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「パンク侍、斬られて候」(2018)

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原作は町田康さんの同名人気小説。未読です。しかし、脚本が宮藤官九郎さんであること。そして、この豪華なキャスト陣に魅せられて観ることに。監督は石井岳龍さん。
 
“超人的剣客”と豪語する浪人が、とある藩に仕官するためにかましたハッタリが引き起こす大騒動の顛末が、奇想天外に描かれています。
現在の世相をモチーフにしたパンクな時代劇で、現代社会の風刺やパロディ満載で、登場人物のキャラクターが、とても身近に感じられる作品でした。()
 
奇妙な風情と卑猥な言葉を放つ普通の時代劇には出てこない侍どもが、奇妙な宗教団体とお猿さん軍団を巻き込んでのとんちんかんなバトルに、わけわからずに笑い、笑い、大笑い。
「マイテイ・ソー バトルロイヤル」(2017)以来の笑いでした。この作品に浅野忠信さん出演でしたが、本作にも出演、圧巻の存在感で、一番バカっぽかった。(笑)

主演は綾野剛さん。共演は、とても豪華で、北川景子東出昌大染谷将太浅野忠信國村隼豊川悦司さんらです。
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物語、
冒頭、異様なコスチュームの浪人・掛十之進(綾野剛)が街道沿いの茶屋の前で巡礼中の男(町田康)をいきなり斬り倒す。この騒ぎに茶屋にいた黒和藩藩士・長岡主馬(近藤公園)がこの蛮行に抗議すると、「この男は災をもたらす“腹ふり党”の者、はやり病のような邪教に犯されている」と応える。

「脅すな!無責任に!」と長岡が斬りかかるが、一撃で刀を叩き落とされ、泣き出す()。これに掛が「自分を雇い入れるよう藩に掛け合え」と求め、「ばかなあいつだ。腹ふりを根絶することなどできん」とつぶやき、斬った男の身体を調べると腹ふり党の印がない。
「問題はこの娘(北川景子)だが、斬らぬ!」と言い捨てて去る。娘は「なに言ってるの!」と密かに復讐を誓う。
 
ここでの殺害現場は、血しぶきを飛び散り、血の雨のようだ。まるで「椿三十郎」(1962)の一シーンが思い出される。尋常な時代劇ではないと感づかせてくれる。物語として体をなしているのは、この冒頭シーンと掛が娘に仇討ちされるラストシーンのみという、奇妙奇天烈な物語の始まりです。()

長岡の取りなしで、藩主(東出昌大)に呼び出された掛。次席家老・大浦主膳(国村準)が、「根絶する策があるのか?」と聞いてくるので「知っているが、理解できないだろう」と応えると、“馬鹿な!と怒り出す。これに掛が、赤い褌の尻を突き出し「斬れ」と迫る。
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これが何とも悩ましい。() このシーン、笑えるかどうか? この作品があなたに合っているかどうかのリトマス紙。()
実は、仕官にやってきた掛の本性を見抜いた筆頭家老・内藤帯刀(豊川悦司)による、次席家老・大浦主膳の失脚を狙った猿芝居だった。
 
大浦は、配下の幕暮孫兵衛(染谷将太)に剣客による掛の刺殺を命じる。依頼したのが真鍋五千郎(村上淳)。幕暮はご丁寧にこのことを掛に知らせるという、現代風ことなかれ主義の男です。
 
掛と真鍋の決闘。ふたりの組んずほぐれつの秘技・人間炬燵!。大きな文字で解説付きで見せてくれます。大笑い!
睾丸稲荷返し!睾丸稲荷返し返し!睾丸稲荷返し返し返し、!!遂に股の匂いを嗅ぐ体位になり、同じ匂いを嗅ぐ。二人は「そこの穴」の出身者、幼馴染だったのです。ここまでくれば、さすがクドカンさんだと感嘆します。() 

内藤の思惑通りに、大浦は猿回し奉行として猿屁高村の猿芝居小屋に赴任。
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これに長岡も従う。ふたりはこの役が気に入って、とても満足するようになる。国村さんの猿回し、猿に人間回しされていることに大笑い!
 
一方、大浦を排斥したが、一向に腹ふり党が現れない。密偵の江下レの魂次(渋川清彦)をもって調査をすると教祖はすでに死刑になっていることが分かる。

腹ふり踊りとは、我々は腹の中のサナダムシ、腹にグルグル巻きの絵(サナダムシ)を描いて、足を半開きにして腰を落とし、はは~んとかうう~んとか叫び腹をふり、おへどとなって外にでることで、新世界を目指すことができるという宗教。()
腹ふり踊りと教祖の死刑シーンが人形劇で描かれ、教祖が首を斬られても踊り続ける姿が笑える。
 
これを聞いた内藤、「それでは俺は失脚だ。腹ふりは存在し、やってくる。銭を与え、腹をふらせよ。インチキだ、インチキ! そもそも腹ふり党じたい、ハナからインチキじゃねえか。お前も俺もインチキだし、この藩だってとっくに終わっている。騙し騙され、やってるんだ」と掛に発破をかける。このおっさん腹が座っていると、掛が「腹ふり党でっち上げプロゼクト」を立ち上げる。

プロゼクトは掛、幕暮、魂次のほかに想像を絶する阿呆だが念動力が使えるオサム(若葉達也)が加わり、妄想の世界に入り、抱腹絶倒する奇想天外な策が実行される。
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ここで、ドラマは現在の日本社会を痛烈に風刺していることが明らかです。日本社会はパンクしている。(笑) 財務省の公文書書き換えや某大学運動部の問題が重なり、登場人物も現実社会のどこにでも居る人に繋がってくる。

まずは、腹ふり党の元幹部・茶山孫兵衛(浅野忠信)を訪ね、協力を説得する。茶山は顔に刺青があり二人の付き人に自分の言葉を代弁させるという、
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めちゃめちゃにカリスマ性のある男。理事長だ!(笑) 彼の指示で、超美人で人を引き込む女・ろん(北川景子)を先頭に、踊り狂う一団が現れる。この一団の踊りが圧巻です。
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魂次は“ろん”にはげしく恋心を抱き、幕暮もあっという間に信者になる。() 掛も一団に駆け寄り、“ろん”の虜になる。こうして腹ふり党は、一気に勢力が膨れ上がり、城に火を掛けるも、藩の勢力では太刀打ちできなくなる。

屁高村で猿回し芸を見て、猿が挨拶しないと怒る頭の硬い黒和藩主。() 突然現れた人間の言葉をしゃべる猿頭・大臼延珍(永瀬正敏)の全国の猿を集めるという言葉を信じ、応援を求める。
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腹ふり党3000人と猿約一億匹が対峙する戦場、このCG映像の圧巻さ、みごとです。これに次ぐ戦闘、どいつもこいつも狂って、オサムの超念力で、天空ではじける猿と腹ふり党。
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奇想天外に思えて、今のネット社会では決して妄想ではないと思え、その結末を知るとき、妄想と現実の差がなくなり、嘘という現実に生きていることに納得です。()
この作品が300館にも及ぶ劇場で上映されていることに驚き、パンクです!!
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