厳しい寒さと飢餓のなかで次男を育てた母は、将来のためにと次男を手放したが、15年の時を経て成長した次男に再会し、家族の絆を取り戻すという約30年にわたる家族の物語。
当時日本にはなじみのないコンビニ・ビジネスを始めるが、その先行は読めない。妻もまだ日本に馴染めない。15年ぶり再会した母(吉永小百合)は痴呆症だと知った次男は、仕事と妻を一時置いて、母の失われた記憶を呼び戻そうと北へ北へと旅をする。
そこには、終戦直後の苦しい生活のなかで大きな犠牲を払って育ててくれた母への“母を見捨てられない”という想いがあった。
ここで描かれる母が経験した苦しみが、本作のひとつのテーマです。今では忘れ去られようとしている戦争の記憶をしっかり残しておく必要があります。
劇画を使って、出来るだけ多くのエピソードを描いたのはよかったと思います。樺太での看護師の集団自決、真岡郵便局の電話交換手の集団自決など忘れてはならない。まさに今、北方領土返還が政治問題化しており、時機を得た作品です。
戦後の生活苦。闇米の運搬で金を稼ぎそのおこぼれの米で生きる生活。畑の野菜を盗んで飢えを凌ぐ。厳寒のなかでソリを曳いて生活費をつくる。
そのなかでも、戦場に出た夫の遺骸が石ころになって戻ったというシーン。妻は夫の死が信じられない。母親は死ぬまで夫の死を信じませんでした。遺体を遺族に戻せないような戦は絶対にしてはならないと問うています。
夫が成長を楽しみにしていた桜と店の表札を守り通し、訪ねてきた次男を夫と見間違え、「あなた、お帰りなさい。桜は立派に咲きました」と微笑む母親。
記念作であるだけに、吉永さんからのメッセージが籠った作品でした。( ^)o(^ )
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