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「サンドラの小さな家」(2020)とてもいい音楽とテンポで、スカットしたラストシーンに“マンマ・ミーヤ”!

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アイルランド・ダブリンを舞台に、住居を失った若い母親と子どもたちが、周囲の人々と助け合いながら自分たちの手で小さな家を建てる姿を描いたヒューマンドラマ。「家を持つには苦労したな!」という軽い気持ちで観ることにしました。(笑) ところがある出来事で原題:Herselfがテーマとして浮かびあがる。邦題は当てにならない!(笑) 魔法にかかったような作品で、うまい脚本・演出だなと感動しました。

脚本はダブリン生まれで主として舞台で活躍しているというクレア・ダン、本作で主演も努めます。本作で初めてお目にかかりますが、リドリー・スコット監督、マットデイモン、アダム・ドライブ共演映画「The Last Duel」への出演が決まっているとか。

本作は彼女の友人がホームレスになったという電話から、3人の子供がいる女性がなぜ家が見つからない!社会システムが崩壊しているのではないかと考えるなかで出来上がった物語だという。

これに共感して監督を買ってでたのが「マンマ・ミーア」(1999)「マーガレット・サチャー」(2008)のフィルダ・ロイド。これを“低予算で作る”ことに共感したのが撮影監督のトム・コマーフォード、衣装デザインのコンソラーダ・ボイル、作曲のナタリー・ボルト、他です。

クレア・ダンが動いたことでこのようなスタッフが集まったことが、作品のテーマの“Herself”「コミュニテイーを見つけ、その中で自分を立て直していく」に繋がっています。とても前向きで暖かい物語になっています。

出演者:クレア・ダン、ハリエット・ヴォルター、コンリー・ヒルルビー・ローズ・オハラ、ルビー・ローズ・オハラ、エリカ・ローズ、イアン・ロイド・アンダーソン、他。

あらすじ(ねたばれ):

冒頭、ぼんやりした人影、母親と娘たち。楽し気に唄いながら長女エマ(ルビー・ローズ・オハラ)、次女モリールビー・ローズ・オハラ)が楽しげに歌い母親サンドラ(クレア・ダン)の化粧を手伝っている姿。父親ガリー(イアン・ロイド・アンダーソン)が戻ってくると場は一転、父親の激しい暴行の耐える母親。この光景がラストでどう変化するかがこの作品のテーマです。

サンドラは娘たちを連れて逃げ出し、役所の女性を支援する課の指示でホテルに避難する。ホテルといっても正面からは入れってもらえず、3人には狭く汚い部屋で、子供は地下の駐車場でしか遊ぶところがない。

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サンドラは清掃婦としてひとり暮らしの老女ベギー(ハリエット・ヴォルター)やパブなどを車で訪問して生計を立てている。ホテルから遠いしガソリン代がかかると公営住宅を申請するが希望者が多くてなかなか入れそうもない。

終末には離婚時の協定で娘たちをガリーのところに連れていくと復縁を迫られるが、DVの記憶で過呼吸に陥ることがある。

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夜、エマが学校で教わったという聖ブリッドが教会を建てたという話を聞き、側でレゴの家を作るモリーを見て、携帯で「家を作る」で検索すると、12m×4mの広さの家を3万5000ユーロで作ったという人のWebサイトを見つけた。実際にあるらしいです!サンドラは私にもつくれるか?と尋ねると「出来る」と。

資金について、クリスマスまでに家を建てれば家賃節約になると役所に資金援助を交渉したがダメだった。(笑)役所は紙に書かれたこと以外はしない!

ベギーの家に掃除に伺うと、彼女がトイレで倒れていた。前回はベッドから立ち上がれなかった。手を貸すと、「あんたのその包帯は?」と見た。夫と別れ家がなくて困っている話をすると「何でそれを言わない」と言い、広い庭を指して「使いなさい」という。「それは!」と断ると「時間かけて返せばいい」と。

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ホームセンターで具体的にどうしたらいいかを相談すると相談所に行けと言われた。そこで母の代からの知合い土木建築業者エイド(コンリー・ヒル)に出会った。

建設プランを見せると「手伝うことは出来ないが土地を見てやる」という。ベギーの庭を見て「十分だ!土地取得証明がいる」という。ベギーが娘クローニャを説得してサンドラのものになった。

サンドラは「一人では無理!」ともう一度エイドの援助説得に自宅に出掛けた。サンドラの話をエイドの息子でダウン症のフランシス(ダニエル・ライアン)が聴いていて、作業靴をプレゼントしてくれ、これを見たエイドは渋々ではあったが手伝ってくれることになった。😊

役所には家の建設を隠すことにした。そして娘たちに父親ガリーに家を建てることを絶対に喋らないと約束させた。

ここからの建設は、Webの建設プランに従って建材を購入し建材の加工や組み立てはエイドに教わることになる。

庭にエイドが持ち込んだユンボで基礎工事が始まった。整地した敷地にセメントを流し込み工事が進捗していく。いよいよ建材を加工する段階で、エイドが「皆で家を建てるんだ!ボランティアを集めろ!」という。サンドラは「都合がつくときにお願い」と娘の友人の母親やパブ仲間に声を掛けた。母親のローザ(アニータ・ペトリー)とパブ仲間のエイミー(エリカ・ロー)の協力が得られるようになった。他にサンドラと同じように家のない者3人が加わってくれた。エイドの息子フランシスも加わった。

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みんなの力で家が出来上がっていく。協力することで自らが癒されていく。腰が悪くて立てなかったベギーが今ではサンドラより元気だ。なまけ者だったエイドが働き者になったと笑う。時間が出来たと駆け込んでくるローザ。皆のためにカメルーン料理を作るというユワンデ(マーベル・カー)。

日曜日、娘たちは父親ガリーのところで過ごすのだが、モリが「嘘が言えない!」と嫌がる。モリをガリーのところにやらず建築現場に連れてきて遊ばせていた。そんなとき、サンドラが釘打ち作業中にモリの腕を強打した。お医者さんだったベギーが治療処置した。モリを怪我させたことで、サンドラは家を建てることが本当によかったのかと悩む。ベギーに「何のために家を建てるの!」と励まされ、自分を取り戻していった。

ガリーが娘の取り扱いについて裁判所に訴え裁判が始まった。

「家もなく娘に傷を負わせるようでは母親として失格だ」とガリーの女性弁護士が主張してくる。休憩になりベギーが「モリの声を届けなさい、そしてもうひとつあなたの傷をみせなさい!」とサンドラの瞼の化粧を落として傷を露出させた!

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サンドラは「書類で主張するより大切なことがある。クローゼットでエマがお漏らしをしたのは暴力を見ていたから、あの日のあなただ。そしてそのときの傷がこれ!何度だって蹴とばす!あなたたちは私を呼び出しこの男と一緒になって・・・」と主張した。瞼の傷が強烈だった!

これに裁判長は「親権はあなた!援助を打ち切ります!」と判決を下した。日本だったら父親の言い分なんぞ聞かないで絶対的に母親有利。(笑) こんな裁判にはならないでしょう。

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家が出来上がり、台所やテーブルもそろった。建設に関わった仲間が集まって、ベギーの家でお祝をしていたとき、ガリーが建てたばかりの家に火を放った。

サンドラは失意のあまり寝込んでしまった。そんなサンドラに「外を見てごらん!」とベギーが窓を開けた。そこではエマとマリーが焼け跡の始末をしていた。サンドラは駆けだした!

感想:

作ったばかりの家が火事で焼失しサンドラが打ちひしがれて寝込み、ベギーの声で起き上がるまでの数分間の描写。この作品はこれで決まりでした!作品のテーマが何であったかが浮かび上がってくるというカタルシス、感動的なラストシーンでした。

確かに家は欲しいですが、それ以上に大切なものをサンドラは手にいれていた。いつでも家を作れるという自信、このための友人たち、そして何よりも大切な娘エマとモリー、その娘たちが立派に成長していた。行動を起こすことで運命は開けていく。自分ひとりでは生きていけない!

演出的に「家を作る過程が調子良過ぎる!」と思うのですが、この思いが火災で家が焼失し、こんなことはどうでもいい、作品が言いたいテーマはこれだと分かり、それほどには気になりませんでした。😊 それよりもうまい物語の展開に満足!「マンマ・ミーア」の監督が作る作品、とてもいい音楽でテンポよく、スカットしたラストシーン、「マンマ・ミーヤ」でした。人間描写の細かい描写に気が付かないのだろうと思っています。😊

グレア・ダン、瞼に痣があるんですね!これには驚きました。おそらくこの痣が彼女を芯のある女優にしていると思います。これからの活躍を期待したいですね!

エマとモリーを演じる子役さんの演技がとても可愛いくて自然、ある意味で本作の主演で、さらに建築過程が実際の手順書を基に描写されており、とてもリアリティを感じさせてくれました。

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