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「のみとり侍」(2018)

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「こういうものこそ世界に観てもらいたい。日本の時代劇にあるんだということを・・」という寺島しのぶさんの口上に乗せられ、さらに写楽風映画ポスターに魅せられて、また、「ファ○クの仕方を教えてもらう男の話で、おち○ちんにうどん粉をまぶしたりするんでね。日本の隠れた文化や、すきま産業を紹介する映画」(監督)という案内。公開初日、朝早くから観ることにしました。()
 
原作は小松重男さんの同名短編。未読です。監督は「後妻業の女」の鶴橋康夫さん。
キャストは監督の言葉で紹介。「映画化が決まると、中央大の後輩でもある阿部寛を「君の裸はいい、君しかいない」と口説き落とし、「僕の知恵袋」と絶大の信頼を置く豊川悦司、「僕の思い人」と愛する寺島しのぶ、30年前から映画化された時の役柄を決めていたという風間杜夫大竹しのぶと鶴橋組の常連に声をかけた。さらに、選考委員を務めた向田邦子賞で初対面した前田敦子には「あっちゃん、脱げるかい?」と出演を直談判。映画監督としても活躍する斎藤工にも「映画の未来を託したい」と直接交渉し、豪華キャストをそろえた。」(スポーツ報知より抜粋)
 
「のみとり」とは、実在した仕事で、猫のノミをとって小銭を稼ぐ仕事でそれは表向き。実は、女性に夜のご奉仕をして、愛を届けるという裏家業だった。
 
めちゃ面白かった! この時代の「のみとり」という仕事があり、その風俗を描くという一点は見事で、テーマが「すきま産業を紹介する映画」なら満点です。しかし、後段、とってくっつけたような話になって、すかっとしない結末に不満。短編小説をかき集め、くっ付け、時間稼ぎしたというように見える。
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監督がおっしゃるように、芸達者なみなさんの演技に魅入ります。くそまじめにこの役を阿部さんが演じるから、一層おもしろい。しかし、深化したのかなあ! 豊川さんは性の達人に見え、にやりと笑うしぐさが忘れられない。() 風間さんと大竹さん夫婦は、大した役ではなく狂言回しで、存在感が半端でない。
性演技が見せ場、主人公がどうやって達人になったかですが、なんともあっさりしすぎ。阿部さんのナレーションで終わり。騙された!() なにも、R-15にしなくても。あっちゃんが脱ぐというのも大げさ。() 江戸中期、田沼時代という舞台装置が少し貧弱でした!
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物語は、
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冒頭、老中田沼意次桂文枝)が城に向かうさなか、走り寄る商人たちから賄賂がらみの陳情を受けているシーン。「女に許し男に何で売春を許さん」の陳情で幕が開く。こんな能天気な時代だったんですね。
 
越後長岡藩では、藩主牧野忠精(松重豊)による自作の歌を詠む会で、物乞いと題すると殿の歌に、「良寛和尚の物まね」とクレ-ムをつけた勘定方書
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き役・小林寛之進(阿部寛)は、「明日から猫ののみとりになって無様に暮らせ!」と言い渡される。ここでの、重松さん演じるバカ殿の演技、歌を詠むかん高い声が抜群の出来です。()
 
さっそく猫ののみとり屋「甚平衛」を訪ねると、「体つきがよい、引き受けた。仇討ちの方か?」と旦那の甚平衛(風間杜夫)がその根性を褒め上げ、「表と裏の仕事があり、裏で儲けること」を教える。
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豆腐屋が「とうふ~は、いらんかね」と叫ぶように「猫ののみ~♪、取りましょういー」と歌うように、昼間から流して歩くと、女房お鈴(大竹しのぶ)が説明。客は夜忙しい女たちだから、()。 
 
甚平衛の案内でとりあえずの寝泊まりにと、長屋に案内され、そこで、土蔵で貧しい子供たちに無償で学問を教えている佐伯友之
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介(斎藤工)に会う。彼も武士で、寛之進と同じように不条理な理由で追われ、浪人して、食わず飲まずで侍の意地を通している。寛之進は殿の命に忠実で、決して友之介を見習おうとする気はない。これがおもしろいところ!
 
寛之進がみなと商売にでるが、声が小さい。() 他のものには客が付くが、寛之進にはつかない。そんなとき二階から寛之進を見た女から注文が入る。部屋に入ると、豪勢な時計などがあって、田沼意次のお妾と想像する。これが亡くした女房の千鶴にそっくり。しかし、女・おみね(寺島しのぶ)はいきなりキスをして、布団に誘い、上に乗り、・・亡くなった女房では体験しなかったもの。() 寺島さんのこれまでの演技からすると子供だまし
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のようなもの。() ここでは、ドラマを楽しむことにする。「旦那がさっぱり御無沙汰。ぼやぼやしないで始めておくれ」に「按摩か?」と応えると「自分だけさっぱりして。ヘタクソ!」と言葉を投げつけられる。()
学問に剣術、侍として積み上げたものは何の役にも立たなかったことにショックを受ける。この悩み、あるある・・・。()
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帰りに、侍にいちゃもんをつけられている商人・清兵衛(豊川悦司)に会う。救ったことで、彼の身の上ばなしを聞くことに。彼は貧しい旗本の子で、小間物問屋「近江屋」に婿入りしたという。彼は遊郭で遊んでの帰りだった。どうしてこうなったかの彼の説明。これがこの作品で一番面白い、秀逸なシーンです。()
女を喜ばせる名人の清兵衛と一緒になった“おちえ“(前田敦子)は、またたくまにそちらの達人になり、あまりのひつこさに岡場所通いになったと。そんなある日、てんぷらを食べて腹を壊し、トイレに入ったが落し紙がなく
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ふんどしで拭いて捨てた。おちえはきっとふんどしをいい女のところに忘れたと勘違いし、これ以来、彼の浮気防止のために股間にうどん粉をまぶすようになったという() これをまじめに演じるあっちゃんに、おかしみを禁じえません。特に声が何とも・・・()
 
清兵衛が頼みごとがあると「明日の宵にうどん粉を持ってきてほしい」という。寛之進はこれを受け入れる代わりに女性の喜ばせ方の指南を申し出る。
 
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水茶屋に上がった清兵衛が、風呂でうどん粉を洗い流し、そこに現れたお仙(飛島凛)と48手を演じる。() これをのぞき見しながら「初めての世界、こんな世界があったか。おれの人生観が変わった」と興奮してつぶやくと、清兵衛がこちらを見て“にたっ”と笑う。()
これを見た寛之進、さっそくおみねに挑む。なんと清兵衛、お仙も加わり・・。() これからは、いろいろな女と修行。なかでも老女・お種(山村紅葉)との一戦は「冥途の土産になった」と感謝される。()
 
清兵衛は、おちえが粉に塩をいれていたことを知らず、いつもの粉をまぶして帰ったところ、彼女に舐められて浮気がバレ、傘一本で放り出されたという。ふたりで猫ののみとりを始める。()
 
友之介が空腹に耐えられず、猫の餌に手を出し、猫に噛まれて発熱。これを知った清兵衛は医者探しに奔走するなかで行方不明に。寛之進は友之介の唯一の財産父親の残した刀を医療費にと医師・宗庵(伊武雅刀)に治療を掛け合う。甲斐あって友之介は回復する。
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おみねと楽しんでいるところに失脚した田沼意次が訪ねてきて、藩主がなぜ自分をのみとりにしたかを聞かされる。なんとか藩に戻り殿を助けねばと思うが北町の周り役人に捕獲され、松平定信が「猫ののみとり」を禁止したと、「人首罪」で木枠に首を挟み川辺に晒される。()
 
ここから、殿のためにと「のみとり」稼業に精をつぎ込んだ寛之進の成長ぶりを見ることになる。甚平衛夫婦、おみね、友之介、そして行方不明の清兵衛が、寛之進のために奔走する。
 
監督は「僕は、帰ったら自分の家で見られるような映画は撮らない。」と言うし、「虎狼の血」(上映中)といい、映画館で観る映画です。( ^)o(^ )
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