映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」(2017)

イメージ 2
宮崎あおいさんが、「バースデーカード」以来1年ぶりの出演ということで楽しみにしていました。原作では、出演シーンが少ないと思っていたところ、役にふくらみを持たせ出番が増えていて、彼女らしい感情のこもった演技をみることができ大満足でした。

原作は人気料理番組「料理の鉄人」の演出家・田中経一さんの同名小説。監督は「天地明察」の滝田洋二郎さん、脚本が「永遠の0」の林民夫さんです。キャステイングは主演に嵐の二宮和也さん、共演に西島秀俊綾野剛西畑大吾竹野内豊笈田ヨシさんらと重厚な布陣です。

一度食べた料理を完全再現できる絶対味覚「麒麟の舌」を持つ料理人・佐々木充が、戦争で失われた70年前の伝説レシピ再現を要請され、レシピを捜し求めるなかで、自分の舌のルーツに巡り合うという物語。

佐々木がレシピを捜す現代パートと70年前のレシピ作成経緯の過去パートが交互に描かれ、時代の異なる料理人の「麒麟の舌」が最後に繋がるという絶妙な演出になっています。過去パートは満州の歴史や料理とは何ぞやを問い、料理に関わった人の想いがしっかり描かれて感動的なヒューマンドラマになっていますが、現代パートは原作を変更したせいか薄っぺらな感じがします。
原作はサスペンス物、これをヒューマン作品に焼き直しています。それだけに、味が抜けたような作品になっており、とても残念です。
作品の主役は「料理?」、これほどに料理にこだわった作品は記憶にありません。
イメージ 3
料理の美しさ、だれがどういう想いで作ったのかと興味を持ちます。俳優さんたちの料理の腕は見事です。原作では感じることの出来なかった感動があります。

出演者のみなさんの演技はとても感情表現がたくみで見ごたえがあります。二宮さん演じる主人公佐々木充は人生に挫折した料理人。70年前のレシピを捜す中で人間的な成長を遂げます。二宮さんはラストの表情で成長ぶりを見せてくれます。
佐々木の友人柳澤健役の綾野さんは、冒頭から登場して物語をつないで行くとても大切な役を謎めいて演じています。

70年前のレシピがどのようにして出来上がったかが丁寧に描かれています。これは原作にない部分。料理人山形直太朗役の西島さんは、撮影前に学んだ華麗な料理技術を披露するとともに、人を喜ばれる最高の料理とは何かと苦悩する姿を凛々しく演じています。
イメージ 4
その妻千鶴役の宮崎あおいさんは、原作よりずっと早く亡くなるのですが、「何かを成し遂げるためには何かを犠牲にしなければならない」と自分を犠牲にしながら懸命に夫を支える妻を優しく時に厳しく丁寧に演じています。
イメージ 5
ラストで、レシピの中の写真で登場し、その想いがしっかり伝わります。なんといっても聡明な昭和の奥さん役は鉄板です。
原作の変更で新設された山形の下で働く鎌田正太郎役の西畑さん、過去と現在を結ぶとても重要かつ難しい役ですが、うまく演じたと思います。
レシピをまぼろしにする陸軍三宅大佐役の竹野内さん、見事なほどに陸軍大佐に見えました! わずかの出演ですがすばらしい演技でした。
***
物語、
2002、孤児院「すずらん園」での、園長の葬儀にやってきた柳沢がたばこを燻らせ「絶対来いというたろうが、ふざけるな!ずっと会いたがっていた親父みたいなもの。切る!」と携帯を切る。
イメージ 6
「何が最上の料理人だよ。日本一だと!見せしめるためこうするしかない」と唸る。相手は佐々木充。この冒頭のシーンは原作にないもの。本作のテーマを明確にしています。

佐々木は大きなトランクを引いて入院中の老人を訪ね、トランクの中から調理具を取り出し最後の料理だとオムレツを作ります。値段は100万円。彼は人間最後に食べたいという思い出の料理を再現できる「最後の料理請負人」を職業にしています。
彼は妥協しない料理人として、最高の素材で最高の料理を作ろうとして従業員、客を失い、いまは料理人としての情熱を失いかけている。

こんな彼に高名な中国人料理家楊晴明(笈田さん)から北京に招かれ、「店を再生する気はないか」と問われ、清の皇帝が作った世界一の料理「満漢全席」に対抗しようと旧日本軍が作ったまぼろしの料理「大日本帝国食菜全席」のレシピを捜し出し再現してほしい、成功報酬は5000万円という。宮内庁大膳課で山形直太朗(西島さん)さんを調べて欲しいと言われます。
イメージ 7
さっそく宮内庁を訪ねると当時一緒に働いていた辰巳金太郎が紹介される。訪ねると亡くなっていたが、山形さんのフアンで、その料理が豚の角煮だという。食べてみるが味が違う。(とても美味そうに見えるが)

ここで紹介された、鎌田正太郎(伊川東吾さん)を訪ねる。「レシピはここにはない」と言い、レシピがどうして生まれたかを、鮎を三枚におろしながら話しはじめます。ここから過去については楊と鎌田の記憶として語られます。

70年前(1933、直太朗、その妻千鶴、鎌田は満州に行けと言われ大きな希望で巨大な夕日の見える満州にわたった。
イメージ 8
ハルピンに着き車で市内を走る姿は当時を思い出させるすばらしい絵になっています。千鶴は少しお腹が大きい。千鶴はカメラを持ち、収納ケースは布製で自分で作ったもの。あおいさんの趣味に一致しています。() 

関東軍に出頭し三宅大佐から世界が驚く料理、清の皇帝が作った料理「満漢全席」を超える108品目のレシピを天皇陛下満州を御幸される日までに作って欲しいと依頼される。
イメージ 9
助手として、清朝の宮廷料理人の孫である、楊晴明(兼松若人さん)を紹介される。直太朗はさっそく楊に昼飯を求めると、“冬瓜に煮つけ”を作り調味料を教えないで「味はどうでしょうか」と差し出す。直太朗がそこにある食材で調味料を作り「僕は一度食べた味を絶対に忘れない」と舌の力を見せつけます。

直太朗は「全世界の人が喜ぶ料理をつくる」と鎌田にはアジを焼かせ、楊には鮎の春巻きを作らせます。こうしてレシピ作りが始まる。千鶴は常に夫に添い、レシピのできる様を観察してカメラに収めます。
イメージ 10
この鮎の春巻きを楊が作って佐々木に食べさせると、佐々木は「塩が利きすぎている」と評価します。

3人で街に出かけ食材を捜し、店の料理を食べて味をさがします。
イメージ 11
パリにつながる松花江を見て千鶴は「世界をあなたと旅したい」と直太朗に伝えます。この思い出があまりにも悲しい思い出になります。

より良い料理を目指し直太朗の要求が厳しくなり、楊は「日本人が傲慢だ、それは理想だ」と衝突するようになります。それでも直太朗は「上を目指せ!料理は進化し続けている」とこれまでの態度を変えない。
見かねた千鶴は楊に「夫は自分のことしか見えていない」と謝ると「キリンの舌をもつ人は、人を幸せにできる。民族の融合には失敗があっても、料理にはないことを伝えたかった」と言います。
直太朗は「うまくいかない!」と書いたレシピを揉みくちゃにして捨てる。千鶴はこれを拾い、皺を伸ばし、それに自分が撮った写真を貼り、料理の作り方を書き入れます。

楊と鎌田もこのレシピで作るとうまくできるようになり、いい雰囲気で仕事ができるようになっていきます。(この話を聞く佐々木はおそらく自分の行為を恥じているでしょう)

そして四季ごとに料理品目を選び、全112品目を決定し、エビ料理から作り始めます。そして完成すると、直太朗は「とりあえず決めたもの」とさらに上を目指して品目を変更し、新京にまでの食材を求めて出ていくようになる。

お腹が大きくなってきた千鶴でしたが、「何かをなしとげるためには何かを犠牲にしなければならない」と夫の行動を理解し、悩む夫に「あなたは民族を融合する料理をつくる人だから目の前の楊さん、鎌田さんをうまく使って!レシピは私の一部になっている。自分のレシピが美味しい?自分の料理の味が分からない人に世界一の料理はできない。世界の人を笑顔にして!」と励まします。
イメージ 12
しかし、この言葉を残し、出産で大量出血して亡くなります。
]
こんな状況でも、直太郎は生まれた子を放ったらかしでレシピを考えている。この姿に料理長の鈴木さん(竹嶋康成さん)が「奥さんが命をかけて産んだ子のそばにおれない料理人に料理はできない」と言い放つ。

直太朗は「手料理ができるのに千鶴に作ってやらなかった」とかつ丼を作り、楊・鎌田と一緒に食べながら「これからは三人で料理をつくる。人を幸せにする料理をつくる」と涙を流します。このときから直太朗は、何かにとりつかれたようにレシピを作り続けます。無駄になることも知らずに・・・
ここで、鎌田は「これで私の話しは終わり。続きはハルピンにあるスラバホテルの支配人ダビッド・グーデンパークさんに聞きなさい」という。

柳澤は佐々木の話を聞いて「その料理人はお前によく似ている。何かを得るには何かを捨てることだ。世界の人を喜ばせる、自分にしかできない仕事をしてみないか」と励まします。

ダビッド・グーデンパークは「当時『日ユダ交渉会』がスラバホテルで開かれその時のチーフシェフが直太朗で、ここで作った餅入りロールキャベツが非常に美味くてこれが縁で父と親交があった。
イメージ 13
『ロールキャベツのレシピ、は娘が食べているのを見て、妻を思い出し考えたものだ』と直太朗が語った」と言います。
佐々木は「料理は愛情、人を信じることで良い料理ができる」と答えます。すっかり直太朗に重なっています!

「国際状況が緊迫してきて、直太朗は、万一の場合を考え。手紙とレシピを父に預けに来た」と言います。その手紙は楊晴明宛のもので、読むとつぎのようなものだったと。
「軍は天皇陛下御幸時、料理に毒を盛って暗殺する。直太朗にはそのためのレシピ作成を依頼した。暗殺を企てるのは楊晴明にする。鎌田はずっと直太朗の監視役だった」と三宅大佐が直太朗に計画を明かす。

これを聞いた直太朗は、楊晴明を生かすための、帰宅して「スパイだったのか!出て行け」と追放したという。今まで作ってきたレシピはいずれ使われると踏んだ直太朗は千鶴が整理したレシピに手を加え、娘・幸に食べさせて、“1933recipe“として作り直した。このレシピを楊に託す、必ず世界のレシピになると記されていたという。

直太朗はその後、「大日本帝国食菜全席」のお披露目の席で、大佐の目の前でレシピを燃やす。
イメージ 14
鎌田は直太朗に逃げるよう勧めるが、「料理が好きだろう。いまでも料理人だと思っている」と言い、悠然と死を選ぶ。このときの西島さんの表情が良いですね!

佐々木はこの後、楊晴明に会い「その後レシピはどうなったか」を聞きます。
楊は、鎌田を捜し出し、千鶴さんの娘・幸(広澤草さん)に会うことができた。幸は満州で料理長であった鈴木さんと一緒に暮らしていた。そこで、直太朗の死の真相を話しレシピを渡した。
幸はこのレシピで店を始めようとした前日に火事でレシピを取りに火の中に入り亡くなった。鈴木さんは、幸の子供を息子・太一さんが運営する「すずらん園」に預け、その帰りに交通事故でなくなった。「君にその面影がある」と語るのでした。
「何で今なんですか?」と聞くと、それを考えたのは僕ではない、柳沢君だ。レシピを継ぐのは麒麟の舌を持つものだ」。

佐々木はすずらん園を訪れ、園長の遺影にお参りしてレシピを受けとります。第一ページに「包丁は父、釜は母、食材は友。レシピーは哲学。湯気は生きる喜び、香りは生きる誇り、できた料理は君のもの。それを食すは君思う人」と記されあり、各ページに直太朗、千鶴、楊、鎌田の写真が貼ってあり、父に抱かれた幸の写真に「幸の大好物ビーフカツサンド」のメニューが載っていました。
イメージ 15
園のこどもたちにビーフカツサンドを作り、佐々木自らもこれを口にし「うまいなあ!うめえ!」と涙を見せます。麒麟の舌がつながりました!
佐々木は再びシェフとして厨房に立ち、その動きは直太朗の姿に重なります。
イメージ 1
             ***
資料 「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」(番宣等)