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「きみの鳥はうたえる」(2018)

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原作は佐藤泰志さんの同名小説。芥川賞の候補となった作品、未読です
監督は三宅唱さん。初めての監督作品になります。主演は柄本佑さん、共演に石橋静河さんと染谷将太です。
佐藤さんの映画化作品には惹かれますが、なんといっても若い3人の演技に注目、特に柄本佑さんのお勧めコメントに偽りはないと観ることにしました。()
 
函館郊外の書店で働く「僕」(柄本佑)は、失業中の静雄(染谷将太)と小さなアパートで一緒に暮らしていた。そんな中、ふとしたきっかけで同僚の佐知子(石橋静河)が加わり、毎日が酒、ゲームで気儘に青春を謳歌するが、三人の関係が変化しはじめ、遂に決定的な瞬間が訪れ、僕と佐和子は・・・。
 
テーマはタイトル「きみの鳥はうたえる」です。この意味が全くわからない。() 
しかし、ラストシーンがあまりにも秀逸で、わかったと思える作品でした。(^)o(^ )
己の足らざるものに気付き、モラトリアムから一歩踏み出したように思われ、そこに自分の青春の想いが重なり、感慨深いものがありました。
 
どこかに嘘をついて生きている三人。その嘘が、ともに生活することで剥がれていく。これを演じる柄本さん、染谷さん、石橋さんの演技がすばらしい!
 
柄本さんの、いい加減で、行き当たりばったりで、時として暴力を振るう。だが、裏表がなくて、物へのこだわりも少なく、妙な楽天性がある僕の生活ぶりは、演じているというより生きている演技でした。なんでこんな男に佐知子が惚れるのかがわからない!() 
 
染谷さんは、家族に悩みを持ち将来に夢を持てない、気が弱く何事にも一歩引いて生きるという静雄の不安・やさしさ・誠実さを薄い笑みで見せる演技がリアルです。
 
石橋さんは、透明感があって行動力がある、このままでは若さが無くなると焦る佐知子、唄って、踊って見せる笑顔そして時に不安顔という感情変化。ラストシーンで見せる表情がすばらしい。初出演作「夜空はいつでも最高密度の青色だ」(2017)から、大きく育ったなと感じる演技でした。
 
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一緒に暮らしている静雄は金がいると兄貴に会いにゆき、僕は仕事を休んで函館の下町を彷徨していて、店長(荻原聖人)と一緒の佐和子に出会う。店長が「ずる休みするな!」と嫌みを言って去ってゆく。佐和子が、僕に肘をあて、店長を追う。
ここでの、生気を失って彷徨する柄本さんの姿がなんともリアルです!
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彼女は、きっと戻ってくると、カウントを始め、120で現れなかったら諦めようと思っていたら118で戻ってきた。喫茶店で会う約束をするが、すっぽかして静雄と明け方まで飲む。
静雄は兄と会うと言いながら、実は母親(渡辺真起子)に会い、お金をせびられていた。僕に嘘ついてでも今の生活を続けたいらしい。
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次の日、僕は佐和子とファミレスで飯を食う。余ったパンをどうぞと寄こし、食べると嬉しそうにする。
佐和子は、店ではてきぱきと仕事をこなし、なんでこんな風来坊のような僕に関心があるのかわからない。しかし、男女の仲なんてこんなことはよくあります。()
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佐和子を連れてアパートに帰り、なんとなくその雰囲気になって、「おまえゴム持っているか」と、彼女が差し出すゴムで・・・。なんとも相手のことを考えない僕でしたが、佐和子はここでも嬉しそう。
 
そこに、静雄が戻ってくるが、部屋の中の様子に気付き、ことが終わるまで外をぶらついている。なんとも不思議な僕と静雄の関係。()
 
静雄が部屋に入り、三人が打ち解けて談笑。静雄と佐和子の会話に嫉妬する僕。だけど、そのそぶりを見せない。
 
三人でコンビニに買い物。静雄と佐和子で買い物。僕は自分のものだけ買う。支払いは佐和子。
家に戻って、酒飲んで僕がうとうとしているとき、静雄は佐和子を映画に誘う。目覚めると、佐和子が静雄君に誘われたというから、行っていいと返事をする。僕は、自分が傷つきたくないので本心は見せない。夜半、佐和子が家に帰るとき、路面電車まで送りキスをする。
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三人は、僕の仕事が終われば朝まで酒飲んで、ビリヤード、卓球、ゲーム、クラブで遊ぶ。
クラブの三人、激しく鳴り響くバックミユージックに合わせ、飲んで、歌い、踊る。先ずは佐和子、これに僕、そして見ていた静雄が加わり、三人がわけわからん状態になる。彼らにとってのキラキラ輝く一瞬の至福のとき
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店を出て、家に帰ると静雄がいない。「気にすることはない」と僕は佐和子を抱く。静雄は友人の帽子職人を訪ねていた。
 
次の日、僕は店で同僚の森口(足立智充)とトラブルを起こし彼を殴った。帰宅した佐和子に、なにがあったかと聞かれるが返事しない。すると佐和子が、
「静雄君は自分と店長の関係を知っているのかな?」
「知るわけない」
「店長と話しをつける」
「どうでもいいんじゃない。自然消滅するだろう」と生返事する。
 
こんなことがあってか、店長が僕を呼び止め「俺は3年前に離婚している。佐知子を大切にしてくれ」という。
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佐和子は店長と話し終え、携帯で静雄を呼び出し、僕と静雄の関係を聞いてから、ふたりはカラオケ店で遊んで、夜遅く帰ってきた。僕は寝ていた。
 
その日、僕は店で森口が佐和子を侮辱したと思って、彼を激しく殴った。
 
こうして、僕たち3人のなかに緊張感が流れ始めた。
 
こんななかで、僕は静雄が言い出したピクニックを断り、静雄と佐和子がピクニックに出かける。
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僕は、ひとりで町を彷徨していて佐和子に電話しようとしたとき、突然現れた森口にこん棒で激しく殴られ受傷。家で寝ていると、そこに静雄の母が訪ねてきた。静雄が母のことを僕に隠していたことを知った。
 
僕が会社から家に戻ると、静雄と佐和子がピクニックから帰っており、静雄が母の急病で明日帰るという。夜三人でゲームをするが、僕はふたりとの関係が薄くなったように感じた。
 
朝、静雄に自分の上着を着せ、彼を佐和子と一緒に函館駅で見送った。
 
母を見舞った静雄は、母には大きな障害が残っていることを知り、いつまでここにいるかわからないとしながら、三人で臭いだ函館の匂いは思い出せないという。
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静雄を見送ったあと、佐和子が「静雄と恋人として付き合うことにした」という。僕は「ふたりを見ていればわかる」と返事すると、佐和子が「いろいろ不安だったから」という。「ふたりがうまく行けばいいと思っていた。静雄が帰ると静雄を通して新しい空気が吸えるよ」と言うと、別れ際に、僕に肘を当てて去って行く。
 
僕は去っていく佐和子をながら、1、2、3、と数えて、120までに佐和子は戻ってくるかと思ったが、それが待てなかった! 「好きだ!」と叫ぶと佐和子が振り向き、その顔には、・・・という表情があった。
 
やっと僕が“何が大切か”に気付いたシーン、秀逸でした。僕と佐和子はどうなったのか、いろいろ考えられ、いまだ答えがみつかりません。( ^)o(^ )
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