「犬とはなにか?」。犬の映画ならこの監督という犬童一心さんの作品。というわけで観てまいりました。
作品の主人公は1歳のゴールデンドゥードルの保護犬ハウ。こいつが天才的な演技をするんです。(笑)だから物語にリアリティがあるの?と疑念が出てくるかもしれませんね。
3年野良をした捨て犬を拾って7年一緒に生活していて、バカな犬なんですが、こいつと生活した体験から“犬とはこういうもんだ”と思えましたから大丈夫です。(笑)おそらくこの作品を見たら犬を飼いたくなる!そんな人にあてたメッセージの映画です。
監督:「いぬのえいが」(2006 )の犬童一心、原作・脚本:「ナミヤ雑貨店の軌跡」の斎藤ひろし、撮影:「湯を沸かすほどの熱い愛」の池内義浩、音楽:上野耕路、主題歌:「味方」GReeeeN
出演者:田中圭、池田エライザ、野間口徹、渡辺真起子、長澤樹、モトーラ世理奈、石橋蓮司、宮本信子ら、石田ゆり子がナレーションを担当。
物語は、
市役所職員の赤西民夫(田中圭)は、上司からの勧めにより飼い主に捨てられて保護犬になってしまった真っ白な大型犬を飼うことになる。民夫は人懐っこいこの犬をハウと名付け、民夫とハウは次第に絆を深めていく。そんなある日、突然ハウが姿を消す。必死にハウを捜す民夫だったが、ハウは遠く離れた青森の地にいた。偶然のアクシデントが重なり、青森まで運ばれてしまったハウは、大好きな民夫の声を追い求め、そこから民夫の待つ横浜まで798キロの道のりを目指す。
ハウは民夫を探して走る道中で、悩みや孤独、悲しみを抱えた人たちに会う。果たして、長い旅路を経てハウと民をは再会することができるのか。
ラストシーンで民夫が下す決断をどう評価するか、面白い作品になっています。
あらすじと感想(ねたばれ:注意)
冒頭で、民夫は結婚式場を予約していたが、相手の女性に「元彼が戻ってきた!」と袖にされるという、気弱な青年。慰めにと課長の鍋島に家に呼ばれて、保護犬の世話をしている奥さん(渡辺真起子)から「貴方なら気持ちが分かるから大丈夫!」と保護犬を世話され、民夫がこれを引き受けた。(笑)民夫がこんな軽い気持ちで引き受けていいのか?と気になりますね。これがテーマです。
ところがこの犬はわんわんと吠えない。ハウハウと吠える。(笑)なんと前の飼い主が声帯を手術したからだという。ということで“ハウ”という名をつけた。(笑)一目見ただけでハウは可愛い!感情がある犬ですね!人の言うことが全部わかるようにハウハウと吠えるんです!
もうこの日からハウを風呂場で洗って、ソファーに座らせ、食事、屋外に連れ出し、散に首輪を解いての玉遊び。毎日がハウのためにあるような生活。SNSでハウとの生活をアップロード。すると“サビネコ”さんが“いいね“してくる。
田中さんとハウの相性が抜群にいい。田中さんのちょっと弱気という性格もよく出て、ハウとの相性がとてもいい。おそらくこの映像を見たら「犬を飼いたい!」と思うでしょう!(笑)
そんなある日、広場で野球をする少年たちを見ていて眠くなり寝てしまった。目を覚ますとハウも少年たちもいない。
民夫はセルター(保護施設)の人々や同僚の足立桃子(池田エライザ)の助けを借りて必死に探すが見つからない。TVで江の島の観光ニュースを見て、ハウに似た犬がいると飛び出すこともあった。遂に、交通事故で焼却処分されたと聞かされる。仕事にも身が入らない、家に戻るとハウの幻を見る。
SNSでハウの死を伝えた。すると“サビネコ”から「ご冥福をお祈りします」とメールがきた。
実は、ハウは下北半島の尻尾崎灯台が見える海辺にいた。ハウは民夫を思い出し走りだした。東北大災害の跡地を南下するという、ちょっと見てみたい気持ちにさせてくれます。
あるところでは水をかけられて追われ、雨の日には野宿、あたりまえか(笑)、犬はなんとしてでも食べていくから凄い!ハウは雄犬だからよかった。(笑)
ここからはハウの旅と民夫のハウを思う気持ちが交互に描かれます。
民夫は慰めのため「別の犬、買ったら!」と言われて腹が立つ!これは犬を飼ったことのない人の言葉、絶対に云ってはならない言葉です。課長から「悪かった!」と謝られ、「リードをしっかり握っていなかった自分の責任です!」と自分の不注意を責めていた。ここでは犬を飼うという責任が問われています。これは人生における責任の取り方の問題なんです!犬が病気になったとき嫌というほど自分を攻めるでしょう。捨てるなんていうのは問題外です!
ハウは茨城久慈の線路に寝そべっている女性に出会い、{こんな人を知っている}と顔をぺろぺろと嘗めた。{こんな人を知っている}がポイントですが、こういうことはありますね!
女生徒は福島の双葉町から避難してきた麻衣で、学校で原発の子と揶揄され喧嘩して登校できなくなっていた。ハウは学校に行かないで無人駅でドーナツを食べ、ホームで踊る麻衣につき合って、食べて、踊った。じゃれたんですね!すばらしいハウの演技でした!これで麻衣の心が解けて“いじめ”という問題に立ち向かいうようになった。「喧嘩の種をよく食べる!」という犬の役割を果たしました。(笑)
このころの民夫は市役所で戸籍謄本を取りにきた老人に対応していた。この老人が「亡くなった妻の名がない」と文句を言う。が、老人は「すいませんでした」と謝って帰っていった。民夫は「役所のデーターは死を意識してない」とこの話を桃子に聞かせた。このセリフは刺さりましたね!民夫は、ハウを亡くして、死というものの重みに対峙するようになっていた。人として一回り大きくなったかもしれませんね!
ハウは栃木県さくら市で、ショッピングセンターから追われて、鉄の扉で閉じられた商店街(シャッター商店街)に逃げ込んだ。セキネ傘屋の女将さん・志津(宮本信子)と出会った。
志津は旦那さん(石橋蓮司)を亡くし、ひとり寂しく商売をやっていた。だからハウの来訪をことの他喜んだ。夜はハウの脚(手)に手を合わせ、旦那さんの夢を見るというありさま。次の朝、ハウは民夫を思い出し去って行ったが、志津は旦那さんに会えたように元気をなった。年寄にとって犬は癒しになりますね!
民夫は久しぶりにハウがいなくなった公演を訪ね、そこにハウの幻に会ったが「最近はハウのこと、忘れることがある」と謝った。民夫はハウの死を乗り越え、セルターの仕事を手伝っていた。
ハウは桐生市の聖クララ修道院に、シスターたちの好意で、世話になっていた。ハウが脚を悪くしてここに辿りついたのだが、ハウがびっこをひくとは思わなかった。(笑)
ハウはここでハウの声帯手術をして捨てた元の飼い主・森下めぐみ(モトーラ世理奈に出会った。世理奈はとても後悔していたが、ハウはなにもなかったように世理奈に会った。世理奈の心は次第に溶かされていった。
世理奈は夫トシと夫婦仲がいいときにハウを飼うことにしたが、トシの仕事が行き詰まり、世理奈に暴力を振るうとうになり、これにハウが激しく吠えた。トシは世理奈に声帯手術を命じた。世理奈はこれを実行したが居たたまれずセルターに預けたというもの。
修道院のお祭りの日。ここに世理奈がいると引き取りにやってきたトシがこれを断る修道院に刃物を持って暴れ、世理奈がトシの元に帰ることで事件を収めた。
世理奈が連れ去られると思ったハウはふたりが乗った車を追った。猛スピードで走るトシの車が横転、火災が発生。このときハウは車に下敷きになっていたトシを引張だす。トシが「俺を助けてくれたのか?」と声を上げた。ここでのハウの行動は“無償の愛”。犬は何故愛されるか?これが本作で描きかった大きなテーマでしょう。
民夫は居酒屋で桃子の悩みを聞いていた。「愛猫が亡くなって忘れられない!」と泣く。民夫は「きっと忘れられる!」と励ましていた。店を出て、別れる際に桃子が携帯の猫を見せ、「よろしく!」と手を挙げて去って行った。なんと「サビネコ」と書いてあって、民夫は驚いた。
このシーンでのエライザさんの涙と爽やかに去って行く演技は、「ふたりで生きて行こう」という、ちょっと感動ものでしたね!
民夫は戸建て家を売り払って、ちいちゃなアパートに引っ越し、桃子と食事しようと川辺を歩いていてハウの声を聴いた。振り向くとハウが飛びついてきた。ハウにはリードがつけられており、追って来た少年が「ふん!」と呼び、そこに母親が駆け付けてきた。母親が「家を買って、住んでいたらこの犬がやってきたの」と話した。民夫は「リードをしっかり離さないように」と少年に渡した。民夫はそっと泣いた。
まとめ:
民夫の決心をどう受け取りましたか?いろいろ考えさせられますね!「飼うなら責任の持てる飼い方」が説かれていたように思います。
ハウの無償の愛、弱者の救済になっていて、これには泣かされますね!これに飼い主の民夫も答えなければなりませんね!民夫が立派に成長しました。ハウから多くのことを学びましたね!
ストーリーはハウが青森から戻ってくる行動が主体で、ちょっと冗長で、突っ込みどころもありますが、すべて、何度も言いますが、ハウの熱演で帳消しです。(笑)表情があって、民夫のことをよく理解しているようでした。
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