映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「素敵なダイナマイトスキャンダル」(2018)

イメージ 1
原作が、“同郷の”伝説的エロ雑誌を世に送り出した末井昭さんの、同名エッセイ集。かつ、主人公のダイナマイト心中した母親役が尾野真千子さんで、その妖艶な姿に魅せられ、楽しみにしていました。このキャステイングに驚きです。
イメージ 2
物語は戦後の裏日本史が描かれていて()、こんな田舎からこんな人が生まれていたとは、この作品が出るまで知りませんでした。ちらっと覗いた雑誌でしたね!気になる雑誌でした。()
何故この雑誌があれほどにヒットしたのか? この母親を持った末井さんだからこそヒットさせたと思えます。母への想い:情念で、逆境を逆手にとり自分に嘘をつかないで、堂々と前に進む生き方に感動します。 ()
 
監督は冨永昌敬さん。主演は柄本佑さん、共演に前田敦子松重豊村上淳尾野真千子さん、これに峯田和伸三浦透子菊池成孔さんらが加わります。みなさん、演技とは思えないほどに嵌っていて、すばらしいです。

少年時代に母親が隣家の息子とダイナマイトで心中するという衝撃的な体験をした末井昭さんが、高校卒業後、工場に憧れて田舎を飛び出し大阪で就職するも、すぐに退社。その後上京し、キャバレーの看板描きなどの仕事を転々とし、やがてエロ雑誌の世界に足を踏み入れる。そして、編集長となり警察との攻防の末にエロ雑誌の創刊・廃刊を繰り返しながら、写真家の荒木経惟さんをはじめ様々な才能との出会いを重ねていくという物語。<allcinema
 
上京後の活動が物語の主体となっていて、写真撮影シーンやキャバレーの始業前の歌などセリフも含め、地上波では絶対に放送されない「笑い」に仰天です!

母親の死にまつわるトラウマもこれ以上の貶めはないと、母への想いを逆手にとって、「芸術は爆発、僕の場合はお母さんが爆発でした!」と「パンツには溢れるほどの夢が詰まっている」と幾度となく警察の手入れを掻い潜りエロ街道を驀進する姿は痛快です。
しかし後段、雑誌「写真時代」の廃刊、投資の失敗、交際中の女性の自殺未遂と追い込まれるが、亡くなった母への労わりの気持ちがみえてきて、チャンスを掴み「パチンコ必勝ガイド」の出版に漕ぎつけます。ここでの変貌する末井さんの姿がちょっとわかり難い!
全編を通じて、キャバレーにエロ雑誌、TVや車・カメラ、歌に食事にとこの時代がしっかり捉えられていて、ニヤリとさせられます。(#^.^#)

****
1984年、「写真時代」に警察の手が入ったところから物語が始まります。「これ〇〇が見えてる、明確だよ」「ちゃんとチェックしたんだけど」。「これ入ってるだろうが!」「そういう振りをしてるだけ」()。こんな調子で、警察庁諸橋係長(松重豊)の指摘をのらりくらりと交わす末井さん(柄本佑)。
イメージ 3
まったく悪びれる態度は見られない。次はどう描こうかと思案している感じ。警察も雑誌を手に楽しんでいるような感じです。こんな時代だったんです!()
 
一気に1955年に起きた母親の心中事件の現場に飛びます。母親は結核村八分の状態、父親の目を盗んでの隣の男との逢引。父親の怒りで家を出た母親が自殺前に家に戻り7歳の末井さんの頭を撫でて出て行った記憶。ここでの尾野さんの濡れ場と子供の頭を撫でダイナマイトを腰に巻き出かける姿がなんとも色っぽい。末井さんには忘れられない記憶だったのでしょう。
尾野さんは、ここで消えるのですが、末井さんの記憶となって登場し、作品全般を支えることになります。出番はわずかでも大きな存在感があります。
 
1967年、高校を卒業し集団就職で機械工として大阪に出ますが、軍隊のような恐ろしいところだと、父の勤務する川崎の工場に転職。この工場も前と同じと牛乳配達をしながら、夜間、「青山デザイン学校」に通いグラフィックを学ぶことにします。
アパートの停電が縁で、隣に住む牧子(前田敦子)に出会い、結ばれます。彼女は東芝工場で職工として働き、帰宅して昭さんが描くエロポスターを手伝うなど、前田さんが牧子役を微笑ましく演じてくれます。(#^.^#) 
イメージ 4
1968年、デザイン会社「作画会」に入社、ここで生涯の友:近松さん(峯田和伸)に出会います。母がダイナマイトで心中したことを聞いて「すごいね!」と言い、会社から「それを売り物にしたら」と声を掛けられても「気にするな!」という近松さんの言葉で、末井さんは「情念だ!」と覚醒します。峯田さんの演技には説得力がある。 
イメージ 5
1970年、当時流行りのキャバレー「クインビー」に再就職します。就業前の従業員全員で歌う「武田節」(替え歌)を全部聞かせてくれます。大笑い。
ここでちらしを書いていると宣伝部長(山本剛史)から「そんなもの役に立たん、今は万博だろう。これでいけ」と発破をかけられ、「太陽の塔」をモデルに〇〇〇を作成。() しかし店長(政岡泰志)から大目玉。これに切れて、「情念の爆発だ!」と絵の具を頭からかぶり、全裸でストリーキング。これを写真に収める中崎(中島歩)。() 演じる江本佑さんが凄かった!

妻の顔を見て、「これでは社会の底辺で妻が可愛そう」と思っているところに、池袋のピンクサロン「クラウン」の看板書きの仕事が入る。当時のクラウンの店内営業状況を見せてくれます。() この看板が大好評で、渋谷ロマンス通りは末井さんのもので埋まったと言います。
 
「クインビー」時代の同僚・中崎に誘われエロ雑誌のイラストを描いて、どんどん仕事が増えくる。ライターの如何わしいつぶやきに合わせ描きまくる。()

そして伝説のエロ雑誌「ニューセルフ」の編集長に。ここで憧れの荒木経惟さん(菊池成孔)と一緒に仕事。
イメージ 6
この雑誌を見た中学生から電話相談が増えるので「アケミのSEXテレフォン」を開設し、相談で煽り、雑誌を売りまくる。

“芸術というのが女に脱がす殺し文句”と、この手で脱がして撮りまくる。このテクニックを見せてくれます。()
イメージ 7
「ニューセルフ」が発禁になると「ウイークエンド・スーパー」を創刊。これが発禁になると「写真時代」を創刊。このころ編集部の新入社員・笛子(三浦透子)に一目惚れしストーカーまでしてものにしたのに、関係ができると捨ててしまう。
イメージ 8
この態度に、笛子が自殺未遂、精神異常をきたす。牧子との関係がぎぐしゃくしてくる。キャバレーで気前よく遊び、投資に手を出す。

遂に、「写真時代」が廃刊に追い込まれ、投資に失敗する。久しぶりに会った笛子の姿に、男を待つ母親、帰ってきて頭を撫で涙して出て行った母親の姿がダブルようになる。(いずれも幻想)
 
追い込まれてパチンコ通い。これでくたばるかと思ったら、そこで“出会った女”からパチンコ人生を聞き、「パチンコ必勝ガイド」を創刊したら、これが大好評。()
「母親を売り物にして何が悪い」とやってきたが、「芸術は爆発、ぼくの場合は母親が爆発。これがぼくを村から吹き飛ばしてくれたんだ」と母への想いを新たにし、「パチンコ必勝ガイド」TVCMに女装で出演! 
イメージ 9
なんだ、母を売り物にしているではないか!()
この映画、「末井さんが仕掛けた罠なのか」と疑いたくなる作品でした。()
エンドロールで尾野さんと末井さん(ご本人)のデュエットが流れます!
****