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「ミッドナイト・バス」(2018)

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予告編で、とても美しい映像に魅せられ、観ることにしました。原作は伊吹有喜さんの同名小説。監督は「ジャンプ」の竹下昌男さん。主演は原田泰造さん、共演に山本未來小西真奈美葵わかな七瀬公・長塚京三さんです。当地での公開は6か月遅れですが、観客の多いことに驚きました。
 
東京から故郷の新潟に戻り深夜バスの運転手をする高宮利一(原田泰造)が、16年前に離婚した元妻加賀美雪(山本未來)との再会をきっかけに、離れ離れになった家族の再出発を描くヒューマン・ドラマです。
 
再会したことで、別れたことによる傷を再確認するという切ない作業を通じて、人と人との間の想いをお互いが確かめ会うことの大切さを知ることになります。あの時、もうすこし大人であったらと後悔するなかで、自分の成長をも知るという愛おしい、大人の観る作品です。( ^)o(^ )
人生の機微に触れるすばらしいセリフに出会い、暖かい気持ちになります。
 
この物語には、元夫婦が残した兄怜司と妹彩菜、元妻の父親、利一の愛人が絡み、元夫婦の再出発そして彼ら自身の生き方を模索していくという濃密な人間関係ドラマになっています。157分間のドラマ、あっという間です。
 
彼らが選んだ家族旅行、そこにはこれまでの苦難を乗り越えた絆が存在し、もはや元に戻ることは叶わなかったが、家族の記憶として残り、心のなかに存在し続けるでしょう。美しい光景でした!
「道の先が分かれていても、いつだって、家族はそこにいる」と「長いトンネルを抜けると、あなたがいてくれる」というキャッチコピーが生きています。
 
高宮利一の選択は、ラストで余韻を残して見せてくれましたが、その生き方に納得しました。( ^)o(^ )
 
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物語は、利一が、自らが運転するミッドナイトバスに、付き合って10年になる志穂(小西真奈美)を乗せて池袋を出発し、利一と志穂のこれまでの回想を挟みながら、関越トンネルを抜けるシーンから始まります。トンネルを抜けると、そこは雪。()
 
制服姿で正面を見据えてナイトバスを運転する利一・原田さんはまじめで真っすぐ・嘘のない人に見え、志穂との生活で魅せるやさしさがこれまでに見ることのなかった原田さんで、ナイスなキャスイングでした。
 
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利一の自宅に志穂を連れて帰ると、長男怜司(七瀬公)が二階の部屋に裸で寝ている。東京での仕事を辞めて帰ってきたという。裸で寝ているのは、アレルギーで全身に蕁麻疹ができるため。この蕁麻疹も、両親の離婚に起因する神経性のもの(傷)であるように思えます。
 
志穂は、事情を察して、自製の弁当を残し、東京に帰っていきます。10年間、家族のことを伏せた理由はなんなのか?
しかし、怜司は一目でふたりの関係を見抜き、応援するようになります。その理由は料理が美味いこと。母親に似ていることです。両親の離婚の傷が、こういう形で表現されるところがこの作品の面白さです。
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長女彩菜(葵わかな)が訪ねてきて、兄が寝ているのを確認し、「私は子供のキャラを作っておかなくちゃ!」とアイドルのコスプレで出かける。彼女は東京に憧れた母親と違って、インターネットでウエッブショップを立ち上げ、新潟で自立する夢を持っている。それだけに置き去りにして去った母親に激しい嫌悪感を持っている。ふたりの関係がどう溶かされていくかが見どころです!
 
利一の過去は、あまり語られない。行間を埋める必要があり、これが物語に深みを与えています。
大学を出て、都内の一流会社に就職したが、競争社会に馴染めず新潟に戻ったがふさわしい職はなく、家族を養うためにミッドナイトバス運転手になった。
 
東京での生活を夢見ていた妻は、夫のいない生活のなかで母親と対立し、子供を置いて去ってしまう。
ふたりの子供を男手ひとつで必死に育てた。そこには、田舎で、幼友達でもある妻への、また妻の大学教授である父山辺敬三への贖罪の気持もあったのではないでしょうか。
そんな中で出会ったのが、東京で定食屋を営む志穂でした。
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志穂には離婚歴があるが、これには全く触れられていない。とてもまじめで、自作メニューで店を切り盛りしているが、うまくは行かない。利一に食べさせるために店を開けているようなもの。さほどに、利一の存在を必要としている女。一には奥さんが居ても、自分が忘れられなければいいという。ところが、ふたりが鉢合わせするシーンでは、嫉妬心が露わに出る。面白いですね!
利一が「重い」と感じるのですが、これが本当の愛だと気付き、新たな展開となります。
 
ある夜、利一が池袋を発車させようとするとき、滑り込むように16年前に離婚した妻・美雪が乗り込みます。
新潟に到着すると、ひどく咳き込み苦しむ美雪に水を与え、介抱して帰宅すると、美雪から「会いたい」という電話が入る。
「父敬三(長塚恭三)が交通事故で入院中。その介護にやってきた。母親はなくなりマンションを処分して父を養護施設に送るつもりだ」と話す。子供のことを聞かない。彼女にはこれが大きなトラウマになっている。再婚し、8歳の女の子がいるという。
夫は博多に転勤し、女がいるらしい。自分の感情が抑えられないとよく泣く。
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ここでの未来さんの醸し出す雰囲気が完璧で、別れた夫利一が、いつまでたっても忘れられないのがわかります!
 
こんな美雪に利一のやさしさが動き始める。怜司に、時に痴ほうに襲われるお爺ちゃんの様子を見に行かせ、美雪とちょいちょい会うようになる。話し合いもせず別れたふたりの心が、彩菜の婚約に母親のいないことが悪い影が落しはじめ、近づき始める。
美雪が、あれほど憎み合った義母の仏前に、線香を手向けるようになる。そして、実母の形見の着物地を彩菜に渡す。
 
遂に、利一が志穂に「別れ」を告げます。これで、志穂は店を閉じてしまう。
 
しかし、頑として美雪を母と認めない彩菜の気持ちを知り、ふたりは苦しむ。
こんな折に、敬三を病院に訪ねると「美雪は糸の切れたような女だ。東京に憧れていたんだ。孫の怜司は君に似てやさしい男だが、昔の君に似て弱いところがある。病院の窓からナイトバスを見ると君を思い出す。渡り鳥は群れで慰労するが、白鳥は家族で移動する。なんで人間が家族で生活出来ないのかな!」と責められる。
 
マンションが売れ、ふたりで整理して、会うのもこれが最後という時に、美雪が「私の好きなところはなにも変わっていない。思い出のために抱いて欲しい」と言い出す。利一は「本気で亭主と別れることができるのか。俺は志穂と分かれた!」と問います。ふたりはお互いの気持ちをぶつけ合い、昔はできなかった、相手の気持ちを確認します。
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美雪は、別れたというが、利一の心に志穂がいることをしっかり確認し、別れの思い出にかっての家族で佐渡に旅行することにします。
 
奇跡のような再会から数か月が過ぎ、小雪が舞う中を美雪は利一に見送られ、東京行きのナイトバスに乗る。
ひとりになった利一は、孤独を知り、志穂のことを思い出し号泣する。そして、利一が志穂が働くワイナリーを訪れると、そこにはかってふたりで可愛がった柴犬オイデが迎えてくれます。さて、このオイデ、かってのようにうまくふたりをつないでくれますかね。( ^)o(^ )
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