せにと悶々とするロマンテイックコメデイーです。

作品のよさは、夢の世界ということで1930年代のハリウッド、現実世界としてのNYの「カフェ・ソサエテイ」という物語の背景設定の良さに尽きます。当時のふたつの街の差異がわかり易く描かれ、そこで出会う女性が街の印象にぴったりでうつくしくて魅入ります。ハリウッドの華やかさや「カフェ・ソサエテイ」という社交世界など全く知りませんが、青年の叔父と兄が生活する場としてコント風に描かれ、おもしろくて分かりやすい。

物語は、ハラハラドキドキの恋の駆け引き、ウイットに富んだ会話、監督固有のユダヤ人ギャグ・ぼやきが入って飽きさせません。そして必要なことしか描かない、余計なものはナレーションでそぎ落とし96分にまとめあげ、ラストの「なしえなかった夢を想うふたり」という終わり方がまた良かった。満足すべき作品でした。

監督は1935ニューヨーク州ニューヨークブロンクス区生まれ、現在81才。この経歴からして作品の主人公にダブります。
まだまだ夢を見て、作品を作ってくれるものと楽しみです。(#^.^#)
****(ねたばれ)
物語、イメージ 2
物語は、スターのプール付き豪邸にドレスアップした業界のセレブが集い、映画の話題・スターのゴシップが囁かれる魅惑的なパーテイーの映像から始まります。
「ハリウッド」
1930年代ニューヨークブロンクス区で生れたユダヤ青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)が華やかなハリウッドに憧れ、叔父フィル(スティーブ・カレル)をたよってやってきます。映画界のエージェントとして大成功している叔父フィルは”忙しい””とすぐには会えない。その忙しさがオフィスやパーテイーで繰り出される会話、フレッド・アステアゲイリー・クーパーイメージ 3ジョーン・クロフォードジンジャー・ロジャースなどの当時のスターの名が飛び交う噂話や業界のはなしで表現されていて、その華やかさとともに虚ろな夢の社会を彷彿とさせてくれます。

ボビーが暇を持て余し娼婦をホテルに呼ぶシーン。彼女は女優の卵で、こんなこともしないと生活できないということを知り、やる気が失せ、「出て行ってくれ」と金を渡しますが、この金20ドルを見て「あなたユダヤ人?」ときたもんだから「軽蔑するな」と激怒するシーン、どうやら監督の拘りのようです。()
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やっと叔父フイルに会えるが仕事がない、そこで雑用を任せると言われこれを受けます。その替りに秘書のヴェロニカ愛称“ヴォニー”(クリステン・スチュワート)にハリウッドを案内してもらうことになる。ヴォニーはハスキーボイスでアンニュイな雰囲気の子。ふたりはビバリーヒルズのロバート・テイラーら有名俳優たちの豪邸を見てまわりる。しかし彼女が「自分のアパートは海が見えて良い場所、スターは憐れよ。私も女優を目指しこの町で豪華に過ごそうと思ったが幻滅している」と語るので、「君は美しいね」と声を掛けると「わたし恋人がいる。彼はいま旅している」と答える。

ボビーは、あるパーテイで叔父の奥さんに会い、その友人の女性社長ラッド夫人(パーカー・ポージー)から「片思いは結核より多くの人を殺すわよ」と急き立てられ、早速電話でヴォニーを食事に誘うと「あなたの部屋で料理をつくる」と返事がくる。

「彼女にはボーイフレンドがいた」とナレーションがあり、フィルが豪華なレストランにヴォニーを誘い「25年連れ添った妻とは別れられない。君の辛さはわかる、愛しているのか君だ」と別れ話を持ち出し、彼女は「キスして、我慢できる」と涙ぐむ。
一方ボビーが母ローズ(ジーニー・バーリン)に電話すると「花を贈って口説け」とラッド夫人には「うまくいくよ」と言われ、もう有頂天のところにヴォニーから「行けない」の連絡が入る。ボビーはやけ酒を飲みます。

そこに、ヴョニーがやってきて「恋人とは別れ」たと言いことの次第を話します。これを聞いたボビーはチャンスと喜び彼女をハリウッド中の映画館に誘い、これが懐かしい映画です、本物の恋に陥り「結婚してニューヨークに行こう。ここでは生活できない、ニューヨークなら生活できる」と結婚を申し出ます。

ある日、ボビーは叔父フィルから電話が入りオフィスで会うことに。話は「別れた女が忘れられない。妻とは別れる」というもの。ボビーは相手がヴョニーだと知らないから、フィルの考えをしっかりフォローします。「悩んだらいつでも相談して欲しい」と申し出ます()「僕はニューヨークの方が合っている。紹介してくれたヴォニーと結婚します」と言い出す。「これはなんたる悲劇」とナレーションがあります。() 
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ボビーはヴォニーを海辺に誘い、すっかり出来上がって、フィルが妻と別れ惚れた女と結婚することになったということを話します。ヴョニーがこの話しに考え込んでいるようなので「ニューヨークに行くことで悩んでいるのか、あまり考えるな」と諭します。()

フィルが「考え直してくれ」と結婚する気持ちをヴォニーに伝えます。そしてボビーを呼び「順調にいっているか」と聞くと「とても順調だ、ニューヨークに行く」と答えると「知った口利くな!ヴォニーと結婚したら罰金だ」と別れることを強要される。彼はヴォニーに会い気持ちを確認すると「フィルと結婚する!」。
ハリウッドの空虚な裏を知ったボビーが、生きる望みをヴョニーと一緒にニューヨークで過ごすことに見出したところでとん挫してしまいました。失意のなかで生れ故郷ニューヨークに戻ります。
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「ニューヨーク」
ニューヨークに戻ると、父マーテイ(ケン・ストット)と母ローズに迎えられ「ハリウッドはボビーには合わなかった」慰められます。家族は、兄ベン(コリー・ストール)はギャング、姉の旦那は共産主義。母はフィルを誇りに思ってるけど父はユダヤ人の恥だと嫌う。この夫婦、性格が真反対で衝突のしかたが面白いです。
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ボビーは兄ベンが経営するナイトクラブで働き始めます。兄のベンは、簡単に人を殺めてはセメントで埋めて証拠隠滅するシーンで、当初からちょいちょい現れます。「兄フィルはやくざからの成り上がりで立派なクラブのオーナーになった」とナレーションがあり、兄の行動は端的に「カフェ・ソサエテイ」の実態・怪しさをコミカルに描くというユーモアを込めての演出だと笑えます。

ボビーの店は、ラッド夫人の協力を得て華やかに改造しバンドの生演奏を取り入れ、マスコミ、政治家など地元の名士を惹きつけ大繁盛です。集まって来る人たちの噂やゴシップ・ビジネスの話を聞きながら過ごすボビーは、ハリウッドのときと変わって自信にあふれた姿に変貌です。
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「出世しないで割礼してはだめ」と言われたある夜、優雅なブロンド美人でそこにいるだけでドラマを感じさせるヴェロニカ(ブレイク・ライヴリー)という女性に出会います。ブレイク・ライヴリーは世慣れした女性に見えとても魅力的です。彼女は、「結婚してたが、親友に夫を寝取られた」と放縦な話をします。ボビーはこれをうまく交わして「2時にOK」という約束を強引に取り付けます。「好きな人は?」と問われて「過去にひとり」と答えます。

ジャズを聴きながら彼女とベットを共にして、彼女は麻薬のことセックスのこと元カレのことなど話しユダヤ人ということが気を引いたと言います。
それ以降よく会って、彼女が妊娠したというので「とてもうれしい」とヴォニーと呼び結婚します。()

ボビーの姉が隣人に音がうるさいと因縁をつけられたことから大事件が起きます。彼女が兄のベンに相談すると、ベンはいつものようにいとも簡単に射殺しコンクリート埋めにします。しかし、今回は、犯行がバレて裁判で死刑を宣告され、執行されるまでがコミカルに描かれます。この結果、彼に大きな遺産が転び込んできます。

カフェ・ソサエテイは、一流のモデルを侍らせファッショナブルで、ギャングもセレブも受け入れる社交会。そんななかで、ボビーは家に帰れば子供をあやすという順風満帆の生活を過ごしていました。
こんなときに叔父フィルと彼の妻となったヴォニーが店にやってきて、相変わらずハリウッドの噂ばなしを始める。
フィルがボビーを見つけ「今ロンドンにいる、これからはベニスで過ごす。大物になったな!4~5週間滞在する」と話し掛ける。
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ボビーがヴォニーに「君にはうんざり!むかしを思い出すと悲しくなる。人生は進み人は成長する」と話し掛けると「時計を戻して、ニューヨークを歩かない」と誘われる。
ボビーはヴォニーをレストランに誘い食事。「奥さんきれいな人」と問われ「ヴォニーはきれいな人だ!僕はいまも君が好きだ」と喋っておきながら、自宅には花を持って帰り妻ヴェロニカから「やましいことでも」と声を掛けられるという切ない逢引きが続きます。()
イメージ 9マンハッタンを案内して食事、カフェで博打をして、ジャズを楽しみます。お酒を飲みながら馬車でセントラルパークを「ここよりよいところはない」と案内します。ヴォニーが「私は迷ったのよ」と話し掛けると「あのときは不況で苦しかった。失いたくなかったが不幸にすると思った。忘イメージ 10れたことはない」とボビー。これにボニーは「彼は人生を変えてくれた」と応じます。今ふたりは出口を探しているようです。そしてヴォニーから「満足した?」とキスします。ボビーがキスを返します。どうなるんだ!! このあたりが見せ場です。()

兄ベンが処刑され、ホビーは毎日処刑場前に出かけ散骨をします。()クラブの全権力が彼に移り、投資家の要求でカリフォルニアに店を開くことにしてヴォニーに会うと「ロンドンに帰る。もう会わないほうがいい、永遠に続く恋もある」と言われます。・・・
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カウントダウン・パーテイを準備するなかで、妻のヴェロニカが「浮気したことある?」と聞く。「なぜ聞く」と問いかけると「あなたがハリウッドで恋人と寝ている夢をみた」と宣います。()
パーテイーが始まり新年を迎え、心機一転でしょう、ボビーは多くの人から祝福を受けるなかで何かを夢見ているようで・・。パーテイーには叔父のフィルとヴォニーも参加していて、ヴォニーがひとりになって何かを夢見ているようで・・。ここで「なしえなかった夢を想うふたり」とばかりに暗転。すばらしいエンデイングでした!!
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