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「町田くんの世界」(2019)

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夜空はいつでも最高密度の青色だ」の石井監督、初めての漫画原作作品。原作は安藤ゆきさんの同名コミック。早速でかけました。
監督の世界感は変わらないですが、今作はコミックらしくぶっとんだ作品になりましたね! ぶっとんだところに監督の狙いがあるんだと楽しみました。
 
悪意に満ちたこの世界で、不器用で清純な男(16)が一生懸命に“愛ってなんだ“と人が好きになる理由や意味を探す旅。今風の恋愛観に清風を吹き込んでくれました。山里亮太さんと蒼井優さんの結婚会見で、山里さんがつまらん報道陣の質問を蹴とばしたような、「もっと美しいものを見よう」という、ちょっと似たところのある作品です。() 
 
主演に演技経験ほぼゼロの細田佳央太君と関水渚さんという新人を起用。悪意に満ちたこの世界で、このふたりのピユアと善意をきらめくかせる策でしょう。さらにフルムで撮ったというから、その新鮮さがしっかり出ています。共演は岩田剛典・高畑充希前田敦子・太賀さんという、年増のちょと汚れた高校生。()この汚れた高校生が二人に触れてきれいになるところが見どころ。高畑さんと前田さんの高校生ぶりが圧巻です!さらに、池松壮亮戸田恵梨香佐藤浩市北村有起哉松嶋菜々子さんらベテランがうまいセリフで盛り上げてくれます。
 
物語、
町田一は16歳、母親・百香(松嶋奈々子)は間もなく生まれる子がお腹にいる5人の子持ちの母親。父親“あゆた”は生物学者で世界中を旅している。子供が多いのも分かります。()お母さんと結婚した理由は、多くの生物はわかったがお母さんだけは分からなかった。「分からないことがあるからこの世界は楽しい」と結婚。こんな家庭に育った一は地味なメガネの高校生で、一見頭はよさそうだがまるでだめ。運動は独特なフォームで50mを12.9秒で走る運動ベタ。得意なものは何もない。だが、人を愛する才能だけはずば抜けている。困った人を放っておけず、バスで立ってるお年寄りには必ず席を譲る。
 
ある日、授業中に怪我して保健室にいった町田くんは、そこにサボっている猪原(関水渚)と出会う。不在の保険の先生にかわって手当てしてくれた猪原さんだが、「人が嫌い」という。そんな「人嫌い」の猪原さんが町田くんはとても気になった。今まであったことのないわからない感情が芽生え始める町田くん。誰かに優しくすることは、誰かを傷つけることでもあると知り・・・。
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町田くんの人のよさ、ハンバーグの肉を買いにいって、遊んでいる子の手から風船が離れるとそれを追ってどこまでも、買った肉を忘れて帰る。
こんな町田になったのは「井戸落ち」で頭を打ってキリストになったらしい。()同級生の栄りら(前田敦子)は「こういう人のなかに犯罪を犯すやつがいる」といつも町田の“人のよさ”を腐す。()
 
猪原が街で学友にたかられているのを、「彼女は大切な人だ」と町田が連れ出す。これを見た栄、「青春はやばい!」と焼き鳥を食べるのを止めてふたりを追う。() 人嫌いの猪原は町田のこの行為に大混乱。
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ある朝、町田のボックスに「グランドで待つ」のメールが。猪原だと思って行くと西野だった。猪原と交際したいというから、西野のためと猪原と西原のデートに付き合う。() 全くボーリングなどできないが、二人を褒めて盛り上げる。西野を冷やかす同級生の出現には楯になり、守ってやる。西野は町田の気持ちに感動して、町田が花を買いに行ってる隙に「町田と付き合え」と帰ってしまった。
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戻った町田、「今まで見たこともないほどきれいだ」と花を猪原に渡すもんだから、猪原はまたまた大混乱。() ついに猪原の心に町田が住み着いた。
 
氷室雄(岩田剛典)と別れた後輩の高嶋さくら(高畑充希)が寂しそうにしていると、町田が自販機から缶コーヒーを買って来る。これを見た庵原が「どうして誰にでも親切なの、頭がおかしくなる」と大混乱。「もう一度、井戸に落ちろ!」()
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お昼、さくらから勧められ弁当を嬉しそうに食べる町田。もうたまらんと猪原は夜、町田の家に行き、震えながら「何がどうなったか説明して」と抗議。町田は「特になにも?」。「わたしの頭はどうかなりそう。つまり不満なんです」と投げつけて帰った。
 
氷室が猪原に、そしてさくらが町田に「付き合ってください」と近づく。猪原は断る。町田も「さくらさんは大切な人だが、理由はなにもない・・」と断った。()
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そして、雨の日。いつも放課後、猪原がいる水門に傘を持って行ってやる。このあたりから町田の気持ちが変化してきます。「町田くん、好きという感情わかる。恋という感情は?」と問われる。
 
この頃、雑誌記者・吉高洋平(池松壮亮)がある有名人のカップル写真を撮ってスクープだと喜ぶが、妻・葵(戸田恵梨香)が「辞めたら」と促す。彼は「弱い者いじめ、自分のことしか考えない。命を簡単に踏みにじり、他人の不幸を喜ぶ。思いやりなんて存在しない」と社会を憎みながら、「人は人の不幸を喜ぶ」とスキャンダル記事を書いている。
 
通学バス。猪原の影になって妊婦に席を譲れなかったと悔やむ町田に、怒った猪原は次の停留所で降りてしまった。それを見ていた吉高は、下車する町田を追って「どうしてそんなに優しくなれるんだ」と聞く。「好きな人が傷つくとはどういうこと、教えて欲しい」と町田。
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猪原とデート中に、お母さんが産気づいたという知らせに「ここで待って!」と言い残し病院に。男子誕生に町田は奇跡だと喜び涙を流す。しかし、町田は夜になっても戻って来なかった。
町田が猪原を訪ねると「誰かを好きになることは誰かを傷つける。私のことだけ考えて!私は最低!」と言い放ったまま消えた。
 
次の日、プールに猪原がくると待ったが来ない。氷室がきて、「これ、さくらのハンケチ」と捨てる。「氷室君、これはゴミでないぞ。人の気持ちを大切にしないと。人の気持ちが分からないから自分が分からない。一生懸命になれるものを探せ」と町田。「お前、分かるのか?」と氷室。氷室はこの言葉でさくらとの仲を元に戻した。
 
猪原がロンドンに発ったと知ったさくら、栄、西原、氷室、学友たちの応援で、町田は猪原を追った。町田の「人が好き」が、みんなの町田への愛を呼び起こした。
 
猪原は乗った電車で吉高から「読め!」と雑誌原稿を渡される。そこには「世界は悪意に満ちている。本当にそうだろうか。町田くんの見る世界は美しいに違いない!」、これを読んで猪原は泣いた。
 
ここからは“ファンタジー”な世界、監督作品では初めてのこと。猪原を追う途中で、町田は子供のために風船を取り戻そうと掴まり空に舞い上がり、電車を降りて戻ってきた猪原と一緒にプールに「水落」し、「猪原を愛する」という意味が分かった。() 監督は、町田くんたちによって閉塞した社会は必ず開けると“奇跡”を期待しているのではないでしょうか。
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