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「ブラック・クランズマン」(2018)

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今年度アカデミー賞作品賞6部門にノミネートされ、見事脚色賞を受賞した作品。「グリーンブック」が作品賞を獲得後、スパイク・リー監督が退室しようとして一悶着あったという作品。楽しみにしておりました。
 
1979年のコロラドスプリングスを舞台に、街で唯一採用された黒人刑事が、白人至上主義団体〈KKK〉に潜入し、彼らの暴動計画を阻止したという事実を描いた、とてもサスペンスフルでユーモア(アイロニー)のある作品です。
 
監督が何故激昂したかが分かる作品でした。脚色賞受賞の壇上で「祖先の皆さんに、そしてこの国を作りあげたすべての人たちにここで賞賛を贈ります」とスピーチし、最後に自身の監督作「ドゥ・ザ・ライト・シング」のタイトルを用いて、「共に歴史を正しい方向に導いていこう。レッツ・ドゥ・ザ・ライト・シング!」と締めました。
 
監督のスピーチ通り、最近の極右翌化、左翼化に厳しく釘を刺し、「真のアメリカ人とは」を問うという、とても大きなテーマ性のある作品。星条旗の色が消えるラストシーンが印象的で、ここまで言うかという監督の想いの籠った作品でした。
 
主演はデンゼル・ワシントンの息子ジョン・デヴィッド・ワシントンと「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」「パターソン」のアダム・ドライヴァー。共演はローラ・ハリアートファー・グレイス、ヤスペル・ペーコネン、コーリー・ホーキンズらです。
 
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黒人刑事が白人至上主義団体(KKK)に潜入捜査といっても、実は仕掛けがあって、KKKとの電話交渉が黒人刑事ロン・ストールワース(ジョン・デビッド・ワシントン)が担当。潜入するのがユダヤ人フリップ・ジマーマン(アダム・ドライバー)というわけです。KKKを騙し透かして任務を達成する様は、ヒヤヒヤドキドキで笑えます。
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ロンは現場に出たくて警官になったが資料係でうんざりしているところに、黒人学生組織の集会にブラックパンサーのリーダー:マイケル(コーリー・ホーキンズ)が参加するので、その集会をレポートする役割が回ってきた。盗聴器を付けて、黒人学生組織会長のパトリス(ローラ・ハリアー)に言い寄り潜入に成功する。
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そこで聞くマイケルの「黒人の美学を示せ!」に、こともあろうか興奮して、腕を突き上げた。マイケルの演説は熱が籠ったもので興奮しますね!() ロンは、こういう気持ちをもって警官になり、市民の治安維持に当たっているところが面白い。市民が彼に命を守ってもらっているところが何とも皮肉です。
 
このあとKKK会員募集広告を見て電話で応募し、彼の黒人嫌いの話に相手が気に入って「会いに来い」という。
 
警察はKKKの情報収集のために、彼が言う「フェルックスとふたりでやれば安全」という案に乗ることにする。
 
ロンは黒人と白人の両者に発音が出来るが、相棒となるフリップに訛りがある。懸命に特訓して、アジトに潜入させる。このふたりの掛け合い芝居が面白いです!
 
やってきたフリップを会員にするかどうかを見極めるのがKKK会員のフェリックス(ヤスペル・ペーコネン)。黒人への嫌悪感はいいがユダヤ臭い。フェルックスが「ホロコストは全部嘘だ」とユダヤをこき下ろす。これにフリップは耐えられず、「ホロコストはあった」と言っちゃった。盗聴器でこれを聞いたロンが救出に向かうと、ロンにフリップが発砲。これでフリップは見込まれて会員資格を得た。
 
フリップはこれまで白人と思って過ごしていたが、この件でKKKを憎むようになる。彼もロンと同じように差別されながら、警官として市民を守っている。長い歴史のなかで勝ち取ってきた人権運動の成果です。しかるに、KKKの再登場は歴史に反する行動。これをなんとか止めたいというのが本作。
 
ロンは電話で巧みに、KKKの親分で政治家になってホワイトハウスに入るというデューク (トファー・グレイス)に会員証を発行してもらい、「ぜひ会いたい」と言わせるほどに話巧みに近づく。()
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フリップは、組織のなかで、射撃も上手いし、集会準備にも警戒員として力を奮い、支部の代表者に押され、大規模な爆破計画があることを知る。
 
集会にデユークが参加することになり、その際にロンに会いたいという連絡があった。
ロンはパトリスに「やめとけ」と諭すが、彼女は無視してKKKの集会に合わせて学生集会を計画。ロンは自分の身分を明かさず、パロリスには常に過激にならないように注意している。
 
集会の当日。この作品でのもっとも面白いところ。デユークの警護をロンが担当することになる。これは皮肉ですね! 学生たちも集会を開き、これに歴戦の差別撤廃運動家クワメ・トゥーレが参加。そして、フェリックスは妻コニー(アシュリー・アトキンス)に爆薬を持たせ爆破事件を企む。
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フリップは潜入捜査官ではいのか?ロンは何者か?と疑う者が出る、コニーはいつ行動するかと緊張で一杯になる。
 
集会はイニシエーションが始まり、デユークがフリップに「君はユダヤではない。ロン、進んで白人のために尽くせ!」と声を掛けると「はい、“米国人”です」という。()
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そして、「国民の英雄」(1915)というKKKによる黒人リンチを賛歌する映画を観て、「ホワイトパワー、ホワイトパワー」と気勢を挙げる。
一方、学生たちはクワメ・トゥーレの白人を吊るした話を聞き「ブラックパワー、ブラックパワー」とこれまた気勢を上げる。この映像が交互に繰り返され、どちらに正義があるかを問うている。どちらも・・・。
 
このような状況のなかで、コニーが消え、これを追うロン。コニーはパトリスおアパートを爆破しようとしたがかなわず路上駐車の車を爆破。彼女を取り押さえるロン。集まった警官は、ロンを捕まえ手錠をかける。() 
 
KKKの暴発をあまりにも鮮やかに阻止したことで、警察の捜査予算が削られ、ロンとフリップは捜査任務を解かれる。()
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ロンがパトリスに会って、捜査の任を解かれたが警察官は辞めないと話していると誰かがドアーをノックする。ふたりは拳銃をもって、長い廊下を通って外に出ると、そこではKKKが火を焚き気勢を上げており、やがて2017812日に発生したバージニアでの白人至上主義者やネオナチの集会に抗議した女性が殺された事件が映し出され、トランプ大統領の「双方に責任がある」と白人至上主義者と抗議者を同一視し、差別主義者を「擁護」したとみられるコメントでエンデイングを迎える。
 
監督のアカデミー賞受賞式での態度は大人気ない、この態度こそが偏見。しかし、「昔の歴史に戻ってはいかん、前に進もう」という監督の勇気ある作品には敬意を表します!
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