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「DESTINY 鎌倉ものがたり」(2017)

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黄泉の世界を見てみたいというのがこの作品を選んだ理由です。巨大湯治場のようで暖かくて心鎮まるところ。黄泉の国に行けない人、帰れる人などお伽話が面白い。(#^.^#)

夫婦の暖かい成長物語、CG・VFXで描かれる奇想天外な転生輪廻の世界感に、驚き、癒され、笑って、ほろりとさせられる、そんな作品です。
監督は「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの山崎貴さん。原作者・西岸良平さんの「鎌倉ものがたり」を実写映画化したハートフル・ファンタジー・コメディ。主演は堺雅人高畑充希さん、共演者に堤真一安藤サクラ田中泯三浦友和中村玉緒さんらです。

人と妖怪や幽霊が仲良く暮らす不思議な街・鎌倉を舞台に、急死した新妻の魂を取り戻すべく黄泉の国へと旅に出た主人公の冒険の行方と夫婦の愛をノスタルジックかつユーモラスに描くというもの。

前半は、主人公・一色正和(堺雅人)と新妻・亜紀子(高畑充希)の、幾つかの夫婦像を示しながら、幸せな新婚生活の日常を。後半は、愛する妻の命を取り戻すため、正和がただ一人で黄泉の国へと向かい、ここの住人天頭鬼(古田新太)から妻を取り戻す様が描かれます。

現生と黄泉の国をどう繋ぐか。前段で、鎌倉がこの世とあの世が交差する場所として魔物や幽霊・死神・貧乏神などが出てくる雰囲気にしっかり仕立て上げられ、ここでのエピソードが実にうまく後段のあの世に繋がり何の違和感なく黄泉の国に誘ってくれます。すばらしい脚本です。
そして、若い妻亜紀子を演じる高畑さんの、旦那さんに甘えながら、喧嘩をし、ひょんなことから階段を踏み外し黄泉の国に行ってしまう少し天然で可愛い演技に引き込まれ、黄泉の国についていくことになります。() この物語に魅せられる大きなポイントです。

監督が描きたかったのは黄泉の国。CG&VFXで、「千と千尋の神隠し」のイメージがあるものの、蜂の巣のような住居が岩にへばりつき、滝が流れ落ち、三途の川が流れ、雲がたなびく幽遠の地。ここで繰り広げられる天頭鬼とのバトル。圧巻のファンタジックな黄泉の世界を見せてくれます。
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物語は、
冒頭、ベンツで新婚旅行から帰りの一色夫婦。若妻・亜紀子が「できるのかなあ!作家の奥さん。不思議な先生との結婚」と言えば、作家先生が「幸せ!」と言い、湘南道を左折し極楽寺横を抜け、大仏を見て、赤い屋根の古びた一軒家の自宅に。
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先生曰く「鎌倉はゆったりしている。東京とは違うんだ」と宣う。ここから、不思議な鎌倉での新婚生活が始まる。

早速原稿取りに編集者・本田(堤真一)という男がやってくる。先生を呼んでも部屋から出てこない。覗くと、プラモデルの電気機関車で遊んでいる。これをやらないと小説は書けないという。いい年の先生もこんな幼児性をもっている。これでは妖怪や黄泉の世界に入りやすい。
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亜紀子が、先生が朝出かける際絶対に覗くなという納戸を覗くと、人魚のミイラや骨董品が山ほどあり、妖怪の世界になっている。捨てられた古い小説の原稿、甲滝五四朗という作家が書いた「黄泉の国について」を見つける。ここで、130歳になるというお手伝の婆さん・キン(中村玉緒)に出会う。これで“ALWAYS”、昭和の雰囲気がぷんぷんです。

亜紀子が先生に連れられ夜市に出かける。とてもなつかしい原風景。淡い光のなかに、沢山な夜店が出ていて、みんな魔者に見える。実が黄泉の国からやってきた魔物たち。亜紀子はそんなこと知らないから松茸と鎌倉彫の盆を買う。朝、松茸を味噌汁にして出すと先生がめずらしいと飲み、口から煙?を吐きながら倒れる。どうも先生は妖気に弱いらしい。

夜店で瀬戸さんというおばあちゃん(吉行和子)に会う。先生は「おばあちゃんは死んでいるんだが、まだおじいちゃん(橋爪功)が生きているので、“幽霊申請”をしてこの世に残っている」という。こういう死の世界が鎌倉にはあるらしい。()亜紀子はこの話を信じる、そういう子です。()
 
先生は警察の心霊捜査に協力をしている。金満夫人殺害事件で、先生の霊感と検証で犯人が夫であることを突き止める。これ、最悪の夫婦。「夫婦だからと言って安心できない」という先生に「なんかひっかることあるの」と亜紀子。先生が「納戸のこと」と言い、ふたりに気まずい空気が流れる。こんなことに、台所で涙を流し亜紀子が少しずつ妻らしくなっていくところが良い。

瀬戸のおばあちゃんが、夫と一緒に電車で黄泉の国に行くというので、先生は亜紀子を連れて現生駅で見送ることにする。
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瀬戸夫婦は理想の夫婦。ここまでくると、こういう死の世界のはなしも抵抗なく受け入れられるようになる。江の電のタンクロが黄泉行電車としてよく似合う。

ある日、キンが貧乏神田中泯)が天井にいるという。キンの活躍で捕まえると「この家には金があるとやってきた。なんとか置いてくれ」という。
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亜紀子は貧乏神に朝ごはんを準備するなどやさしく接する。が、居心地が良すぎると、記念に小さな皿を置いて去る。この魔法の小皿が後半で生かされる。人には功徳を施すことです。

先生、本田が倒れ入院したので病院を訪ねると、そこにはすでに死神(安藤サクラ)が迎えに来ている。サクラさんとは気付かなかった。() 好演です。
]本田は「妻や子供のために黄泉にはまだ行きたくないと幽霊申請をしたが、いまは申請が多く対応できないと断られた」という。そこで死神の提案で「魔界人となって、ここにとどまる」ことにしてカエルの妖怪になる。
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カエル妖怪になって妻を追っかけると、妻はすでに別の男と付きつき合っている。思いを残さないよう妻に孝行しておればよかったと。()

亜紀子は、先生に原稿依頼が来て、公衆電話で伝えにと飛び出し、石段で滑り(赤い手の魔物に足を握られる)絶命。しかし、人に優しい亜紀子は、母を亡くした子のためにその母親に身体を貸し霊体として現生に留まっている。これが現生に戻れる条件。しっかり、功徳を施しなさい!

電話を受け先生が家に戻って亜紀子を探すが、見つからない。死神が歓喜の声を上げる。亜紀子が霊体となって戻ってくる。先生は亜紀子に幽霊申請をするよう促すと、死神が「先生から徴取させてもらっている」という。亜紀子は「これでは先生の命が縮む」と黄泉の国に行くことにして、そっと寝ている先生に寄り添い涙を流します。

朝起きると亜紀子がいない。いなくなって知る亜紀子の存在、もう放っておけない。
甲滝五四朗の書いた本により、自分の身体をキン婆さん預けて、一日一本の黄泉の国行きの江の電タンコロに乗る。
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海を渡り、やがて三途の川を下に見て、蜂の巣のような住居が岩にへばりつく巨大湯治場、黄泉駅に着く。
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黄泉の国駅で、死神が「裏で天頭鬼が糸を引いていてちょっと厄介なことになる」と耳打ちする。まずは情報を取集せねばと甲滝五四朗を訪ねると、なんとそこに母がいる。ふたりの隠された因縁を知り、なんとしても亜紀子を取り戻したいと父の指南を受けると「人は見方で変わる、想像力で戦え。思いが本物なら必ず取り戻せる」という。

壮大な天頭鬼の住む顔面形建物を訪ねると、亜紀子が楊貴妃のようないで立ちでいるではないか!「帰ろう!お前が必要だ」というところに天頭鬼が現れ、「お前は何回も一緒になっている。俺は、この女には何回も騙されている。もう許せない!」と、黄泉の国の魔物たちと一緒に挑みかかる。

先生は“真田幸村”仕込みの剣術で、時に頭を抱え想像して、戦う。() ここはアニメと実写が一体となったような映像でとてもよくできている。
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ふたりは追ってくる天頭鬼と闘いながら、黄泉の国駅に掛かる鉄道を走り、やっと発車直前の電車に間に合う。それでも、天頭鬼が追ってくる。そこに、あの小皿が迎えにきてふたりを乗せて現生に帰還。
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一色夫婦の大きな愛と沢山の功徳で、現生に戻れるという物語。年末年始の時期に観る映画として、とても心温まる作品だと思います。
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               主題歌