和睦により真田丸を失い堀を埋められた豊臣。苦しい状況に追い込まれながら時を稼ぎ次の作戦準備のために、先に夜襲を仕掛けて徳川勢を大坂から引かせ、家康の暗殺を試み、有楽斎の追放そして新たな防御線の確立、牢人たちに休養を付与するなど武将としての幸村の行動があざやかに描かれる。また、武人として家康暗殺に失敗した佐助への労わり、兄への確執を持つ治房の諫めなど人間としての温かみを見せ、皆に信頼される幸村に感動する。
徳川に勝つには家康を亡き者にする策以外にないとの結論に達し決死の覚悟をする幸村の心境に身震いする。
戦時のなかでのそれぞれの過ごし方、幸村は敵方真田家とつかの間の再会を精一杯いとおしみ、ここで家康を追い詰める方法を聞くなどなんとも微笑ましい。
信之の「この戦に源二郎は死を賭けている」という見方に、ともに戦の中で育った兄弟にしかわからない強い絆を見ることができ感動する。結論は決まっているが、武将としてのすばらしい結末にして欲しい。(*^-^*)
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○茶臼山 家康本陣への夜襲
・幸村の発案で家康本陣に夜襲を掛け早期に徳川勢を大坂から退陣することを促そうとするもの。又兵衛、勝永らによる闇討ちは家康の陣のすぐそばまで迫り家康は震え上がる。「ころあい」と目的を達成したと兵を引く。この報告を聞いて幸村は「それでよし」と幸村の思うがままに部隊を指揮している。その翌日、有楽斎に「家康は恐怖におびえ明日にでも京に戻るだろう。その道中に急襲する」と策を語る。それを聞いた有楽斎は「それはよい案、一度しくじると守りが硬くなる。仕損じるな」と褒めあげながらすぐに家康に密書を送る。
・家康は「明日の夜、わしを襲うようだ。裏をかいて今日のうちにここを発つ」と言い出す。
○佐助による家康の暗殺
・幸村は佐助を呼び出し家康暗殺を指示する。佐助は任務を達成したら夫婦になって欲しいときりに申し出るが「ごめんなさい」と断られる。これが佐助の心に迷いが生まれたか?
・家康は秀忠に「自分は駿府に戻る。お前も江戸に戻れ」と指示すると「和睦は破られた」と異論を挟むが「ならぬ!徳川勢がいなくなれば、牢人たちが大坂城にいる理由もなくなる。それを見て総攻めよ。この戦、決して負けるわけにないかぬ」と一端兵を引き上げることを命じる。
・その後、秀頼の居室で評議が行われる。「戦は終わったのじゃ、勝とか負けるとか何を言っているのか」と大蔵卿局。それに幸村は「家康は戦をやめたつもりなどございませぬ。堀を埋めたは必ず攻めてくるということ」と異を唱える。
「徳川は兵を引くという。牢人たちには一日でも早く出ていってもらう」と大蔵卿。有楽斎は「牢人を手放すなと言うがその牢人が火種になっていることが分かってのことか」と煽る。秀頼は「わしは恩義を感じている。出来るだけ豊臣の家臣にしたい」と明確な意思を示す。
・有楽斎が「何をしている早う行かぬか」と家康への文を渡す、なんと渡す相手が幸村。幸村が「徳川と通じている事を知っている」と告げと「徳川と戦っても勝てぬ。私なりにお上様にいかに安寧に過ごしていただくかを考えている。通じているが豊臣に不利なことを敵に流していない。私は織田信長の実の弟だ。命乞いなどせね。豊臣と徳川の懸け橋になるのはわししかいない。それでも斬るなら斬れ」。「いま直ぐ出ていかれよ」と短刀を突きつけ有楽斎を追放する。これ以降、有楽斎は千利休の弟子であって茶道でおだやかな世を過ごすことになる。利休の井上順さん、穏やかで一癖も二癖もある有楽斎を最後にその生き様を見せ去ることになりましたが熱演ご苦労さまでした。
・家康の宿に忍び込んだ佐助、家康を刺す。口から血を吐き刺殺は成功。城に帰ったところに「家康は二条城に入った」という情報がもたらされる。影武者!! 幸村は「影武者を消されていまごろ肝を冷やしている。次は逃すな」と佐助を労わる。失敗を決して責めない、人を使うときの極意。
○次期作戦の準備
・次なる一手
豊臣の重臣たちの会議。「牢人たちの数は」「いまは十万」の声のなかで「徳川は攻めてくるのか」の木村重成の問いに幸村は「徳川の狙いは豊臣を滅ぼすこと。どんな手を使ってでも攻めてくる」として今後のとるべき作戦について協議する。
幸村は茶臼山と岡山の2か所に砦を築き、この間を空堀でつなぎ、この辺り一帯を巨大な要害とすることを提案する。ここで敵を迎え撃つ構え、城にたよらず地形の縦深を使うは戦術の基本と訴える。治長がこの案に「そなたの不屈の気構えには感服する。これからは面倒は全部が引き受ける。存分に力を貸してほしい」と計画に賛意を示すと母大蔵卿が「牢人たちがそのまま留め置くのか」と口を出す。これに「母は口をだすな。あとは秀頼公と私で決める」と厳しくけん制する。これに茶々が「任せよ」と口を添える。ここに明確な意思決定の仕組みが出来上がる。
○家族への城内解放と休養
皆の賛同を得た幸村は、早速要害の計画図をもって秀頼の元を訪れ報告。秀頼はその案を褒める。幸村は「家康は牢人衆が大坂を去るのを待っている。牢人衆の行き先を探すのに時間がかかったことにしたい」と言いお願いがあるとして「牢人たちは手柄を立てようと躍起になっている。いまはその時期でない、そこで牢人たちの家族が城に出入りするのを許可して欲しい。そうすればしばらくの間を気持ちを抑えてくれましょう」と城に家族を呼び休養をとることを提案する。秀頼もこれを了承する。家康に夜襲を仕掛け早期に大坂から兵を引かせ、牢人の行き先を探していると騙し休戦期を利用して兵に休暇を与えるというシナリオがいい。
・勝永は家族を呼び戦の自慢話、長曾我部は臣下と酒を酌み交わし、明石は祈りに、それぞれが休暇を楽しむ。大蔵卿も治長、治房と酒を酌み交わし安らぐ。
・豊臣家では、幸村に促され秀頼が千姫、茶々に今後の身の処し方について話す。「私はいずれ城をでる。牢人たちを連れて四国に移りたい。讃岐と阿波の二国ではどうでしょうか」と言うと「伊予と土佐もいただくなら私も行く」と茶々。なごやかな会話が戻っている。
・これを聞いて幸村は長曾我部に「四国の国主になるとこでしたね。甲斐や信濃ではだめか」と声をかける。「だれかが欲しがっているのだな。どうせ捨てた夢、大きな夢がよかろう。九州をいただこうか」「わしはあきらめていな」と幸村が切り出すと「誰が欲しがっている?右大臣か。確かなところで淡路島」と答える。
・千姫が左衛門佐と声を掛けて「また戦があるのですか、大御所に掛け合って欲しい。私は江戸に帰りたい」と言う。「伺わなかったことにしておきます」と幸村。
○幸村、真田家の人々と会う。
・幸村は茶々に「これより私は、甥たちに会うてまいります」と大助と共に真田を訪ねる。そこには茂誠、三十郎、信吉、信政がすでに待っている。茂誠、三十郎とは数十年ぶりの再会を果たすことになる。三十郎と茂誠も元気そうだ、信吉、信政は立派な若武者に成長している。
大助、信吉、信政の若者組が庭に出ていくと、幸村たちはそれぞれの身を案じ、今後の展望について語り合う。
「われらは沼田に戻ります」という茂誠、三十郎に、幸村は「再び戦になり、豊臣方が徳川勢を退けたとしても、秀頼が大坂城にいる限り争いは収まらないだろう。秀頼公は恐らく、大坂を離れ四国に国替えをされるだろう。自分も誘われているがまだ決めていない。戻れるならば上田」と話す。
庭では信政が大助に「徳川に刃向かった者を許してはならぬ」と敵愾心を燃やし、大助が「父がなにか悪いことをしたか」に「真田一族などと思ったことがない」とつかみかかるという騒動が起きる。機転を利かせた三十郎が相撲を取ると見せかけて信政を投げ飛ばす。2世代には幸村や三十郎と茂誠の気持ちはなく厳しい対立姿勢が見られる。
幸村は野戦の経験が多い茂誠に「敵陣に馬で突入し大将首をあげるなら、どんな武器が良いか」と質問すると茂誠は「馬からふり落とされ斬り刻まれるのを見た。「鉄砲」なら大将を狙える。戦で敵に囲まれて馬の上では狙われる。まして本陣など」ここまで語って幸村の覚悟に気付き不意に黙り込む。江戸の信之への文を立して城に帰る。
・幸村が城に帰ると、作兵衛が庭で畑を作っていて、ここは昔千利休の茶室が建っていた場所だときりが言う。作兵衛が振り下ろしたクワにどすんと音がして何か固いものに当たる。掘り出してみると、それは利休の刻印が討たれた桐の箱で、中には小型の銃が二挺入っている。恐らく利休が南蛮人から手に入れた物だろう。
幸村は銃を勝永に見せてみると「火打石がついた銃で『馬上筒』という新しい銃だ」という。「いちいち火縄に火を付けなくていいので、馬の上からでも撃てる代物だ。手入れすれば使える」と言う。
○開戦の引き金
・秀頼の間での評定。「牢人たちがいますぐ暇を出せというて来た。これ以上引き延ばすと徳川に刃向かうつもりと見なすと」と重成。「一日も早く牢人たちを追い出すこと」と大蔵卿。「決着はついている」と治長。「牢人たちが入城の際に払った支度金は尽きかけている」と重成。「城の金を与えては」と秀頼。「しばらく待ちましょう。次の戦に勝てば、徳川からご領地を奪い返すこともできます」と幸村は秀頼、重成、大蔵卿局を励ます。
・「蔵を開けよ」と治房が重成に迫る。牢人たちはとりあえず又兵衛が治めることにする。治長と五人衆の集まりでこれを協議し「戦はあくまで要害が出来てから。それまで辛抱してもらう」と幸村。
・そんな折、勝手に蔵が明けられ、牢人たちに金銀が与えられるという事件が起きる。犯人は治長の弟の治房で、配下の牢人たちにだけ配ったという。「大勢の牢人が我慢している中、一部の者だけ懐が温まれば不満が爆発するだろう。全ての牢人たちに金銀を分け与えるしかない」と幸村が提案、これに大蔵卿に異を唱える。治長が「口を出すな」と大声で怒りを露わにする。秀頼は「すべての蔵を開け皆に応分の金銀を与えよ」と指示する。
・幸村は治房に自分の経験として「私は兄を乗り越えるために必死だった。超えられるものではない。兄に言わせれば向こうも私に負けまいと必死だ。そう言うものだ」とやんわりと助言を与える。「堀を掘り返したい。堀がなければ勝てぬ」と治房。
・全ての牢人たちに金銀を分け与えるがそれが裏目にでる。牢人たちはこぞって武具を買いに走る。家康が攻撃にでる口実を与えることになると幸村。
・牢人たちが武具を買い揃えていることが正純によって家康に報告される。
・さらに悪いことに治長が治房一味に暴行されるという事件が起きる。治長は問題を大きくしないために「これは身内の問題だ」と皆の介入を断るがこれが悪い結果に。堀を掘り返そうとする治房らに「つまらんことをするな」と又兵衛が忠告し一触即発状態となる。あまりにも抵抗が大きく又兵衛が手を引くと「何故止めぬ」と勝永が怒るが、掘り返し工事が始まってしまう。又兵衛は「みんな戦をしたいんだ」と幸村に促す。幸村は「戦が起きるときは誰も止められん」ともはや勢いづいた牢人たちを止める術はない事態を認識する。
・家康は「大坂城の二の丸の堀が掘り返されている。諸大名に、戦支度を命ぜよ」と正純に戦準備を指示する。「わしも直ちに出陣する。わしが牢人たちを征伐する。わしの手でやつらを滅ぼす」と豊臣を滅ぼすことに強い執念を示す。
・江戸の信之の元に幸村から書状が届く。そこには、信吉らと対面した喜びと、娘のすえの行く末を案じる気持ちが綴られている。
信之は「今度の戦、豊臣が勝見込みはない。俺には分かる、弟は死ぬ気だ。大御所と刺し違えるつもりだ。止められるのはわししかおらぬ。大坂に参る」と大阪行を決意する。
・幸村は「馬上筒」の試射を行い、戦に備える。次回いよいよ夏の陣。
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「真田丸」第48話は16・1%