映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」(2022)もっと歌いたかったな!と泣けた!

 

明けましておめでとうございます!本年もよろしくお願いします。

 ジャンルも人種も超えて愛された数々の楽曲の誕生の瞬間や、歌うことに全てを捧げた彼女の栄光と苦悩を、「I Will Always Love You」など数々のヒットソングとともにドラマティックに描き出すという、美しく力強い歌声で世界を魅了したアメリカの人気歌手ホイットニー・ヒューストンの半生を描いた伝記映画。

監督:「ハリエット」のケイシー・レモンズ、脚本:アンソニー・マッカーテン、音楽:チャンダ・ダンシー、音楽監修:モーリーン・クロウ。

出演者:スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」のナオミ・アッキー、「プラダを着た悪魔」のスタンリー・トゥッチ、アシュトン・サンダース、タマラ・チュニー、ナフェッサ・ウィリアムズ、クラーク・ピータース、他。

ホイットニーの歌は島津亜弥さんが歌う「I Will Always Love You」位しか知らないが(笑)、薬漬けでバスの中で亡くなったというニュースは知っていました。本作が「ボヘミアン・ラプソディ」のアンソニー・マッカーテンの脚本だというので、ホイットニーのライブでも観ようかと、歳の瀬にこの作品を観ました。

ホイットニーのバイオグラフィの中から人生のエポックとなる歌を選びその歌のエピソードをつけたライブを観てくれます。

すばらしい歌声に歌詞、その歌詞に込められた彼女の人生を垣間見て、ラストのバスの中で「I Will Always Love You」を回想しながら亡くなるシーンでは号泣しました。

彼女は人を愛し、愛されたかった。彼女がこの歌を唄った背景がよくわかり、詩の意味が彼女の人生でした。彼女の歌は聞く人に伝わる、そこには人を愛してやまない嘘のない彼女の人生があったからだと思います。きっとこの作品を観ておくと、深くホイットニー作品を楽しめるのではないでしょうか。


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あらすじ&感想

冒頭、1994年のアメリカン・ミュージック・アワード賞での挨拶で「3曲メドレーで歌います」と「I Will Always Love You」を歌い出します。大拍手!「3曲メドレーで歌う」ということに、この歌へのホイットニーの想い(謎)を明かすよう、彼女の歌の旅が始まります。

1963ホイットニーは歌手である母シシー(タマラ・チュニー)の三女として誕生。4歳で教会の聖歌隊で歌い出し、ソリストになっていきます。先生は母で、常に「貴方の声は神に貰ったもの。曲には物語がある。頭とハート、度胸で歌いなさい」と教えていました。ホイットニーの歌い方にはこの考えが溢れているように見えます。

母はツアーに出て家を空けることが多かった。父ジョン(クラーク・ピータース)とこれがもとで大喧嘩となる。

これに嫌気がして、ホイットニーは教会のボランティアでロビン(ナフェッサ・ウィリアムズ)に出会い、煙草(薬)を喫いはじめ、ふたりは終生の友となっていった。

20歳の時、クラブで歌う母のバックコーラスを務めていた。「凄い子がいる」と聞きつけたアリタ・レコード社長のディビス(スタンリー・トゥッチ)がクラブにやってきた。

母が「喉が痛い」とホイットニーに変わり、彼女が「Greatest Love of All」を歌い上げた。ディビスは大感激で契約を交わしました。

このときディビスが提示したのは「私生活には関与しない。必ずビッグは歌手にする」というものだった。「どんな曲がいい」と問うとホイットニーは「鳥肌が立つような曲、山登りでぶっ倒れるような曲!」と答えた。しっかりと発声法を鍛えられた。

「ディビスが凄い新人を見つけたらしい」という噂の中で、ホイットニーのアルバム収録が始まった。ホイットニーが「How Will I Know」を緊張して唄い出した。すると「テンポが遅い!」と母シシーが舞台側で指導する。(笑)スタジオは大拍手だった。大成功だと思ったが、ディビスが「男がいるか?」とダメ出しし、「この曲は次に回す」と言ったが、ホイットニーが「私がサビを作る」と引き取って収録することにした。この曲はこんな思い出のある曲でした!

しかし、大変なことが起こった。この歌を唄ったことで、ホイットニーとロビンが恋に落ちた(レスビアン)。父ジョンが「スキャンダルになる」と激しく怒ったが、ホイットニーの態度は変わらなかった。

ディビスが次に選んだ曲がこれだった。曲を聞いてホイットニーは「凄く言い!」と踊り出した。「I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」だった。

この曲を歌うライブがすばらしい、画に引き込まれ、踊りたい気分で観ていました

この曲でホイットニーは“ビートルズを抜いた」と誰もが賞賛する歌手”となった。24歳でアメリカ人の心を射止めたのだった。が、ホイットニーはヨットでクルーズ、酒のラッパ飲み。2ndアルバムの製作が噂されていた。

楽曲が黒人らしくない!黒人アーティストの魂を売った!」と非難が起こった。ホイットニーはこれに「歌に黒人も白人もない自分のやりたい曲を歌う」と公言していた。

父ジョンが新しい会社を立ち上げ、ホイットニーに「ロビンを首にしろ!」と要求してきたが、これを拒否した。ホイットニーはディビスに「映画に出たい」と伝えた。

グラミー賞表彰式に参加。「白人ヒューストン恥を知れ!」と罵声が飛ぶ中で会場入りした。そこで出会ったのがポピー・ブラウン(アシュトン・サンダース)だった。落選したホイットニーを「気にするな!」と励ました。ホイットニーは彼に恋した。ロビンには「これ、有名税よ!」と言い聞かせた。(笑)ロビンは泣いたが「秘書」としての関係が崩れることはなかった。

ホッピーとの関係がマスコミで騒がれるようになっていった。

ディビスから次のアルバムにとLAリードの曲を紹介された。「悲しすぎる、ピンとこない」と断った。「まだ君はガキだからしょうがない」と笑った。

ポピーとデイト。彼が「元カノに子供が出来た」と告白。ホイットニーは怒って逃げ出した。ホピーが追っかけて叫ぶ“愛“の言葉に、彼を受け入れることにした。(笑)

ロビンにホピーと結婚することを伝えると「国歌独唱の依頼よ」という。ホイットニーはこれを受けた。練習もした。

第25回アメリカンフットボール“スーパーボール”会場沢山の衣装が準備されていたがこれを無視視してスポーツウエアーで、割れんばかりの歓声の中、ステージに立った。この映像はすばらしかった!

ホイットニーの国家独唱はいまでは伝説になっていますが、すばらしかった!アメリカの魂が響き、鳥肌立った!母シシーが「一生もの!」と泣いた。

ディビスから「結婚は延期しろ!映画の話が決まった。“ボディガード“で相手はケビンコスナーだ。I Will Always Love You“を歌え!」と伝えてきた。ホイットニーは「歌えない!」と断った。

ホイットニーは映画初出演で歌のようにはいかない、落ち込みこともあったがポピーの励ましで撮り終えた。ディビスが現場にやってきて「離別のシーンに必要だ、コスナーの要求だ」と言った。ホイットニーは「気にいった」と受けた。

1992年、ポピーと結婚、長女が誕生した。

結婚して問題となったのが「秘書」を巡る夫ポピーとロビンの争い。ホピーがマネージャーとなり「3曲をメドレーで歌う」企画を持ち込んできた。ホイットニーは「登山を登るように歌う私には無理」と断ったが、実際に歌って息が続くかどうかを試して、歌えることが分かった。

1994年、南アフリカマンデラ大統領就任祝に招待され、スタジアムでこの歌を唄った。民衆と一体となり、雰囲気にひたりと合った映像は、感激ものです。

しかし、幸せな生活は長く続かなかった

 夫ホピーの浮気が発覚し大喧嘩となった。ディビスがアルバムを出さないかというが、「マスコミに追い回され、家ではホピーと娘では休めない。娘が私の裏を見るのも辛い」と断った。さらに稼いだ金の管理で父ジョンと揉めだした

ホイットニーがディビスを訪ねると「いい曲が見つかった。この中から探せ」と言った。そこで見つけたのが「Could I Have This Kiss Forever」スタイルを一変させ、これでアルバム(2000年)を作った。

人前が一番輝ける!」とツアーにでた。パリでは大歓迎されて歌うが、夫ホピーが訪ねてきたことで、麻薬不法所持やホイットニーの荒れた生活などスキャンダル記事に追い回される。そして「風邪だ!」と突然ツアーを中止した。

ディビスに呼び出され「幸せになれ!リハビリだ!薬は止めろ」と注意された。ホイットニーは「これまでのこと、ドラッグのお陰よ!」と応じた。ディビスが曲I Believe In You And Me」をかけて聞かせた。この曲はホイットニーとホピーが愛し合っていたときのもの。ホイットニーはリハビリを受け入れた。(2004~2005)。リハビリ中に訪ねてきたホピーに離婚を言い渡した。父との関係も断ち切り、父の葬儀に出なかった。

麻薬不法所持で警察に逮捕された。その後、自宅で娘を見ながら「私に力を与えて!強い心を!」とリハビリ務めた。2005年ホピーと離婚した。

2009シカゴで復帰の舞台に立った。大変な歓迎だった。「I Didn't Know My Own Strength」を歌った。この歌は「堕ちたホイットニーの今」を歌ったものだった。大拍手だった!

ディビスに「ツアーに出たい」と話すと「少し休め!」と返ってきた。ホイットニーはこの言葉に泣いた。

翌日のニュースでは「期待はずれだった!声域が狭い」という酷評だった。

2012年2月のビバリーヒルトンホテルグラミー賞前夜祭にパフォーマンスを披露するため、娘を伴って滞在していた。

ホールで声を出すとディビスが「大丈夫か?」と言う。「なんとかする、ポプラの曲だから」と応えた。

バーテンから「1994年のステージを観た、よかった」と褒められた。しかしサインをくれと言われサインすると、見えないところで捨てる男を見た。

部屋に戻り、娘に蜂蜜を買いに行かせ、バスに入った。そこで「メドレーで歌います」と“I Will Always Love You”を歌う夢の中で・・・。ホイットニー、48歳の人生だった。

まとめ:

ホイットニーの最期、歌いたくて唄いたくて仕方がなかった!この人生にこの歌ありのラストシーン、バスの中で「I Will Always Love You」を回想しながら亡くなったという設想、泣けます。

タイトルは「I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」となっていますが、「I Will Always Love You」の間違いだと思いました。この曲が私にはベストでした。2009年のライブで「I Didn't Know My Own Strength」を歌うホイットニー。こんなに自分を赤裸々に出して歌える人はいないと思った。

ホイットニー役のナオミ・アッキー、歌は唄わないが、全く違和感がなかった(フアンには顔と声が一致しないことに違和感があったかもしれない)。

後段のホイットニーが憔悴してからの演技が素晴らしかった。実像にほぼ近かったのではないでしょうか。

すばらしい歌“ザ・ボイス”を残したホイットニーに「無駄な人生ではなかった」と涙しました!

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「I Will Always Love You」


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「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2016)誰にでも起こりうる過失の罪に、自らを許せないと苦しむ男の再生物語!

 

「癒えない傷も、忘れられない痛みも。その心ごと、生きていく」というキャッチコピーで、DVD鑑賞です。

 監督・脚本;ケネス・ロナーガンプロデュース:マット・デイモン音楽:レスリー・バーバー、撮影:ジョディ・リー・ライプス、編集:ジェニファー・レイム。

 出演者:ケイシー・アフレックミシェル・ウィリアムズルーカス・ヘッジズカイル・チャンドラー、他。

2016年度アカデミー賞主演男優賞脚本賞受賞作品です。

物語は

ボストン郊外で便利屋をしている孤独な男リー(ケイシー・アフレック)は、兄ジョー(カイル・チャンドラー)の急死をきっかけに、故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ってくる。兄の死を悲しむ暇もなく、遺言で16歳になる甥のパトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人を引き受けた彼は、甥の面倒を見るため故郷の町に戻ってきた。が、故郷にいると心の痛みが増すリーとこの町に住み続けたいパトリックは、今後の生活をめぐって意見が食い違う。それでも数日を一緒に過ごすうち、ふたりの間には支え合う関係が築かれていき・・。(シネマトゥデイ


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意)

冒頭、兄ジョー、主人公リーとジョーの息子パトリックの三人がマンチェスター・バイ・ザ・シーの入り江を離れ沖に釣りに出かけるシーン。この夜、リーにとって取り返しのできない事件が起こった。

事件後、リーはボストン郊外に移って、アパート管理人として過ごしていた仕事は便利屋で雪かき、配管工事、電灯の取り換え、風呂場のシャワー修理など。仕事振りは投げやりで、住み人からしばしばクレームを付けられる。憂さ晴らしにバーに出かけて、一人で飲み、客に絡むなどなど孤独で生気がない、目がうつろで魂を失った男の情感ケイシー・アフレックが体で見事に演じてくれ、観てるこちらが辛くなります。

突然の兄ジョーの死を知らせで、マンチェスター・バイ・ザ・シーの病院に駆けつけ兄ジョーの遺体に面会したが、突然のことで涙は出なかった。

リーは動転していて何をなすべきかわからないが、まずは甥の高校生パトリックに会い、一緒に弁護士のところに出向き、兄ジョーの遺言を確認した。

遺言は「後見人としてマンチェスター・バイ・ザ・シーでパトリックと過ごして欲しい」というものだった。リーは「考えさせてくれ!」と遺言を引き取った。

兄ジョーのアパートに戻ると、パトリックは友人や彼女を呼んで過ごし、そのまま彼女と夜を過ごすという、父の死にも気丈に振舞う子に育っていた。

元妻のランデイー(ミシェル・ウィリアムズ)かにら「お世話になった人だから」と葬儀に参加したいと申し出てきた。リーは会いたくなかったが、参加を認めた。

リーにジーンの別れた妻エリーズ(グレチェン・モル)から電話があったが、出なかった。兄の心臓病が発見され「余命わずか」と医師から知らされとき、兄を捨てて出て行った記憶があるからだったが、パトリックには関係ないことだった。

パトリックに「なぜ断った?」と聞かれ、「君が電話したらいい」と答えた。パトリックは母親に電話した。

リーは、兄ジョーの部屋を使う気になれず居間で、ここを離れることになった辛い過去を思い出していた。

「真夜中ストーブを点けっぱなしで酒を買い出しに出て出火。そこに居なかったことでふたりの娘を焼死させた全責任は自分にある」と警察の取調官に申し述べて際、「君に罪は問わない。重要なことだが誰でもやる。スクリーン(防火処置)はなされていたと書いてあげる」を言われたこと。その後、取調べ室を出て取調官の言葉に一層強く自分を責める気持ちになって、警官の拳銃を奪い自殺を図ったが、警官らに制止されたこと。

リーは、このように成長したパトリックに、便利屋で生活力がない自分に何をしてやれるのか。忘れることができない罪を起こした“ここ”で過ごせるのかと後見人になることを恐れた。その反面で、ジョーの遺言には細かい配慮がなされていて、リーのマンチェスター・バイ・ザ・シーへの引っ越し経費500ドルまで記載されていた。また、リーがボストンに移住するまでジョーが支えてくれたこと、ボストンに移住した際にはやってきて家具を整えてくれたことなどを思い出し、数々の兄ジョーの好意に対して、遺言を無下にすることはできないと思った。

 リーはパトリックに遺言についての意見を聞いた。「ここに住みたい」「父の残した船は売らない」「冷凍保存されている父の遺体を早く埋葬したい」という。リーは「仕事のために毎日ボストンに出かけられない」「古い船を維持管理する金がない」「遺体の埋葬は暖かくなるまで待つ」と反対し、揉めた。

リーは喧嘩をしながらもパトリックの登下校、彼女の家への送迎を欠かさなかった。

葬儀には兄ジョーに縁のある人たちが多数集まり、粛々と執り行われた。元妻ランディー夫妻、兄ジョーの元妻エリーズ夫妻も参加していた。リーは静かに彼等を見つめていたが、ランディーが近づいてきて抱擁し、ジョーの死を悼んでくれた。

葬儀を終えてアパートに帰宅すると、これまで気丈に振舞っていたパトリックが父を失った喪失感でパニックに陥った。パトリックは母親と暮らしたいとエリーズの家庭を訪ねたが、エリーズの夫を受け入れることが出来なかった。

リーは本気でここで暮らすことを考え、ボストンのアパートを引き払い、こちらで仕事を探し始めた。女友達の多いパトリックに心を許して付き合うことにした。(笑)

パトリックとジョーが残したボートを修理し、一緒に楽しむようになったところで、元妻ランデイーに出会った。

彼女には再婚し生まれたばかりの幼子がいた。ランデイーは、事故のとき責めたことを詫び、労わる言葉「あの時は心が壊れて、ずっと壊れたまま。あなたの心も壊れた、あなたにひどいことを言ってごめんね。愛している。でも手遅れね」でリーを慰めた。

しかし、彼女が優しい言葉を掛ければ掛けるほどリーの心は痛み、許されない気持へと自分を追い込んでいった。「違う、俺は何もない。何も思っていない」と泣きながら彼女の元を去って行った。

パトリックは「リーと一緒に過ごしたい」と思うようになった。しかしリーはランデイーに会ったことで心の傷は癒えず元の状態に戻っていた。リーはバーで酒を飲み客と揉め、叔父のジョージ(C・J・ウイルソン)夫妻の介抱を受けた。

帰宅したリーは、キッチンでトマトソースを温めていてうたた寝。亡くした娘たちに会った夢を見ていた。異臭で飛び起きると部屋の中は煙に包まれていた。“俺はまだ許されていない”とパトリックの後見について叔父ジョーンに相談した。

ジョーンが「子供たちも巣立っているのでパトリックを養子に迎えたい」と言ってくれた。

リーは自信を持って「叔父ジョーンが養子として迎えてくれる。自分はボストンに戻る。釣り船は売却する」とパトリックに伝えた。パトリックはこれを受け入れた。

ジョーの埋葬は叔父ジョージの墓地で行った。ふたりは無事埋葬を終えた。帰りしなに、リーは「金がない」と言いながらパトリックにアイスを買ってやり、仲良くボールを繋ぎながら「ボストンに帰ったら部屋を探すが、お前が遊びに来れるようソファーも準備する」と話した。

リーとパトリックは「これが釣り船とのお別れ」と船で釣りを楽しんだ。

まとめ:

冷たい“マンチェスター・バイ・ザ・シー”の風景のなかで語られる贖罪と赦しの物語。風景そのものがリーの心象だった。

 リーは兄ジョーから依頼されたパトリックの後見人役を、この町で起こした許しがたい事故を許せない中で、引き受けることができるのかと苦悩した。そこで見つけたのは自分の心の時間はあの事件の時間で止っているということ。時は動いている。そこに留まったままでは何も解決しない。自分が動き出さねばならない。

リーは事件を起こしたこの地を離れ、新しい自分を探すことにした。悲しいばかりの物語だが、ラストに少し光が見えてくる話だった。

圧巻はリーとランディーの出会いシーン。一時のこのシーンに、ふたりが元には戻れないことを知りながら慰め合う姿に、時の流れを感じ、ケイシー・アフレックミシェル・ウィリアムズの演技に涙しました。

こんな悲しい物語がアカデミー賞主演男優賞脚本賞を獲得したことに驚きでしたが、やはりケイシー・アフレックの熱演。背景のマンチェスター・バイ・ザ・シーの佇まい、もの悲しくも静謐な音楽、何時までの心に残る映像でした。決してこの作品を忘れないでしょう。

今年はこのレビューで終わりとします。読んでいただいた方に、1年間ありがとうごいました。良いお年をお迎えください。

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「かがみの孤城」(2022)メッセージ性が高い、これぞアニメの使命と言える作品!

 

宮崎あおいさんが声優として、原恵一監督に請われて出演。何処を請われたかと観ることにしました。(笑)

劇場が中高生の方で溢れていた。こんなの久しぶりです。やはり人気の原作だからでしょうか。原作を読んでいないと1回で全部理解することは厳しいと思いました!3回観る予定です。(笑)

原作:直木賞作家・辻村深月の同名ベストセラー小説。未読です。監督:河童のクゥと夏休み」「カラフル」の原恵一脚本:百日紅 Miss HOKUSAI」などで原監督と組んだ丸尾みほアニメーション制作:あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」のA-1 Pictures編集:西山茂、音楽:富貴晴美主題歌:優里。

声優:當真あみ(こころ)、北村匠海(リオン)、吉柳咲良(アキ)、板垣李光人(スバル)、横溝菜帆(フウカ)、高山みなみ(マサムネ)、梶裕貴(ウレシノ)、芦田愛菜(オオカミさま)、宮崎あおい(喜多嶋先生)、麻生久美子(こころの母)、他。


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意)

こころは中学生1年生。入学早々にあることで不登校になり、喜多嶋先生のいるフリースクール“心の部屋”に顔を出したが行けず、大半を部屋に閉じこもる日々を送っていた。

2005年5月のある日、部屋の鏡が突如として光を放ち始めた。鏡の中に吸い込まれるように入っていくと、そこにはおとぎ話に出てくる城のような建物(孤城)と、6人の見知らぬ中学生がいた

そこへ狼のお面をかぶった少女「オオカミさま」が姿を現し、ここにいる7人は選ばれた存在だと言い、「城のどこかに秘密の鍵が1つだけ隠されており、見つけた者はどんな願いでもかなえてもらえる」と話す。ただしそれには守るべきルールがあった。「09~17時までならいつ来てもいいが、この時間が守れない場合は連帯責任を取ってもらう」というもの。

この日、孤城の中を見学して、大きな暖炉の間でソファーに座って自己紹介した。3年生のアキが大人びた物の言い方をする。退去時間の11分前にそれぞれの名が書いてある鏡をくぐって家に戻った。

6しばらく顔を出さなかった孤城に出向くと、6人はよく来ているという。「よくきたね」とウレシノがケーキを分けてくれ和気あいあいとした感じだった。自分の部屋や屋上から美しい海が見え、気持ちがよく「学校のことなど聞かれないからいい、ここがいい」と思うようになった。

マサムラはゲームに熱中し、スバルはひとりで将棋盤に向かっていた。

7月「彼氏いるの?」という話が出るようになった。ウレシノがケーキを配って女性たちの関心を買うのでやり玉に挙がる。(笑)スバルが髪を金色に染めてきて、マサムネにゲームを学びたいと言い出した。

8、「学校に行く?」が話題になってきた。アキとウレシノは学校に行くと言い、リオンはハワイの学校に戻ると言う。リオンがサッカーを学ぶためにハワイに留学していたのだった。「何故、ここに来たのか?」とこころは疑問を持った。

こころが自宅にいると、喜多嶋先生が訪問してくれた。「こころは自分都合で学校を休んでいる」と思っている母に先生は「こころちゃんは会話をしたがっている」と説いて帰っていった。

9月になってウレシノが顔に傷をつけて戻ってきた。いじめに会っていた。なぜ虐められるのか?そこにアキが「彼氏はできた」と嬉しそうにやってきた。アキは何故ここにきているのかとこころは疑問に思った。

喜多嶋先生が訪ねてきて母に「こころちゃんは毎日戦っていますよ」と言い、こころには「勇気が必要」と言って帰って行った。

10マサムネとアキが急に鍵を探すようになった。皆で手分けして探すが、スバルの提案で「このままで居たい」と、3月までは使わないことにした。厨房から探し始めた。ウレシノがフウカに「フリースクールにいい人がいる」と教えていた。フウカは何故ここにきているのかと思った。

皆で鍵を探しているところにオオカミさまが現れ「みんなで協力するのはいいことだが、鍵を見つけ願いが叶うとここでの記憶は全部消える。3月31日まで叶えられなかった場合はそのまま記憶は消えない、どちらがいいかお前ら次第だ!」と言って、消えた。

アキは「記憶などなくてよい」という。こころは「困る!」とここに来た理由、「クラスの真田からいじめを受け、それがクラス全体に広がった。願いは真田をいなくするこど」と話した。

こころは孤城にきて、こんな勇気のある発言ができるようになっていた

 11、ずっと鍵探しをしていたが見つからない。そんな中で、アキが雪科五中の制服で髪を赤く染めて現れ、「みんな同じ学校の子よね!何故学校と話をしないの?」と喚いた。オオカミさまが「鍵を探して願えば与えられる」と応えた。

こころは母に「話したかったけど話せなかった」といじめを受けていることを話した。

12月、クラス担任の伊田先生がこころの家にやってきて、「真田に会ってみないか」とこころに勧めた。これに母が「先生はみんなによく言われたいだけ!喜多嶋先生か校長先生と一緒に来て」と断った。

クリスマスの日マサムネがみんなに「喜多嶋といういい先生がいるから一度学校に来てくれ!」とお願いをした。マサムネの悩みはなんなのか?

 2006年、1月。決められた日にこころは制服で久しぶりに学校に行った。だれも話かけてこない。靴箱に萌ちゃんから「ごめん!話がしたい!」という手紙があった。萌ちゃんは転向生でこころの近所に住み、学校からの連絡事項をポストに入れてくれる子。こころのいじめに加わっていた。

お腹が痛くなり保健室に駆け込んだ。保険の先生に孤城のメンバーの名前を聞くと「知らない!」という。そこに喜多嶋先生がやってきたので、こころは気を失った。

このあたりから、ファンタジーでとてもミステリアスになってくる。

孤城に戻って「誰も来ていなかった!嘘ではないの」とリオンに話した。リオンは「みんな悩んでいるから来ている。俺は亡くなった姉ちゃんを返してくれだ」とここに来る理由を話した。こころは「自分の悩みは小さい」と思った。

リオンは「オオカミさまはフェイクだ。俺たちを赤ずきんちゃんと呼ぶだろう?」とオオカミさまは何者かと疑っていた。同じようにアキも「誰も来なかった!」という。

マサムラは「パラレルワールドの世界にいるからだ。大きな木の枝にそれぞれいるんだ。俺が作ったゲートワールドも同じだ」と言い張った。スバルが「ゲームワールドは孤城に6個ある」とマサムラの嘘を暴いた。オオカミさまが「間違っている!教えた通りにやりなさい!鍵を探して願いをかなえること」と言い切った。

こころに東条から「謝りたい」と手紙がきた

3月、アキとマサムラは鍵が見つからないと焦りだした。スバルがマサムネに定時制工業高校への転向を勧めていた。マサムネもこれを受け入れていた。ウレシノは「海外に行く」、アキは留年、フウカはピアノを続けると考え始めていた。

こころと母は喜多嶋先生を訪ねて、これからのことを相談した。先生は「転向を考えてもいいが、こころちゃん第一で考えて」とコメントした。母は「いろいろ考えられるが、中学なんか行かなくてもよい」と言うと先生が「ここの教室ではどう、ひとりにならない」と応じた。

こころは「もう願いが叶っても敵わなくてもどちらでもいい」と思うようになった。そして、萌ちゃんに会った。萌ちゃんは「真田は恋愛とか目の前のことしか考えられないやつ。ビッグな将来はない!転向したらいじめは断る。助けたいという」と話した。部屋に「オオカミと七匹の羊」の絵があった。

こころが孤城にやってくると鏡が壊れていた。仲間たちが「アキがルールを破った、17時を過ぎても部屋から帰ってこない!願いの鍵を見つけろ!」と叫ぶ。

狼の叫びが聞こえる。こころは仲間が残した✕印に触ると一斉に光を発してこころを案内する。光の階段を登ると大きな時計の歯車のある部屋に着いた。まさにアニメ「雪の女王」(2012)ですね!(笑)そこに鍵があった。この部屋でこころは仲間が何故ここに来たのかを知った。アキが男性に追われ逃げてここに。リオンは亡くなった姉を取り返しに、ウレシノは虐められて、フウカはピアノが上手く引けないでバカにされて、・・・。

鍵で“願いの部屋”を開けた。こころは「アキのルール違反を許してください」と願い事をして「未来がある」と逃げるアキを追いかけた。アキの手を捕まえ、仲間の力を借りて、こちら側に連れ戻した。

仲間が玄関ホールに集まるとそこに仲間の生年月日が記載された名簿帳があった。年齢が7歳の差で生年月日順に古い者から並べられていた。スバル(長久昴)1985年生まれ。アキ(井上晶子)1992年。こころとリオン(守永守)2006年という具合だった。

こころの前の人はアキで14歳の差がある。7歳の差がある人は誰か?この謎をリオンが童話「狼と七匹の子山羊」から解き明かした。オオカミさまだった。アキはこころに助けられたことを感謝し14年後に大人になって会いたいと別れた。

こころは孤城から戻って、フリースクールに顔を出した。こころは先生にどこかで会ったように思った。先生が「本名は晶子、結婚して喜多嶋になったの」と言い、「もう大丈夫、大丈夫」と励ましてくれた。

2006年4月7日登校するこころに「お~い」と声を掛けてくる男子がいた。名前は守永守だった。

感想:

現在社会へのメッセージ性の高い、これぞアニメの使命と言える作品でした!

 それぞれ事情を抱えた7人がなぜ集まったか、かがみの城で誰が願いをかなえるのかとファンタジーでミステリアスな物語。中学生という思春期特有の人間関係を、7人のキャラクター分描くという脚本、よくぞこんな複雑な物語を2時間でまとめたなと感心しました。1回の鑑賞では押さえきれませんでした。(笑)

本作のテーマ、主人公こころを焦点にした“いじめ問題”。本人、本人の母親、虐めた相手、フリースクールの先生、中学の担任と多彩な視点からとらえた結末がすばらしい。

「中学校で何を学ぶべきか」を考えさせてくれました。「中学はいらない」という母親に「ここにくればひとりでない」というフリースクールの喜多嶋先生。どうやらこれが正解らしい。

こころが周りの人と交わることで「何でこんな小さなことで悩む」と理解できたこと、虐めた萌ちゃんの「恋愛しか考えられないバカには未来がない!救う側につく」という勇気。フリースクールの喜多嶋先生の「人生なんて、大丈夫!大丈夫」アキの過去と今を見せる演出。悩んだゆえに人の悩みが理解できる、いじめ問題をこんなに濃密に見せるドラマがめちゃめちゃ面白かった。

原作をアニメとしたことでの面白さ。特にアキが願いの部屋に閉じこもってからの怒涛の展開と絵力。「ここに彼らは何故やってきたか」という伏線が全て回収されますが、ちょっと飲み込めないところがありました。

ところが粋な計らいがしてあった。

 入場時渡されるポストカートの封筒。「観終わって見て!」と注意書きがありましたが、開けてみるとキャタクターのそれぞれの未来がイラストで描かれていた。これにはびっくりでした。

声のキャストさんたち絵と声優さんの実像が一致しているようですばらしかった!“こころ”の當真あみさん、どんどん成長していくのが分かるようでした。

アキと喜多嶋先生が同じ人物でありながら、これを吉柳咲良さんと宮崎あおいさんで演じたところが、ラストのサプライズに繋がり、作品を面白くしていました。古柳さんのアキを引き継げる演技力のある声優さん、これが宮崎さんでした!

                *****

「ケイコ 目を澄ませて」(2022)岸井ゆきのさんのケイコなりきり演技に、視聴障碍者の意地を見た!

 

耳が聞こえないボクサーの実話をもとに描いた人間ドラマ岸井ゆきのさん主演ということで観ることにしました。(笑)

監督:きみの鳥はうたえる」の三宅唱原案:小笠原恵子さんの自伝「負けないで!」に三宅監督がインスパイアされてできた物語、脚本:三宅唱 酒井雅秋、撮影:月永雄太、編集:大川景子。

出演者:岸井ゆきの、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美中島ひろ子仙道敦子三浦友和、他。

物語は

生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコ(岸井ゆきの)は、再開発が進む下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとして第1戦を勝利し、会長(三浦友和)、トレーナーの林(三浦誠己)と松本(松浦慎一郎)の指導を受けて第2戦に挑んだ。判定で勝利したがケイコには実感が持てない。そんな中で次の試合の練習に励んでいた。

嘘がつけず愛想笑いも苦手な彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていく。ジムの会長宛てに休会を願う手紙を綴るも、出すことができない。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知った。

プロになってプロとしてやっていけるのか。誰しも突き当たる人生の分岐点。この判断は普遍的なテーマで、健常者でも苦しむ。ボクシングという視聴障害には厳しいスポーツの中で問われるケイコの選択。面白い作品だと思います。

幾多の難問にぶつかりながら前の進むケイコをプロボクサーとして多彩な表情で演じてくれる岸井ゆきのさんの演技が見どころ!

ボクシング映画らしく、テンポよく展開。伴劇が消され、手話や手書き、コロナ禍でのマスク使用など視覚障害者のハンディ表現に着意されている演出。これも物語を面白くしている。

16㎜フィルムで追う東京下町の風情はケイコの心情に寄り添っているようで温かみが感じられます。


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意)

2020年12月、ケイコは次の試合のためのトレーニングが始まっていた。会長がタッチマスでケイコの仕上がりをテスト。トレーナーの松本を相手にミット打ち。岸井さんは確実に松本のグローブをかわし、精悍に挑戦している。早朝ランニングに会長が水を持ってきて応援。このジムではとても大切にされていた。練習メモを欠かさないでつけていた

ケイコは昼間、ホテルの客室清掃員として働いていた。視聴障害で男性従業員にバカにされる、またスーパーではマスク着用で話すた店員の話が分からず逃げ出すなど不条理なことにもよく耐えている。

会長は医者から視力低下を注意されながらもケイコに稽古をつける。分からないところはスマホに書いて松井トレーナーに聞く。すると松本が体で展示して見せてくれる。

2021年1月、第2回公式戦に挑戦した。セコンドの林が「逃げるな!」と注意したが、アッツパーを喰らった。相手に激しく打たれ、疲労した。しかし、判定は勝利だった。

 弟の聖司(佐藤緋美)が撮った試合の写真をみるが「なぜ勝てたのか」よくわからない。聖司から「相手は試合のあと病院に運ばれた」と聞かされ、自分のパンチが効いていたと分かった。夜中、洗面所で血を吐いた。相当なダメージを受けていた。

試合について会長がインタビューを受けた。「ケイコの優れているところは目がいいことだ」と説明。ここでの目がいいということは目で感じる力があるという意味。「視聴障害者なのにプロになりたい目的は何か?」と聞かれ、「よくは分からないが、才能はない!しかし、人間としての器量がある」と答えていた。

試合を見に来ていた母(中島ひろ子)を送る途中、母から「いつまでボクシングをやるの?プロになっただけでいいのでは」と言われた。傷を負った娘を見ていられないらしい。

ホテルの作業場では「頑張って!」と応援される。皆の期待を裏切りたくない。

夜、川原で警官の職務質問を受け、ケイコの腫れあがった顔を見て、関わりたくないと逃げていく。この偏見の目!(笑)

林トレーナーから試合のビデオを観ながら「なぜガードしない!怖いからさがる!気持ちをコントロールしろ」と注意を受けた。林がケイコをリングに上げ、グローブで打ってくる。ケイコはガードできず、鼻血を流した。本当に自分に才能があるのか?と悩む。

練習生のひとりが「女ばかり指導するから強くなれない。ジムはやめるらしいから辞める」と言い出した。ケイコは大きな衝撃を受けた

ケイコが休み届を会長に届けにジムに出向いたが、決心がつかず、引返した。涙が出た

カフェで視覚障碍者仲間に会ったこのときはとびっきりの笑顔のケイコだった。皆がケイコの手相を見て、「行ける!」という。ケイコは笑った!これ手話だからよく分からなかったがほっとしますね!

会長がジムを閉じることを発表した。時期は別示、試合のある者には全力で支援するというものだった。

ショックでケイコは練習に力が入らない。見かねた会長から「相手に失礼だし、危ない。試合を取りやめてもいいから考えろ」と言われた。アパートに戻ってもため息ばかりだった。

会長の配慮で、ケイコは五島ジムの会長(渡辺真起子)の面接を受けた。林、松本も一緒だった。「パンチ力があり強い」と褒めて、「サインはどうするの?」と問うてきた。松本が「ボードで示す」と答えた。会長が「面倒みたい」と言ったが、ケイコは「通勤が大変だから」と断った。会長は「試合が終わって話し合いましょう」と移転話しを引き取った。

林が怒り、松本は怒って出ていった。ケイコが断った本当の理由は“サイン”への拘りだと思う。

ケイコは辞表を持ってジムを訪ねた。会長がケイコの第2回目の試合のビデオで見て研究していた。ケイコは辞表を渡せなかった大鏡の前で、会長とふたりでフォームを研究した。ケイコは泣いた!

三浦さんの苦労人で徹底して人にやさしい会長役の演技は人を惹きつけますね!ケイコがボクシングを続けるのはこの人のためだと思いました。

会長が脳梗塞で倒れた。妻の千春さん(仙道敦子)が「心配ない!試合を楽しみにしている」というので、練習を続行することにした。トレーナーの松本が涙を見せながらケイコとスパーリングを続けた。

アパートに戻ると聖司が彼女の花子(中原ナナ)を連れて戻っていた。3人でブレイクダンスをするというほどにケイコの気分は乗っていた。

ケイコは会長の介護につき合っていた。花子さんが、ケイコが練習日記をつけているのを見て、「読まして!」という。花子さんが声を出して読む。そこには毎日の練習量、会長が頭を撫でてくれたなどちょっとしたエピソード、練習上の問題点がまとめられていた。この日記は彼女の努力の跡、宝物だ!

2021年3月、第3回公式戦、4ラウンド。相手の選手・大塚に足を踏まれレフリーにアピールするが伝わらない。セコンドの林から「時間がない、急げ!」のサインが出た。しかし、レフリーが「ブレイク、押すな!」と注意。ケイコはこれに怒り爆発。飛び込んで大塚のアッパーを喰らいノックアウトされた。

病院でケイコの試合を動画で観ていた会長は「よし!」と声をあげしっかりリハビリに精を出すようになった。ジムは閉鎖された。記念に撮った写真には会長とケイコの姿はなかった。

ケイコは客室清掃員の仕事で新米の男性にベットの作り方を教えていた。ホテルの仕事が引けて、川原でぼんやりしているところに、対戦相手だった大塚が寄ってきて「この間の試合、ありがとうございました」と挨拶して走り去った。

ケイコは泣いた!そして土手をかけ上がり、ランニングを始めた!縄跳びの音が聞こえてくる。

まとめ

ラストのケイコ、岸井ゆきのさん泣き顔からある決意に変わる表情が秀逸でした大塚の言葉に、「試合に負けたのではない!障害に負けてたまるか」と決意した瞬間だったと思います。プロになり長い選手活動の中では負けることもある、ジムが潰れることもある。自分の居場所はどこにあるか?ボクシングが好きだということ、ケイコの人生はあの練習日記の中にあるのだと思います。

この作品は岸井ゆきのさんなしでは語れない!しっかり練習を積み、体重を増やし、視聴障碍者ケイコになりきり、普通の女の子、静謐の中で闘志を見せる演技がすばらしかった。そしてこれを支える会長、三浦友和さん、さらにトレーナーの三浦誠己さん、松浦慎一郎さんの熱の入った演技に支えられていた。

“音のない世界感”がうまく書けていない。日本語付き字幕でみたせいだと思います。字幕に水の音とでるとこの世界には入り難い。字幕なしで観た方がいいのではないかと思います。

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「秋刀魚の味」(1962)行き遅れを心配し娘を嫁がせた戦中派親父さんの老いと孤独!

 

小津安二郎監督の遺作。妻に先立たれた初老男性と結婚適齢期を迎えた娘の心情を、ユーモラスかつ細やかに描き出すというもの。

小津さんは本作公開後の1963年12月12日に亡くなっているんですね!

どんなメッセージを残したんでしょうか。といことで、DVDでの鑑賞です。

監督:小津安二郎脚本:野田高梧 小津安二郎撮影:厚田雄春美術:浜田辰雄 荻原重夫、編集:浜村義康、音楽:斎藤高順

出演者:笠智衆岩下志麻佐田啓二岡田茉莉子中村伸郎東野英治郎岸田今日子、北竜二、加東大介杉村春子、他。


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あらすじ:

サラリーマンの平山周平(笠智衆)は妻に先立たれ、長女・路子(岩下志麻)に家事の一切を任せて暮らしていた。友人・河合(中村伸郎)に路子の縁談を持ちかけられても、結婚はまだ早いと聞き流してしまう。

そんなある日、中学の同窓会に出席した平山は、酔い潰れた元恩師・佐久間(東野英治郎)を自宅に送り届けた。そこで彼らを迎えたのは、父の世話に追われて婚期を逃した佐久間の娘・伴子杉村春子)だった。それ以来、平山は路子を伴子のようにしてはならないと結婚を真剣に考えるようになった。

平山は路子には好きな男がいると聞き、この男が長男・幸一(佐田啓二)の社の三浦(吉田輝雄)と知って、幸一に話をさせてみた。ところが三浦には決めた人がいることが分かった。平山は三浦に当たったことを侘び、河合が持ってきた縁談に乗らないかと勧めた

路子は「分かった!」と素直の承諾し、二階に上がった。路子は紐をたぐりながら泣いていた。(このシーンから婚礼場出発のシーンに跳ぶ)

婚礼の日、平山は美しい花嫁姿の路子を「幸せになりなさい!」と送り出した。

婚礼式後、平山は河合らと小料理屋で落ち合うが、すぐに退座し、マダム(岸田今日子)が亡き妻似というバーに立ち寄った。マダムが「いつもの曲」と“軍艦マーチ”を流してくれるが、気分が乗らなかった。帰宅すると、何時のも路子の「あかえりなさい」の挨拶はなく、帰りを心配して待っていた幸一夫婦も帰ってしまった。

ひとり軍艦マーチを口ずさむが寂しさがこみ上げてくる。部屋を見渡すと実に整然と整頓され人の気配は感じられない。平山は台所で水を飲み、椅子に座り込んだ。その背中は・・。

感想:

自分の面倒をみさせて行き遅れたでは申し訳ないと、お見合いで娘を嫁がせた平山の老いと孤独がとてもシンプルに描かれ、笠智衆さんの名演技で観せてくれました。

娘を嫁に出し、寂しさを覚えるのは理解できますが、これほどまでにと思いました。やはり時代のせいでしょうか。

冒頭、平山の会社の窓からいくつもの煙突が見えるシーン。高度成長政策により日本経済が急速な発展しているのが分かるシーン。2年後は東京オリンピック開催でした。1962年という時代のエピソードが冷蔵庫、TV、ゴルフ、女性のファッションなどがしっかり描かれていました。小津作品のいいところだと思います。

当時の笑いはクレージーキャッツ。歌はフランク永井とマヒナスターズ。若者は歌声喫茶アシベやリーベでした。にもかかわらず、本作の笑いは今ならセクハラになりかねないレベル、歌は軍艦マーチ。男性社会匂ぷんぷんの戦中派の親父さんたちの物語でした。(笑)

この作品の中で特異なシーンがあります。幸一夫婦(妻・秋子:岡田茉莉子)は共稼ぎで、お財布は全て秋子が握っている。幸一が「布団と敷いて!」と言っても「自分でやりなさい!」ときっぱり断る。(笑)

新しい夫婦の形をしっかり見せています。

路子が三浦には決めた人がいることを知って二階の自室にこもり、紐をたぐりながら泣くシーン。「100回?リテークした」という岩下志麻さんの証言。このシーンは「あれ!路子が?」と気付くシーンになっていて、路子の本心が描かれていた

戦中派の叔父さんたちの時代が終って、新しい時代の夫婦、家族関係が始まった

タイトルは秋刀魚の “秋“に注目して戦中派男性の”人生のたそがれ時“と解釈しました。予告編とは全く異なる所見ですいません!(笑)

              *****

「20センチュリー・ウーマン」(2016)1979年という変革時期に悩みもがき自分の生き方を模索する女性たち!

人生はビギナーズ」(10)のマイク・ミルズ監督が、自立心旺盛だった自身の母親をモチーフに描いた作品アネット・ベニンググレタ・ガーウィグエル・ファニングビリー・クラダップらの共演で、アカデミー賞脚本賞にノミネートされた作品です。

監督:マイク・ミルズ脚本:マイク・ミルズ撮影:ショーン・ポーター、美術:クリス・ジョーンズ、衣装:ジェニファー・ジョンソン、編集:レスリー・ジョーンズ音楽:ロジャー・ネイル、音楽監修:ハワード・パー。

出演者アネット・ベニングエル・ファニンググレタ・ガーウィグ、ルーカス・ジェイド・ズマン、ビリー・クラダップ、他。

物語は、

1979年、米カリフォルニア州サンタバーバラに住むシングルマザーが、思春期を迎えた15歳の息子についていけないと、ふたりの女性に「どんなときでも自分を保ち、より良い人生を送れるようになってほしい」と協力を依頼した。そこで何が教えられたか、母と子の絆、母親と彼を取り巻く三人の女性の生き方を描いた作品。

1979年はアメリカに、サンタバーバラにとって特別な年。ジミーカーターが大統領として過ごした最後の年。この時代、おおきなうねりのなかにあるフェミニズムやパンクロック熱が米西部に達するなど社会やカルチャーが大きく変容する時期でした。

舞台となるサンタバーバラの風景と三人の美女の演技を観ようとこの作品選定を選びました。が、作品を観てこんな性教育は日本にないと驚き、また美しい映像を楽しみました。


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意)

母親ドロシア(アネット・ベニング)は息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)とショッピングに来ていて、突然表に止めていた父親の形見のフォード・ギャラクシーがオーバーヒートで燃え出すというシーンから始まる。車が古いというより、時代が大きく変化しているということを暗示。“時代の変革期”というのがテーマです。

ドロシアはちょっと大きめの家を持っていて、車の整備、大工仕事が得意なウイリアムとニューヨークから戻ってきた写真家アピー(グレタ・ガーウィグ)にシェアーさせていた。

母親ドロシアは、1924年生まれの55歳。少女時代に戦争を経験し空軍パイロットに憧れ、映画「カサブランカ」を繰り返して見てハンフリー・ボガートが理想の男性。40歳で息子ジェイミーを産みシングルマザーとして育てている。缶製造メーカーの製図担当者として働き、毎日株価をチェックし、セーラムを大量に吸う。過去を絶対に否定しない意地硬さと戦中育ちの勇ましさ前向きさを持つ頑固な女性。結婚生活については「私の見た人とは違っていが、良いところもあった。毎日株価を点検するだけだったが、それだけでよかった」と多くを語らないが、夫婦というものはこういうものかという疑念を持っていた。

アビー1955年生まれ、24歳。かってニューヨークのアートシーンに憧れ、アーチストを目指していたが、子宮頚がんでサンタバーバラに帰ってきて、がん経過観察を続けながらカメラマンとして生活している。バンクロックが大好きでデヴィッド・ボーイに感化され髪を赤に染めています。そして、フェミニズムの旗手だった。

近所に住むジュリー(エル・ファニング)がジェイミーの部屋で休んでいる。ジュリーは1962年生まれ、17歳。セラピストの母親にグループセラピーへの参加を義務付けられている。母の再婚で、新しい父親と脳性マヒの妹に馴染めず、夜はジェイミーのベットに潜り込み過ごすことが多いが、絶対にセックスは許さない。ヘビースモーカーでドラッグやセックスの経験が豊富。

ジェイミーがジュリーの体に興味を持ち始めていた。

 

ある日、ドロシアが大音響で「ザ・レインコーツ」を聞く息子ジェイミーに「きれいな演奏できないの?」と文句をつけると、「きれいな音楽は社会の腐敗を隠す」と言う。「自分が下手だと知ってやっているってこと?」と聞くと、一緒に聞いていたアビーに「強い感情があれば技術は必要ない」と言われショックを受けた。トロシアは若い人に感覚にはついていけないと思った。

さらに、ジェイミーは学校をさぼり、ロスのパンクロックライブに出かけ薬に手を出し「気絶ごっこ」というばかな自傷行為を繰り返す。息子には誰かの力が必要だが、ドロシアは自分の体験から女性が良いと判断した。これがこの作品のポイントです。

そこで目をつけたのがアビーと近所に住むジェイミーの女友達ジェリー(エル・ファニング)。「ジェリーは、ジェイミーをよく知っているから、見守ってやって欲しい。アビーには「あなたの生き方や興味の対象を見せてやって欲しい」と協力を依頼した。

アピーはジェイミーの教育を任されたとバカ正直にバンクロックから女の扱い方、男友達の付き合い方まで指南する。

アピーはウイリアムの部屋を訪ねて彼を求めた。ウイリアムはアピーの求めるようつき合う。

アピーのがん検診に、ロシアはジェイミーを同行させた。アピーは「子ともは持てないかもしれない」と診断され、将来への不安を口にして生き辛さを漏らした。ジェイミーはこんなアピーに憧れ、励ますようになっていった。

ジェイミーはジェリーがクラスメイトとセックスして避妊に失敗したと聞いて、妊娠検査薬を買って彼女を救った。が、もやもやが残る。(笑)

そんなある日、アビーが「フェミニズムにはこれを読みなさい」と「からだ・私たち自身」(1971)「連帯する女性たち」(1970)を渡す。このような本は、この年齢ならもうバイブル、読んで、読んで読みまくる。(笑)

ジェイミーは「オーガスムスの中心は直接刺激すること」と急進派フェミニストのアビーが勧める知識にかぶれ、友達のやり方を貶し殴られて戻ってきた。アピーから「友達にはいうな!」と注意された。(笑)

アビーに勧められたTシャツを着てるので、友人からART FAG(アートかぶれのオカマ野郎)とデイスられる。

ジェイミーは母トロシアに「良い男になりたい、女を満足させたい」と訴えると「あんた大丈夫!」と注意された。(笑)

トロシアは、車にART FAGとペインテイングされる騒ぎが起き、「もうほっとけない!」と同居している元ヒッピーの“なんでも屋”ウイリアムビリー・クラダップ)をドライブに誘い、ニューウエーブでダンスを始めた。ウイリアムに「アピーと寝ているの?」と聞くと「やめた」という。家に帰ってジェイミーを誘い覚えてダンスを「頭で考えてはだめ」と二人で踊った。(笑)

ウィリアムは過去にヒッピーとして生活し、そこで女性に恋をしたが、教養のなさや劣等感からその女性から逃げ出した。それ以降、修理の仕事や趣味の陶器造をする傍ら、孤独を紛らわせるために女性と関係を持ち続けていた。

ジェイミーはジュリーを誘い「からだ・私たち自身」で学んだ「オーガムス」の感じを彼女に聞くと「感じない、あの声よ、それに相手の身体が隅々まで見れるのが快感。2回に1回は後悔する」と言う。「じゃなぜやる!」と怒りをぶつけた。

ジェイミーが母に「この本に興味をもったら!」と雑誌を勧めると「興味はあるが、私には本はいらない」断られた。(笑)

ドロシアは「15歳の子には過激すぎる」とアビーを責めるが、「彼は大丈夫」と意に介しなかった。

カーター大統領のTV演説「クライシス・オン・コンフィデンス・スピーチ」(自信喪失の危機)を皆で聞いていて、ドロシアは「美しいと思う!」と感想を述べた。一方アビーは立ち上がり「生理よ!男が女とやるなら生理ぐらい知らないと!生理知ってる?」と男たちをなじり始めた。

すると、ジェリーが「”カッコーの巣の上で”を観ながらやった」と言い、14歳のときの初体験を話し出した。「くだらない」とドロシアが止めた。

その夜、ジェイミーは部屋に来たジェリーに「そんなんじゃ誤解される。もう喋るだけなら泊まるな」と言うと「海辺に行こう」と誘った。

ジェイミーはジュリーと旅に出て、モーテルでシュリーにセックスを求めたが「親しい人とはできない」と断られ、「このままではだめになる。協力するから乗り越えよう」と迫ると「あなたはただしたいだけ!他の男と同じ。あんたは普通の男、今風にしているだけ!」と言われ、ショックでモーテルを出て行方不明になった。

ジェイミーの行方不明を聞いたドロシアはあわててアピー、ウイリアムと一緒に捜索した。モーテルにやってくるとシェリーは申し訳なさそうな顔で「あそこ」と大木を示す。ジェイミーは朝になってモーテルに戻ってきていた。

ドロシアが「ジュリーって、複雑な子よ」と話しかけると「あっ、そう。僕の世話にうんざりした」と言う。「私のようになって欲しくなかった。私ひとりでは教育できなかった」と答えると「僕はおかあさん一人でいい」という。ドロシアは「今後はなんでも話してくれる!」と諭した。モーテルでドロシアはアピー、ウイリアムと踊ってジェイミーの無事を喜んだ。 

感想

生々しい性で語るフェミニズム。愛とは何かを導き出し、ドロシアの家で過ごした経験をもとに自立した豊かな人生を選択するという結末がいい。

 20世紀、「大恐慌時代」「ベビーブーム時代」「ベトナム戦争時代」に生まれた3人が、1979年という米国にとって大きな変革時期のなかで、お互いが悩みもがきながら自分らしい生き方導きだした女性たちが愛おしい。演じる三人が個性豊かで、美しくて、すばらしい演技でした! 

アピーとジュリーが14歳のジェイミーに教えたことはとても破天荒なものだった。ジェイミーは男の自尊心を打つ砕かれるほどのショックを受けたが、母親の人としての強さ愛を知り、強いやさしい男に成長していった。

ラストで、20年後に亡くなるドロシア、ジェイミー、アビー、ジュリー、ウィリアムのその後が語られています。それぞれの生まれた時代の良いところを生かし新しい時代の中で、自分らしく、豊かな人生を送りました!

アピーは結婚しふたりの子供に恵まれ写真家といて生きる、ジュリーは大学を卒業して結婚、子供を持たないが夫とスイスで過ごしている。ウイリアムは結婚したが、離婚して陶芸家として生きている。ジェイミーは結婚し父となった。一番むつかしいかなと思ったドロシアが再婚し空を飛ぶという生き様、すばらしかった!

             ****

「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」(2022)更に進化した映像美に、生きる家族の物語だった!

ジャームズ・キャメロン監督作「アバター」から約13年ぶりとなる続編前作から約10年が経過した世界で、新たな物語が紡がれるという。あのすばらしい映像を再び観ることができるかと楽しみにしていました。公開初日、一番で観ましたが、二分の一も入ってない、これには驚きました!(笑)

2回観ることに決めていて、今回はストーリーをしっかりみようと2Dで観ることにしました。

監督:ジェームズ・キャメロン原案:ジェームズ・キャメロン リック・ジャッファ アマンダ・シルバー ジョシュ・フリードマン シェーン・サレルノ脚本:ジェームズ・キャメロン リック・ジャッファ アマンダ・シルバー、撮影:ラッセル・カーペンター美術:ディラン・コール ベン・プロクター、衣装:デボラ・L・スコット、編集:ティーブン・リフキン デビッド・ブレナー ジョン・ルフーア ジェームズ・キャメロン音楽:サイモン・フ。

出演者:サム・ワーシントンゾーイ・サルダナシガニー・ウィーバー、スティーブン・ラング、ケイト・ウィンスレットクリフ・カーティスト、ジェイミー・フラッターズ、ブリテンダルトン、トリニティ・ジョリー・ブリス、ベイリー・バス、フィリップ・ゲリオ、デュアン・エバンス・Jr、ジャック・チャンピオン、他。

物語は

地球からはるか彼方の神秘の星パンドラ。元海兵隊員のジェイク・サリー(サム・ワーシントン)はパンドラの一員となり、先住民ナヴィの女性ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と結ばれた。

2人は家族を築き、4人の子どもたちと平和に暮らしていたが、再び人類がRDA社(Resources Development Administration)の名のもとに、パンドラに現れたことで、彼らのその生活は一変した。

神聖な森を追われたジェイク一家とオマティカヤ族は、未知なる海の部族・メトケイナ族の住む島(メイケイナ・ヴィレッジ)に身を寄せることになった。ここは堡礁や環礁など、浅瀬に沿っての暮らしで、海洋生物と共存しながらの生活だった。

この美しい海辺の楽園のような生活に慣れたところに、人類の侵略の手が迫っていた。

ストーリーは上記のとおり、きわめてシンプル。(笑)前作のその後が手際よく描かれ、これで完全に「アバター」の世界感に入ることができます。物語の主体はメイケイナ・ヴィレッジでの生活とRDAの傭兵リコン部隊(遺伝子組換えで新たに生み出された人間/ナヴァのハイブリッド兵)と先住民との激闘です。

海洋生物との触れ合い、海洋作戦など、前作にない映像を観ることになり、前作以上の見ごたえのある映像と、“家族”をテーマにした情感のあるストーリーが楽しめます。

家族の物語では、特に子供たちの活動が、面白く、しっかり描かれているので、お子さんと一緒に観るにはいい作品だと思います。


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意):

ジェイクとネイティリには4人の子供がいた。長男のネテャム(ジェイミー・フラッターズ:)はお母さん似で長男らしく云われたことはよく聞くし、真面目。長女のキリシガニー・ウィーバー)は養女でオーガステイン博士アバターの子だという。(笑)動植物の霊気に繋がるという神秘性を持っている。次男のロアクブリテンダルトン)は父親似で指が5本ある。「俺はナヴィか?」というコンプレックス、優秀な兄への競争心がある。

ネチャムとロアク兄弟の性格の違いが物語を面白くしています

 次女のタクティレイ(トリニティ・ジョリー・ブリス)、普段はタクと呼ばれている。末っ子でわがまま、兄たちには足でまといな存在だった。これに付近に住む人間のスパイダー(ジャック・チャンピオン)がサリー家の子供と遊び回っていた。彼は人間がナヴィに敗れて地球に帰る際に放置され、人間が住むことが許されている施設(ヘルス・ゲート)で育てられた。

ジェイクはイクランで森林内を散策し、子供たちに弓を教えで過ごしていた。

「地球は滅亡する」とパンドラ衛星に活路を見出しRDA社は最新装備でパンドラに侵入し基地(ブリッジヘッド)を構築した。基地司令は女性のアードモア大将。

ジェイクはRDAの基地活動を妨害するために資材運搬列車を襲撃するなど戦闘行動を行っていた。敵のヘリに発見され襲撃されることがあったが、これが次男ロアクの不注意な行動によるもので、ジェイクは厳しく注意し、「厳しすぎる!」とネイティリと揉めることがあった。

重要な問題にぶち当たるとジェイクとネイティが必ず話し合い、物事を決める

 リコン部隊長としてクオリッチ(スティーブン・ラング)大佐が着任した。大佐は人間クオリッチ大佐の精神が全て移植されたナヴィのアバター。クオリッチをこういう形で再登場させるという上手い手でした。(笑)

アードモア大将のクオリッチ大佐に与えた命令は「パンドラは次の地球だ。まずは亡ぼせ!」だった。(笑)

サリー家の子供たちが、禁止されているにも関わらず、昔のラボに付近で遊んでいた。そこに偵察にやってきたクオリッチ大佐に発見され捕獲された。

知らせを受けたジェイクとネイティリが駆けつけ戦闘になったが、大佐はスパイダーを連れてヘリで脱出した。大佐は「地球に返されたと思ったいた」と驚きを見せた。

ジェイクはハレルヤ・マウンテンの秘密基地を去ろうとするが、ネイティリは亡くなった父のことを思い反対だった。ジェイクは「ここにいたら皆殺しに会う。俺は家族を守る。家族は砦だ!」とネイティを説得した。

捉えられたスパイダーはジェイクの居場所を吐くよう拷問されたが、決して吐かなかった。クオリッチ大佐はスパイダーを伴って偵察を開始し、怪鳥イクランにも乗れるようになっていった。

ジェイク一家とオマティカヤ族は、メトケイナ族の住む島(メイケイナ・ヴィレッジ)に着いた。

酋長のトノワリ(クリフ・カーティス)、妻ロナル(ケイト・ウィンスレット)に迎えられた。

オノワリは「ここの生活は森の民には無理」と言い、キリを見てロナルが「悪魔の血が流れている」と嫌がった。これにネイティリが「私の夫は経験済み、適応できます」と掛け合い、了解された。避難民という視点からドラマを見ることになります。

トノワリの娘ツィレヤ (ベイリー・バス)によって海中でトレーニングが始まった。海での生活に欠かせない乗り物、イルの乗り方、海中での潜り方を教わる。ジェイクは戦場で必要なトビ魚のように飛ぶスキムウイングの乗り方を学んだ。

魚たちがとても美しく作られているが、実在の魚たちとちょっと似ていて、とてもリアルだ。どのシーンも美しい写真になっている。

しかし、ロアクの指を見て「これがナヴィか?」とトノワリの長男アオヌング(フィリップ・ゲリオ)らが虐める。ロアクはこんなアオヌングに挑み、これには兄のネチャムが応援に加わる。虐めに立ち向かうというのがいい。こうして子供たちの中に友情が育っていった。

岩礁の中のイソギンチャク、サンゴ、微生物などが美しい。キリは優雅で透明なル・マントルという大きなクラゲと会話を交わすようになっていった。そして母オーガステイン博士に繋がった。母に父親の名を聞いたが返事はなかった!

ロアクはアオヌングの誘いで禁じられている岩礁スリーブラザーズ・ロックにイルに乗って出かけた。そこでロアクは獰猛なアクラ(鮫)に襲われ岩礁に逃れたが、それは岩礁ではなくタルカン(クジラ)だったタルカンは高度な知能を有する巨大海洋生物だった。タルカンの翼にイカリが刺さっており、これを抜いたことで、ロアクはタルカンと友達になっていった。ロアクは兄とは違った能力があることが分かった。

ロアクとタルカンが泳ぐ姿が感動的です!

しかし、このことは兄ネチャムには面白くなかった。こういう泥臭い物語が、SFでありながら、身近なリアリティを感じる物語にしてくれる。

スリーブラザーズ・ロック行はご法度だったからロアクは父ジェイクから注意される。「息子が誘って悪かった」とトノワリが謝りにきた。こうして小さなことの積み上げで両種族の間には信頼感が育まれていった。

タルカンがメイケイナ・ブリッジ沖にやってきて大ジャンプを見せる。これは見事です!キリがタルカンと会話を交わした。

ネチャムは「タルカンは殺し屋だ」と言い、ロアルと言い合う。ネチャムの妬みでしょう。ロアルはタルカンのお腹の中に入り、人間がタルカン狩りに使う大量の爆薬を呑み仲間を守っていることを明らかにして、兄の誤解を解くが、受け入れない。(笑)ツィレヤがネチャムに「弟さんだから、大切な仲間よ!」と忠告をした。(笑)

このころクオリッチ大佐は大型漁船シードラゴンを雇い、各種の海洋線、武器を搭載し、ジェイクらの行方を探っていたが掴めなかった。そこで漁船の仕事、タルカン狩りにつき合うことにした。科学兵器による残虐なタルカン狩りの様相が克明に描かれ、捕鯨をイメージアップしたもので、地球人がパンドラでこんなことをやっているようでは、ナヴィは地球人を受け入れない

タルカン狩りの目的はタルカンの脳液に含まれる長寿のエキスだった。脳液を採取したタルカンの遺体がそのまま海に放置され、子供たちが遊んでいるメイケル・ヴィレッジの浜に流れ着く。その向こうにシードラゴンが現れた。タルカンに銛が撃ち込まれていた。

RDAの攻撃が明らかになった。戦場はスリーブラザーズ・ロックジェイクは「これは自分への戦争だ!」とトノワリに伝えた。トノワリも参戦することに決まった。

多勢に無勢とばかりに、大量のナヴィ兵たちがイクランに乗り空から、水上から敵艦ドラゴンに襲い掛かる。ロアクはタルカンに襲撃を命じた。

ナヴィのローテクvsRDAのハイテク装備の決戦が始まった。

クオリッチ大佐が高速哨戒艇ピカドールでサリー家の子供たちを標的に攻撃し、捕獲した。タルカンがダイブしてドラゴンを攻撃、甲板は大混乱、艦が傾き座礁、浸水が始まった。

クオリッチ大佐はジェイクをドラゴン艦に誘き入れ、決着をつける作戦に出た。

ネチャムが密かに艦内に侵入してロアクとキリを救出して海に逃げる際、射撃されて負傷。艦内に末娘のタクが捉えられていた。

ジェイクは妻ネイティリに「君が必要だ!」と誘い、クオリッチ大佐の要求に応じて艦内での決戦に挑むことにしたここからの戦い、タクを取り返すためのネイティリの戦いぶりがすざましい。浸水していく艦内での戦いが、「タイタニック」の監督だけに、面白い映像が観られます。

戦の結末は、ネイティリはタクを取り戻し、水没するジェイクをロアクが救出。一方、水没するクオリッチ大佐はスパイダーによって救出された。長男ネチャムを失ったサリー家は深い悲しみの中で「家族は最大の弱点だったが、武器だった」と確信した。

ジェイクはトノワリの言葉「貴方の息子は我々と一緒にここに居る」に「逃げても守れない、ここで戦う」と決心した。

まとめ:

映像の美しさ、精緻さはさすがで、今回はこれにさらに胸熱ストーリの感情が加わり、すばらしい映像になっていた。特に生物や武器に新たな知見を加え独創的に描かれ、さすが映像作家キャメロン監督だと納得しました。3時間の尺も13年間の努力を見せるためには必要だったと納得しています。

夫婦が、兄弟が、家族が、喧嘩することもあるが、危機にあたりすべての力を出し合って、家族のために戦う。タクを救うためのジェイクとネイティリの凄まじい闘志、兄弟を救うために戦った兄ネチャムの死、感動しました。

闘いを終え、「闘いは戦いを呼ぶ」、「もう二度と逃げない」というジェイクの言葉。今の日本に必要な言葉だと思いました

SFでありながらリアリティのある物語。そこには、現代社会の戦争、難民、環境、資源、民族などの問題が背景となっており、これがリアリティに結びついていると思います。底が浅いという意見もあるかもしれないが、この点を高く評価したい。

尺が長かったのは上述理由によるものだと思っていて、引き続き準備されている3、4作では、さらに大きな世界感のあるストーリーになっていくと期待したいです。

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