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第16回「ベルリンの壁」

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1914年、教員になる道を捨て、足袋の播磨屋に居候しながらプロフェッショナルのランナーとしてベルリンオリンピックを目指し始めた四三(中村勘九郎)。野口(永山絢斗)や徒歩部の後輩と共に、水しぶき走法など、より過酷な状況でも走り続ける修行に励む。」そのころ、旅の師匠・小円朝(八十田勇一)に一座を追い出された孝蔵(森山未来)は、無銭飲食をして警察に逮捕される。獄中で偶然目にしたのは円喬(松尾スズキ)死亡の記事。牢名主(マキタスポーツ)に芸を見せろと挑発されながら、孝蔵は円喬に教わった噺をこん身の力で披露。師匠との悲しすぎる別れが、彼を噺家として奮い立たせる。
四三が練習に打ち込む一方で、ヨーロッパでは第一次世界大戦の規模が拡大していた。
感想:
円喬は自分の寿命を知って、自分で育てることができないと孝蔵を小円朝に託したんですね。涙が出ます。
車を引かせ練習するふりをして孝蔵に教え、孝蔵の酔っぱらって語る落語にフラがあると思いながら、自分で鍛えること出来なかった無念さが伝わってきます。とてもいいドラマになっています。
 
そんな師匠の想いも分からず、飲んで打って自分流に過ごす孝蔵も、小円朝に追い出され食えなくなって、無銭飲食で捕まって入れられた牢で恵んでもらったたった一本のバナナで、人の情けに気付いた。人は落ちるところまで落ちないと、ひとりでは生きていけないことに気付かない。“客をどう楽しませるのか”と、やっと孝蔵も一皮むけましたね!森山さんの落語、今回はしっかり聞かせてくれ、見事でした。
 
四三は、恵まれすぎほどに皆に支えられて、マラソン三昧の毎日。ベルリンオリンピックを目指して練習し記録的な成果が出たが、第一次世界大戦でオリンピックは中止になる。
走る目的を失った四三が、これからどこに進んでいくのか。自分の人生をどう考えるのか。これからが勝負、見守りたいと思います。
スヤが訪ねてきても追い返してマラソンに励む四三。これからのふたりの生き方にも注目です。
 
シマが弥彦の言葉に押されて東京女子高等師範に入りスポーツをすると女給をしながら勉学中。こうして、市民がスポーツに目覚め、スポーツが人生の中で大きな役割を演じるという、天狗倶楽部からの大きな脱皮が描かれそうです。
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大正31914)年春、マラソン一本で生きると決めた四三は、寄宿舎を出て、播磨屋の二階に下宿することにした。
辛作(三宅弘城)は、家賃は払えるときだけでいいという。というのは、「金栗四三選手愛用マラソン足袋」が人気商品となり、職人を増やさねばならないほど繁盛していた。
三宅さんの演技、全く違和感なしです。期待しています。
 
四三はさらに足袋の改造を頼むと、辛作は、本来の足袋から遠ざかると思いながら、試作品を作ると約束した。
 
母とスヤから仕送りをしてもらい、治五郎(役所広司)の好意で、四三は高師の研究科に籍を置き時折体協に顔を出すほかは、しっかり食べて練習に打ち込んでいた。
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この頃、ドサ回りの一座を首になった孝蔵は、万朝(柄本時生)とともに新居町の宿屋にいた。飲まず食わずここにたどりつき食事にありつき酒も頼んで、金のないことに気付いた。孝蔵は心配するなと万朝をなだめそのまま寝た。翌日、朝早く万朝を出発させ、残った孝蔵は朝飯を済ませて金がないと女中に話す。() 女中は「先に出た人があとの人が払うと言った」という。
孝蔵は東京に戻れば仕事があるからあとで金を送るというが、警察に突き出され浜松の留置場に世話になることになった。
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そこで、牢名主(マキタスポーツ)が被って寝ていた新聞で円喬の死を知り、この世でたった一人自分を認めてくれた人を失った悲しみで、孝蔵は泣いた。
 
ある朝、目覚めた四三が二階のベランダで冷水浴の準備をしていると、向かいの家の二階の窓から若い娘が顔を見せた。なんとシマ(杉咲花)だった。
この家に下宿してミルクホールで働きながら、東京女子高等師範を目指し勉強しているという。
 
四三は、治五郎、可児と三人でシマの勤めるミルクホールに出かけた。シマが「いずれ日本も西洋のようにスポーツが盛んになる」という弥彦の言葉に押されて心が決まったという。
治五郎が、IOCから届いたばかりのカードを見せ「IOC20周年を記念して、クーベルタンが考案した、5大陸の結合と連帯を意味する五輪のマークだ。アジアも入っている。君よ弥彦君の功績だ」。
そして、「サラエボ事件をきっかけに欧州は戦乱に巻き込まれているが、短期で終わる。ここで日本が欠けるとワッカがひとつ欠ける。君の脚にかかっている」と金栗が励まされた。
 
留置場の孝蔵は、牢名主にバナナを恵んでもらった礼に、円喬(松尾スズキ)の十八番「文七元結」、身投げをしようとしていた赤の他人を放っておけず、大きな金をあげてしまう噺をしていたが、おちまで行かないうちに名主は寝てしまう。起こしてどこがいけないのか聞くと、「下げはよかった。しかし、そんな長い話、つっかえずよく出来るな」という。「面白かったか?」と聞くと「面白くない」と。勝鬨亭の庄吉が同じことを言ったのを思い出した。
 
浜松では、孝蔵が捕まったと知ったちいちゃん(片山萌美)が、八百庄に駆け込んでいた。政治の兄の庄吉に、孝蔵の身柄引受人になって欲しいと頼む。しかし、庄吉は政治が下痢と腹痛で寝込んでいてそれどころでないという。
政治は毎年夏に浜名湖で行われる遠泳大会に備えて練習していて、具合が悪くなったらしい。
医者は慢性盲腸炎と大腸カタルを併発しているので水泳を止めさせるようにいう。
 
孝蔵が「何が悪い」と聞くと「お前にはおかしなところがある。バナナを食べているところは面白い。そのくせ、肝心の噺になるとそれが消える。ボソボソ喋っているだけでつまらない。面白い話は面白そうにやれ!」という。「そんな臭せえ演技は」と反発すると、「臭いかどうかは客が決める」と言われる。
もう一度「文七元結」を語り出すと、だんだんと興が乗ってきて、いつしか円喬の「文七元結」を思い浮べながら喋っていた。孝蔵・森山未来さんと円喬・松尾スズキさんの喋りがダブり、森山さんの喋りがだんだんと銚子ずいてくる演出はとてもよかった。
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喋り終わった孝蔵は髪を切り落とし、こざっぱりとしたなりで勝鬨亭に行き、小円朝に「ご恩は決して忘れません。今日からまたお世話になります」と頭を下げ高座に上がった。客がよく笑い、一皮むけた演技になっていた。一方、四三は真夏にふんどしひとつで浅瀬を走る「水しぶき走法」で脚に力をつけていた。
 
この年の秋、四三はスヤと幾江(大竹しのぶ)に陸軍戸山学校で行われた競技大会で「水しぶき走法」により、2時間1930秒という驚異的な世界記録を出したことを手紙で知らせた。
スヤは新聞に載っていた「世界の速いもののなかに四三の走りが9位に入っていた」と喜び、「正月は帰れるか」と尋ねると、「一日も無駄に出来ない。写真を送ってください」と返事が帰ってきた。
幾江にどうしたもんかと聞くと、「自転車節たい。あの山越えて、行ったらよか」。
 
大正41915)年、英国留学を終えてトクヨ(寺島のぶ)が東京高師を訪れ、体協の理事たちに帰国報告をした。
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この日、治五郎はオリンピック予選の詳細を決めねばと息込んでいたが、永井(杉本哲太)や岸(岩松了)は予算不足(ストックフォルムの10倍)と前回の惨敗を理由に反対する。
岸がトクヨに「オリンピックの選手を参加すべきかどうか」と聞くと、即座に「そんな議論は意味がない。欧州は第一次世界大戦の真っただなかで、オリンピックなど開催できる状態にない。ましてドイツは敵国、選手になにかあったら」と答えた。
治五郎が「関係ない、長続きはせん!政治とスポーツは別だ」と立ち上がり、「戦争とオリンピックは別だ。スタジアムは聖域だ。今は多くの者が練習に励んでいる。若い人にスポーツマンシップが受け継がれている。彼らの努力を無駄にしてはいけない。若者の夢を奪う権利は誰にもない」と一喝した。
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この日、四三が練習を終えて帰宅するとなんとスヤが待っていた。幾江に勧められ出てきたという。()
四三はスヤの手土産「いきなり団子」と食べながら、「スヤが部屋におる、帰って。オリンピックまで2年半、郷里も妻も忘れて祖国のために走ろうと思っている。ここでくじけてはいけん。甘えは堕落の入り口、スヤさん帰ってくれ!」と。スヤが呆然としていると、四三はまた「スヤスススヤスス」と走りに出かけてしまう。()
 
スヤは熊本に戻った。迎えた幾江はスヤを連れて金栗家に乗り込み、実次(中村獅童)に「嫁が泊めんで追い返すとは何事か!嫁を堕落の入り口!」と怒りをぶつけた。「すみません」「あのやろう」と実次。()
 
オリンピックで金メダルたちがいないと言われるまでに練習に励んだ四三だったが、大正46月、ベルリンオリンピックの中止が決定し、落ち込んで部屋に閉じこもる有様。
熊本では新聞でこのことを知ったスヤが東京に出向きたいと幾江に相談していた。
オリンピックが中止で、金メダルの代わりに生まれたのが箱根駅伝で、次回を楽しみに。
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