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第6回「お江戸日本橋」

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あらすじ:
オリンピックに送るに足るだけの選手を見つけて喜ぶ治五郎(役所広司)だったが、派遣経費が莫大で頭を抱える。おまけにマラソンを制した四三(中村勘三郎)は、負ければ腹切りかと恐縮し、短距離の覇者・弥彦(生田斗真)は帝大後の進路を考えたいと出場を断る。
そんなふたりに治五郎は「黎明の鐘」になれと熱弁する。そのころ、若き日の志ん生こと孝蔵(森山未来)も師匠・橘家円喬(松尾スズキ)に、車夫ならば落語に登場する東京の街並みを足で覚えながら芸を磨けとヒントをもらい、東京の“へそ”日本橋界隈をひたはしる。
 
今回から世界を目指す“いだてん”の話が始まります。
今日は夢を追う人がテーマですばらしかったです!
四三と孝蔵が夢を追い、お江戸日本橋で交差するという映像のなんと美しいことか。夢はこんなに甘いものかとうっとりです。これを落語「富久」に絡めて四三と孝蔵の夢がここで交差するというクドカンさんの発想も凄い!
この美しい日本橋は残しておくべきでしたね!
オリンピック参加に夢を賭ける、治五郎、四三、播磨屋の辛作(ピエール瀧)。そして落語に夢を託す孝蔵。近代に生きた男たちだけに彼らの苦労・努力がストレートに身に入ってくる感じで、忘れていた大切なものを思い出させてくれます。すばらしいドラマ、大河です!! 
 
四三は本格的にオリンピックを目指し練習を始める。これまで走り方、呼吸法、食べ物、衣類と自分の身体で確認しながら改善を繰り返し、いまだ解決できないのが足袋。しかし強力な助っ人が登場、播磨屋の辛作が四三の夢に足袋職人の意地を賭けて改善に乗り出すという。さながらドラマ「陸王」の“こはぜ屋“と茂木の関係になりましたね。() 
 
一方、円喬の弟子になった孝蔵。車屋になり、車で稽古する円喬の落語「富久」を聞き、「富久」に登場する久蔵の足取りをたどり、身体で落語をものにしていく辛抱の修練。ここは感動でした!!
 
治五郎のオリンピックに賭ける夢への執念、そして辛亥革命で国からの送金が絶える清の留学生の学資を全額持つという太っ腹。このために繰り返す借金の山。痛快な男の生き様を見せてくれました。
役所さんの能天気な治五郎に癒され、これに合わせる古舘さんとのコンビが面白い。()
 
弥彦は今だ夢を見いだせない人。兄や母、世間が勧める人生を選ぶか、自分の好きなスポーツに夢を託すか。時代を読む彼の目は確かなので次回に期待です。
 
四三のオリンピック参加資金。うまい治五郎の口車に乗せられて「はい」と小さな声で返事して兄実次に無心したが、心配ですね!! 役所さんと勘九郎さんの掛け合い芝居に笑いました。
 
忘れていました!今回出番のなかったスヤ(綾瀬はるか)さんのこと!()
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四三は播磨屋に足袋の不平を言ったことを詫びに出かけるが二の足を踏んでいると、そこにちょうど清さんがやってきて、怖い辛作の前に立つことに。
四三が文句ばかり言ったことを謝ると、ぽんと足袋を投げてよこす。なんと足袋の底は三枚の布が張り付けてあった。
四三は早速この足袋を履いて四三は走ると、いい感触で楽しい。
 
明治4412月、予選会が終わって1か月。治五郎は校長室に可児(古舘寛治)、永井(杉本哲太)、大森夫妻(竹野内豊、シャーロット・ケイト・フォックス)を集め、オリンピック出場者選抜の会議を開いた。
ラソンで優勝した四三と2、3位の選手、さらに短距離の弥彦と明石という選手の5名を指定したいが、5人分で5000円もの経費が必要で、この工面をどうするか。さらに四三の世界記録に疑問が持たれていた。
 
治五郎は何としてもオリンピックに参加し、日本選手の実力を見せたいとして派遣選手は弥彦と四三とし、経費について弥彦は自腹、四三については滞在費と渡航費のみを用立てると決めた。
 
ところが、治五郎が四三を校長室に呼んでオリンピック選手に選ばれたことを伝えると「行きたくない」と言い、「オリンピックって何ですか」と問うてくる。
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治五郎は「平和の祭りだ!言葉も、文化も、思想も違う国の若者が、お互いを認め合い、技を競い合うんだ」と説く。四三の答えは「国民は勝ちを望む、負けたら切腹。それだけはお許しを!」。
治五郎は「がっかりだ!」としょげ返る
 
治五郎は三島邸を訪ね、弥彦に参加を促すが、「今年は帝国大学を卒業の年。駆けっこしていたら落第します。そう文部省のお偉いさんが言っています」と参加を断る。
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そんな折に清国で「辛亥革命」が勃発。清国からの留学生100人余への資金援助が途絶えることになった。
羽田競技場の整備の映像に弁髪の人たちが入っていたことを想い出し、この史実に驚きました。
治五郎は「戻ったら君たちの身に危険が及ぶ。祖国の未来のために私のところに来た。学費は心配するな。全額、私が負担する」と彼らの学費を引き受け、数億円を借金することになり、生涯返済できなかった。
しかし、貸す人がいるから凄い。この時代のエネルギーを感じます!
 
その後、四三は予選会の優勝カップの返却に校長室を訪れると、嘉納校長がオリンピック参加の説得を始めた。
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「我が国の運動競技は欧米各国に比べ劣っている。マラソンこそ、その活路があるというのが体協の総意だ。学生が先頭にたって、国民の体育熱を煽るのだ。日本人とて、世界で通用するのだと、奮い立たせるのだ。負けても切腹せんでもいい」。
そして勝海舟がチョン髷姿で米国に渡航して笑われたという写真を見せ、「最初は辛い、しかし誰かがその任を追わねばならない。誰かが捨て石にならねばならない。この機会を逃したら4年後だ。君しかおらんのだ」と土下座して説得した。この説得はよかった!
 
四三はこの言葉に感動し小さなこえで「行きます」「オリンピックに行き、最善を尽くします」と返事すると。「ところで・・」という。
渡航費と滞在費を君が出すということでどうだ!これなら負けたら切腹という必要はない。勝とうが負けようが勝手だ!」。治五郎の参加経費の話を持ち出すタイミングが絶妙だった。()
 
宿舎に戻り、ストックホルムについて調べていると、可児(古舘寛治)から「1800円は必要だろう」と聞かされる。
四三は、兄は怒るだろうと思うが、1年ぶりにこの金の工面を兄・実次(中村獅童)に依頼する手紙を書いた。投函するとき迷ったが、小僧の勝蔵に押されて、投函できた。()
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昭和301960)年、田畑(阿部サダオ)が知事の東竜太郎(松重豊)とタクシーで日本橋付近を走っていて、工事渋滞にいら立っているときに、志ん生の落語が聞こえてくる。円喬の思い出を語っていた・・・
 
その頃、孝蔵は円喬を車に乗せて走っていると「好きな噺はなんだ?」と聞き、「富久」を語り始めた。
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「浅草安倍川町に、幇間の久蔵という男がいて、人間はまじめだが、酒癖が悪いのが玉に傷」と稽古しながら、「耳で覚えてもだめだ。噺は脚で覚えるんだ。おまえさん何のために毎日、日本橋と浅草、行ったり来たりしているんだ」と聞く。
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「この意味はすぐには分からなかったが、日本橋から浅草まで実際に歩いて見なければ、落語の中の人物のことは分からないと教えてくれていたことに気付いた。日本橋から浅草と走りながら背中で聞いた。弟子は背中で聞くもんだ」と志ん生が五りん(神木隆之介)に教えるが、「そんなファンタジーな落語はどうでもいい、オリンピック噺がいい」という。苦労の仕方を知らない!!()
 
四三は足袋の修理に播磨屋を訪ねると、清さんがいて、走るコースをいろいろ教えてくれる。コース案内の当時の風景がすばらしっかた!
辛作が「オリンピック本番と似た所を走ったら」と勧める。永井から聞いたストックホルムの話をすると、水辺と石畳なら日本橋だという。コースは決まったと四三は走り始めた。
 
同じコースを孝蔵も落語「富久」をしゃべりながら車を曳いて走っていた。未来さんの喋りがすばらしい。
 
志ん生が五りんに「富久」のおち「これも大神宮様のおかげです。これで方々に『おはらい』ができます」と聞かせるが分からない。かわりに知恵(川栄李奈)が「御祓いと借金の支払いを掛けたね」と回答する。出来の悪い弟子ですね!
 
五りんが「面白くない。父の葉書に師匠の「富久」は絶品といっていた」というと、志ん生は「満州で喋ったことはない。新橋か芝か調べろ」という。
 
一方、志ん生の落語を聞いていた田畑たちは、「何で日本橋から芝まで走るのか、志ん生が勝手に伸ばしたんだ。そんなに走るバカいないから」と話していると、走っているやつがいる。(笑)
 
志ん生の落語は続く・・走るバカがいたんですね!
四三は東京高師の宿舎があるお茶の水から上野を通って浅草、そこから蔵前を通って日本橋に抜け芝へというコースが良いと清さんが勧めてくれた。四三はこのコースを毎日昼も夜も走り続けた。一方、孝蔵も、円喬を乗せて浅草、上野、日本橋と寄席を回っていた。
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ふたりはお互いに、熱き想いを胸に走り続けていた。
 
四三の手紙が兄実次の手に届いた。さあ、どうなるんでしょうか。
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記事 20190212
「いだてん」第6話9・9%、大河史上“最速”で1桁に陥落

記事 20190215
「確信犯的異色作」としての大河ドラマ「いだてん」
「いだてん」は、大河で扱われるには馴染(なじ)みのない時代、知らない人物、そしてマニアックな俳優という、異例づくしの作品なのです。
時代劇ではないことを知った段階で、今年はパスすると決めた視聴者も少なくなかったと思います。若い視聴者の新規参入を計算しても、高視聴率を期待できるものではなかったはずです。 
では、「いだてん」の価値はどこにあるのか。それは、良くも悪くも(笑)「ニュータイプの大河」が楽しめることに尽きます。
この「確信犯的異色作」、もしかしたら大河ドラマの可能性を広げる、画期的な1本になるかもしれません。もう少し長い目で見ていきたいものです。
そういえば、常に「確信犯的異端者」だった芸術家、岡本太郎がかつてこんなことを言っていました。
「日本人に今もし欠けているものがあるとすれば、ベラボウさだ。チャッカリや勤勉はもう十分なのだから、ここらで底抜けなおおらかさ、失敗したって面白いじゃないかといういくらい、スットン狂にぬけぬけした魅力を発揮してみたい。
「いだてん」が、ベラボウな大河ドラマであることは確かです。
                       上智大学文学部新聞学科教授;碓井広義
https://news.yahoo.co.jp/byline/usuihiroyoshi/20190215-00114863/